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2、征服終了


 薄暗い城の中で悪魔たちは忙しく動き回っていた。勇者が表れてからというもの、人との戦いに苦戦していたのだった。悪魔たちは戦うことが好きな戦闘狂いばかりなのでこの状況に文句を言うものははいなかったが。

 

 魔王も悪魔たちに指示を出したり、戦場に出向いたりと忙しい日々を送っていた。見た目が幼い少女なだけに、人間から見たら罪悪感が芽生える光景だが、ここにいるのは悪魔で、それも魔王の実力を知っているため過労を心配する者はいなかった。

 

 魔王が自分の部屋で書類仕事をしている時、一人の悪魔が部屋の中に駆け込んできた。

 

「魔王様!ご報告が!」

 

 魔王は取り乱した様子もなく優雅に紅茶を飲みながら書類に目を通し、肩で息をしている悪魔の相手をする。

 

「落ち着け、アスモデウス」

 

 アスモデウスと呼ばれた悪魔はビクッとした後、「ふぅ~」と息を整えて報告を始めた。

 

「勇者達によって西の森が攻撃されました!」

 

「何っ!?」

 

 西の森とは地の神ガルドゼイアが治めていた大陸にある豊かな森のことだ。今は地の神が力を失ったため、魔王軍が管理していたのだが勇者によって攻撃されたということだ。

 

 それは非常にまずいのだ。西の森には魔法が得意なエルフや鍛冶能力のあるドワーフがいる。それらが解放されたら、苦戦を強いられることになるだろう。

 

 魔王は何か手がないだろうかと(ひたい)をトントンと人差し指で叩いた。これは魔王が考え事をするときの癖だ。そして必ず解決策や、対応策をだすのだ。

 今回も何か思い出したように顔を上げた。

 

「どうですか?」

 

「あの森は怠惰のお気に入りの惰眠ポイントではなかったか?」

 

 この言葉だけでアスモデウスも何かに気づいたように表情を明るくさせる。

 

 怠惰とは魔王軍幹部に与えられる称号のひとつである。傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、暴食、色欲、強欲、虚飾、憂鬱の9つあり、それぞれ魔王から加護を授かっている。幹部達は姿が人間に見た目がよく似ており、人の形に近いほど悪魔は強くなっていくのだ。

 ちなみにアスモデウスは色欲の称号を持っており、魔王の秘書の仕事をしている。色欲担当なので性欲がそそられる見た目をしていて、本人もそれなりに性欲はあるのだが、魔王の与えた色欲の加護は、性的な禁欲をすればするほど強くなるなので、本人は未だに処女のままであった。

 

 話は戻るが怠惰担当の悪魔、ベルフェゴールは戦争になど興味がなくただダラダラと惰眠を貪りたいというだけの幹部だった。だが勇者はたった一つの彼女の逆鱗に触れてしまった。

 ベルフェゴールは自分の寝場所や寝てるのを邪魔されると凄く機嫌が悪くなり、それをした者を殺してしまうのだ。過去に一度島が消えた。

 さらに、ベルフェゴールの加護は力を使わなかった分が蓄積されていくというもので、蓄えた一撃なら神さえも倒せるというものだった。

 前回から何十年も働いていないので力をかなり蓄えていることだろう。

 

「残念だ。私は勇者との戦いをそれなりに楽しんでいたのだがな」

 

「そうですね。いつでも殺せるのになんでそうしないのかなと、不思議に思っていましたがやはり楽しんでいましたか」

 

 いくら勇者と言えど相手は人間だ。勇者という存在は全ての神の最後の力を振り絞って一人の人間に加護を与えた結果なのだ。神自体を倒せる魔王の敵ではなかったのだ。そんな事を知らずに本人達は戦っているのだが、こちらからすれば遊びや、演劇の一つ程度だ。中央の大陸もわざと渡してやったのにそれに気付かず調子に乗るから破滅するのだ。

 

 これでは賭けに負けてしまうではないか。

 

 魔王はそんな事を考えていた。

 

 

 

 

 今更だが、何故魔王と呼ばれる者はここまで強く、世界に戦争を挑んだのか。それは初代魔王が闇の女神と呼ばれる存在だったからだ。

 人々に伝えられている神の存在は光の神、火の神、水の神、土の神、風の神の五体だが、実際はここに闇の女神カエオスティールと呼ばれるものが存在していた。

 

 闇の女神は原初神でこの世界と神々の創造主でもあったのだが、息子達から騙し討ちにあい、この魔界と呼ばれる地下に閉じ込められた。いつか復讐を果たすために力を蓄え、代々引き継いでいった結果、歴代最強と呼ばれる当代の魔王シャルロッテ・カエオスティールがついに人と神々、そしてその眷属に宣戦布告したのだ。

 

 当時は苦戦を強いられるだろうと予想されていたが神々がそこまで強くなかったこともあり、あっさりと征服は終わってしまったのだった。

 呆気なさすぎて拍子抜けもいいところだと思っていた時、勇者と呼ばれる者が表れてやっと楽しめると思っていたのだが、

 

「魔王様、ベルフェゴールよりご報告です」

 

「どうせ勇者を討伐した、だろう?もうよい!」

 

 調子に乗った勇者の自爆によって魔王軍と人間との戦いは呆気なく幕引きされた。

 シャルロッテは別に神に恨みなんてなかった。昔に宣言したあの言葉は先祖の意思であり自分の本意ではない。ただ単純にこの戦争を楽しみたかっただけなのだ。もう終わってしまったが。

 

「あの、魔王様……」

 

「自室に籠っている。しばらく一人にしてほしい」

 

 アスモデウスの言葉を遮って、シャルロッテは執務室から出て自分の部屋のベッドに飛び込んだ。ふて寝する気満々だった。天蓋付きのベッドはとてもふかふかでこのベッドはとある大国の王族から戦利品として奪ったものなのだがとても寝やすく今ではシャルロッテの相棒にまでなっていた。面倒な書類仕事で疲れた時このベッドで寝ると、疲れが吹き飛んで行くのだ。

 

 寝転がっているだけで瞼が重くなってきて、激しい睡魔に襲われる。シャルロッテは睡魔に対して抵抗をせずに瞼を閉じた………

 

 

 

●●●

 

 

 

 ジリリリリー!と不快な音でシャルロッテは叩き起こされた。こんな最悪な目覚めは初めてだと思いながらベッドから出る。ベッドが少し硬い気がする。それに自分の目線が少し高くなって身体中が痛い。

 シャルロッテは魔王なので、寝違いをするということをしたことがなかったのでこれが人生初の寝違いになる。


 いつもより重い体で階段を下りた。寝惚けていたせいか、自分の身に何が起こっているのか全く理解していなかった。そして洗面台の前に立ち鏡を見て初めて気がつく。

 

「お、お前は誰だ~!!!」

未だに主人公が出てこないというね(笑)

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