episode2
♂レン 20歳
復讐の為参加。優秀な頭脳と恵まれた容姿を持つ。
︎︎♀マナミ 38歳
救済の為参加。高身長の美人。
♀メイ 17歳
救済の為参加。小柄でキノコ髪。
♂ヒロシ 33歳
金銭目的で参加。肝心な時にへまをこぐことが多い。
♂タケル 33歳
金銭目的で参加。工場勤務の褐色男性。
♂ミヤセ 18歳
娯楽の為参加。頭のネジが飛んでいてサイコパス。
♂タクミ 25歳
銀髪のホスト。拉致によって強制参加。
♀キョウコ 18歳
気が強いが感情的な女子高生。拉致によって強制参加
♂トミタ 45歳
骨と皮の痩せ細びた男性。拉致によって強制参加。
♂キヨシ 38歳
教師。ガタイが良い。拉致によって強制参加。
♂トヨシマ 22歳
プロゲーマーで人狼ゲームに詳しい。拉致によって強制参加。
♂ヤマダ 20歳
肥満男性。拉致によって強制参加。
♂ハナダ 21歳
歯並びが悪い。拉致によって強制参加。
♀ミユキ 22歳
売れない地下アイドル。拉致によって強制参加。
人狼ゲームのルールが、
多目的スペース奥のモニターに表示された。
白地に黒文字。
やけに整ったフォントが、逆に不気味だった。
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役職内訳
•村人:7名
•人狼:3名
•占い師:1名
•霊媒師:1名
•騎士:1名
•狂人:1名
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一行一行、
まるで契約書の条文のように淡々と並ぶ。
だが、その意味を理解した瞬間、
喉の奥が、じわりと熱くなった。
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毎晩22時までに、一人を選び、
自らの手で処刑する。
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誰かが、小さく息を吸う音がした。
処刑――
それは投票でも、ボタン操作でもない。
自分の手で、殺す。
その事実が、
全員の思考を一段深く沈めた。
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人狼を全て処刑できれば、村人陣営の勝利。
人狼は毎晩、村人を殺害し、
村人の数を人狼と同数まで減らせば、人狼陣営の勝利。
狂人は村人としてカウントされるが、
人狼が勝利条件を満たした場合のみ、勝利。
ゲームの棄権は、即刻処分対象。
⸻
「……なんだよ、これ!!」
沈黙を破ったのは、
赤毛の女子高生だった。
「ふざけんな!!
こんなの……こんなの、ウチやんねーから!!」
怒鳴り声は、感情の塊だった。
恐怖と怒りが混ざり合い、
行き場を失ったまま、外に溢れている。
その様子を、
まるで見世物でも見るように眺めている男がいる。
「いや〜、活きがいいねぇ」
ミヤセだ。
間の抜けた声。
だが、その目は、笑っていない。
「……あ?」
赤毛の女子高生が、鋭く睨み返す。
「やんのか?」
「いいって、そういうの」
ミヤセは肩をすくめる。
「必死なの、弱く見えるよ〜」
そう言いながら、
彼女の髪に手を伸ばした。
次の瞬間。
「触んな」
短く、切り捨てるような声。
同時に、前蹴りが放たれる。
だが――
ミヤセは、ほんの一歩、身体を引いただけだった。
まるで、
最初から軌道が分かっていたかのように。
場の空気が、
一気に張りつめる。
「……静かに」
低く、しかしはっきりした声が割って入った。
プロゲーマー、トヨシマだった。
彼は一歩も前に出ていない。
だが、その声だけで、場の温度が下がる。
「恐らく、ゲームの拒否は本当に不可能です」
