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episode0

人狼ゲームシリーズ


人狼ゲームREVENGEの連載が始まります。

前作人狼ゲームSoulに関係する部分は若干含まれますが、今作から読み始める方も9割楽しめるものになっております。

特に人狼ゲームの内容だけを読みたい方は何も不自由なく楽しむ事が出来ますので是非このまま本編へお進み下さいませ!

season2 episode0

満月の夜だった。

カーテンの隙間から差し込む白い光が、部屋の床に細く伸びている。


俺はゲーミングチェアに深く身体を沈め、意味もなくマウスを転がしていた。

クリック音だけが、やけに大きく耳に残る。


画面に表示されているのは、さっきから何度も見返している検索結果。


【不眠症の治し方】


――生活リズムの固定。

――就寝前のリラックス。

――ブルーライトを避ける。


文字を目で追いながら、思わず鼻で笑った。


「……ブルーライトって、今この状態が一番ダメじゃん」


画面の向こうから、誰かに注意されている気分になる。

でも電源を落とす気にはなれなかった。


医学部に合格し、ダンスサークルに入り、

容姿だけを切り取れば「恵まれている」と言われる人生。


女子からは黄色い歓声を浴び、

男子からも「ノリのいいやつ」として受け入れられている。


外から見れば、

――何が不満なんだ。

そう言われて終わるだろう。


けれど、俺は医者の息子として生まれてしまった。


それだけで、

人生の進路は最初から決められていた。


「ダンスばっかしてないで、勉強はしているの?」

「遊び呆けるのはいいが、父さんの期待を裏切らないでくれよ」


声は優しい。

言葉も、正論だ。


だから余計に、逃げ場がない。


思い出すだけで、胃の奥がきりきりと痛んだ。

最近は空腹を感じても、食べ物を身体が受け付けない。


――この生活から、抜け出したい。


理由なんて、何でもよかった。

とにかく、今いる場所から離れたかった。


その時だった。


通知音が、静かな部屋に響いた。


一通のメール。


件名は、妙に整った文字列だった。


“クジョウ レン サマヘ”


胸の奥が、わずかにざわつく。


本文には、短いURLだけが記されていた。

迷いはなかった。

俺はそのまま、クリックした。


映し出されたのは、薄暗く、ボロボロの廃校。


剥がれた壁、割れた窓、

蛍光灯の明滅が、映像に不安定な影を落としている。


画面の中では、同い年か、少し年下に見える男女が何か言い争っていた。


……どこか、見覚えがある。


俺は動画を一度止め、画面を拡大する。


「……この褐色肌のギャル……?」


喉が、ひくりと鳴った。


「……この双子……」


確信はない。

でも、嫌な予感だけが、はっきりと胸に残る。


再生ボタンを押す。


映像が進むにつれて、

一人の女子の顔が、画面いっぱいに映し出された。


「……ナツキ?」


声が、震えた。


従兄弟だった。


派手な見た目のせいで父親に嫌われ、

「会うな」と言われていた存在。


それでも俺は、

両親のことで追い詰められた夜、

何度も彼女に連絡を取っていた。


返事はいつも軽かった。


――「考えすぎじゃない?」

――「ま、なるようになるって」


適当で、無責任で、

でもその軽さに、何度も救われた。


「ねぇ……ごめんって……助けて……」


映像の中で、彼女がそう口にする。


その声を聞いた瞬間、

背中を冷たいものが走った。


助けを求めている相手は、双子の姉だった。


俺は、その双子の存在も知っている。


ナツキが、何度も言っていた。


――「あの双子、ほんと無理」

――「あいつらの顔見るだけでムカつく」


そして、映像の中で。


「死んで」


双子の姉は、そう言い捨てた。


次の瞬間、

場面は一気に地獄へと落ちる。


揉み合う人影。

背後から現れる、斧。


鈍い音。


ナツキの後頭部が、斧で割られる。


「……なんなんだよ……これ……」


視界が滲んだ。


涙が一粒、頬を伝い、

そのまま床に落ちる。


言葉にならない感情が溢れ出し、

嗚咽が喉を塞ぐ。


胃の中が、空っぽになっていく感覚。

ペットボトルの水を口に含むが、

身体が拒絶し、すぐに吐き出した。


息が浅くなる。

肩で呼吸し、手が震える。


床に膝をつき、

デスクに腕をかけて、ようやく身体を起こす。


画面から目を逸らせない。


その時、文字が表示された。


〝貴方をゲームに招待します〟


「……は?」


続けて、もう一行。


〝ゲームに勝つことができれば、何でも一つ願いを叶えましょう〟


嫌悪も、恐怖も、怒りも、

すべてが一度、通り過ぎた。


残ったのは、

胸の奥で静かに燃える、たった一つの感情。


――復讐。


「……受けてやるよ」


声は、驚くほど落ち着いていた。


ゲームに勝って、

内側から、全部壊してやる。


そう、心に決めた。


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