淡々と、感情を挟まずに言う。
「監視カメラは至る所に設置されていますし……」
そう言って、
自分の首元に指を添える。
「この装置。
おそらく、この施設から出た瞬間に死ぬ」
その言葉が落ちた瞬間、
空気が、目に見えて重くなった。
「……なんで、そんなことが分かる?」
教師の男が、警戒を隠さず問いかける。
トヨシマは、ほんの一拍置いたあと、説明を始めた。
外装は、耐衝撃性に優れたチタン合金フレームと、
アラミド繊維の複合シェルによる多層防御構造。
内部には、装着者の首の形状に合わせて密着する
可動式セグメントパッド。
中核機構は、
電動マイクロアクチュエーターと
形状記憶合金ワイヤーによる締結システム。
心拍、血圧、血中酸素濃度を常時モニタリングし、
異常やルール違反が検知されれば、
中央制御ユニットから暗号化信号が送られ、
瞬時に作動。
頸動脈と迷走神経を、
一気に圧迫する――。
「……」
専門用語が並ぶ。
だが、それは知識の誇示ではなかった。
――この首輪は、逃げ道がない。
それを、論理で証明していく作業だった。
説明が進むにつれ、
何人かの顔色が、目に見えて変わっていく。
「……なんで、そこまで詳しい?」
俺は思わず聞いていた。
運営側の人間が、
プレイヤーに紛れている可能性が、頭をよぎる。
トヨシマは一瞬黙り、
それから小さく息を吐いた。
「デスゲーム系の実況を、昔やってた。
こういう装置、よくあるんだ」
「……推測だけどね」
その言葉に、
ミヤセが喉で笑った。
「お前さ、楽しんでるんじゃないの?」
目を見開き、
心の奥を覗き込むような視線。
「俺、同類の人間分かるんだよね〜。
ゲームが始まる前に無駄に死ぬやつが出ないように、未然に防ぎたいんだよね?分かるよー。」
一瞬、空気が凍る。
トヨシマは、肩をすくめて笑った。
「まさか」
だが、その笑顔は、
“否定”としては、少し弱かった。
正直、俺も同じ違和感を覚えていた。
トヨシマには、
この場にいるべき人間の緊張が、薄い。
「……とりあえず、自己紹介しよう」
話をそらすかのような彼の提案だったが、
反対する者はいなかった。
人は、
混乱の中で“秩序”を求める。
名前を知ることで、
相手を“人”として認識しようとする。
赤毛の女子高生はキョウコ。
銀髪の男はホストのタクミ。
教師のキヨシ。
痩せ細った会社員、トミタ。
デブのヤマダ。
出っ歯のハナダ。
売れない地下アイドルのミユキ。
「売れない地下アイドルとか、うちらと変わんなくね?」
軽口のつもりだったのだろう。
だが、その一言で場の空気がわずかに揺れた。
「へー?じゃあそれって自虐だね」
「ん?? え?」
三拍子揃ったような間抜けなやり取りに、
一瞬だけ、場の緊張が緩む。
――これはアイドルの勝利だ。
「……とりあえず、この施設を見回る必要がありますね」
痴話喧嘩の中、切り出したのは、トミタだった。
落ち着いた声色で、無駄がない。
この場にいる中では、おそらく最年長の男性。
言葉の端々から、大人の余裕が滲んでいる。
彼の提案に賛同の声があがる。
俺たちは、まとまって施設内を歩き始めた。
廊下を進むにつれ、
この場所が「ホテル」として作られた痕跡が、はっきりと見えてきた。
数日間の生活には、十分すぎるほどの設備。
フードスペースには、
カップ麺やレトルト食品が山のように積まれている。
ドリンクバーの機械が設置され、
冷蔵庫には保存食がきっちりと詰められていた。
大浴場。
娯楽スペース。
寝泊まりするには、申し分ない。
各個室にはナンバープレートと名前札。
テレビも備え付けられているが、電源を入れても番組は映らない。
代わりに置かれているのは、DVDデッキだけだった。
「……今から殺し合いをさせるつもりなのに、やけに気が利いてるな」
思わず、独り言のように呟く。
「同感だ」
隣を歩いていた褐色肌のタケルが、短く頷いた。
その直後だった。
ぐ……ぎゅるるるる。
やけに大きな腹の音が、静かな廊下に響いた。
場違いなほど、はっきりと。
音の主は、デブのヤマダだった。
本来なら極限状態のはずなのに、
彼の身体は正直すぎる。
「……いや、その……これは……」
誤魔化すように口ごもるが、
キョウコが呆れた視線を向けるだけで、
他の誰も反応を示さなかった。
沈黙。
その重さを、そっと解いたのはマナミだった。
「こんな時でも……お腹が満たされていないと、冷静な判断はできませんよね」
穏やかな声。
「人狼ゲームは頭を使います。糖分も必要ですし……」
少し間を置いてから、続ける。
「お食事をしながら、今できる範囲で情報交換をしませんか?」
押し付けがましさはない。
ただ、自然に場を導く言葉だった。
その一言で、流れが決まる。
俺たちは、食事スペースへ移動した。
俺はカップ麺とバターロールを手に取り、長机に腰を下ろす。
湯気と匂いに、身体が正直に反応する。
――空腹だったのは、俺も同じだ。
「情報交換って……なにを話せばいいのか、ボ、ボク分からなくて……」
不安そうに口を開いたのは、出っ歯の男、ハナダだった。
すると、トヨシマが即座に答える。
「正直、最初は印象論です」
落ち着いた口調。
「本来の人狼ゲームでは、初日は発言が薄い人――
簡単に言えば、沈黙気味のプレイヤーが吊り対象になりやすい」
その言葉に、空気が一段重くなる。
――吊り。
今はそれが、
“死”と直結している。
「この中で、人狼ゲームをやったことがある人は?」
トヨシマの問いに、ほとんどの人が手を挙げた。
ただし、飲み会などの簡易的な経験がほとんどだ。
トヨシマ、マナミ、ミヤセの三人だけが、
「趣味でよくやっていた」と名乗る。
その時、ヤマダが恐る恐る手を挙げた。
「……霊媒師とか占い師って、今出るべきなんじゃないのか?
普通の人狼ゲームだと、最初に出ることも多いだろ?」
トヨシマは、肯定と否定を交えながら答える。
「本来なら、そうです」
一拍。
「ですが、これは命のかかった人狼ゲームです。
役職持ちは、真っ先に狙われやすい。
……簡単に名乗れる状況じゃない」
「これが、本当の人狼ゲームと違って難しいところよね」
マナミも静かに頷いた。
その直後。
「おい、ヤマダだっけ?」
ミヤセが、にやりと笑う。
「今の、役職持ちを透かそうとしたよな?」
場の空気が、凍りつく。
「……人狼なんじゃねーの?」
全員の胸が、一斉に跳ねた。
「え? は? ち、違……!
そんなつもりで言ったんじゃ……」
「ははっ!」
ミヤセは天井を仰ぎ、腹を抱えて笑った。
「冗談だよ、冗談!」
だが、その笑いは軽すぎた。
冗談の皮を被った、明確な“揺さぶり”。
――あの男、やはり要注意人物だ。
話が一段落し、軽食を口に運ぶ。
だが、さっきまで空腹だったはずのヤマダの手は、止まったままだった。
人狼ゲームは、もう始まっている。
一つ一つの発言が、
誰かの命を削る。
「……本当に、こんなゲームやらなきゃいけねーのかよ」
ホストのタクミが、苛立ちを隠さず髪をかきむしる。
「……お兄ちゃんたちは、このゲームに参加して死んだんだよね」
小さく、メイが呟いた。
俯いたまま、視線を上げない。
マナミが、そっと背中に手を置く。
何も言わず、ただ摩る。
その静かな仕草が、かえって重かった。
――そして。
場を切り裂くように、声が響く。
「なんか……よく分かんないけど」
全員の視線が集まる。
「あたし、占い師っぽい」
赤毛の女子高生、キョウコだった。
その一言が、
このゲームを、完全に別の段階へと押し上げた。




