表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

欠けた爪、壁に付けた線の跡。

作者: 雪野鈴竜
掲載日:2025/12/31

──私は自室の白い壁を見つめている。爪を何年かぶりに少しだけ齧ってしまって、左手の親指の爪は一部欠けている。この欠けた部分で、白い壁に爪を立てて引っかけば、線の跡が残る。

 一度ついてしまった跡は、壁を買い替えでもしないとこのまま、変えたとて、今、目の前にあるこの壁についた跡自体は一生取れない。……けれど、今ここで傷つけるのをやめようとすれば、この壁は綺麗なままだ。

 “人”もそうなのではないだろうか……? 相手を傷つけるのは案外容易い。見えないだけで、言葉のナイフを……それが小さくても大きくても、相手へつけた傷はトラウマとなり、一生のものになってしまう場合もある。

……その場で思いとどまれば、トラウマは植え付けられずに済むが、植え付けてしまえば、一生のトラウマとなるかもしれないし、完全には取れない。

 自分は一体何様なのか……、この目の前の壁も、人間相手も、自分の選択肢一つで傷をつけられるし、綺麗なままでもいられる、そんな気でいる。

「……取れない。」

 一本の線を壁に付け、そっと触れる。細い線なので感触はそれほどないが、よくよく見ると確かに、そこには跡がくっきりと残っているんだ。……この跡は、もう一生取れない。

 ただそれだけの話、オチも何もない。……私は欠けた親指の爪を、人差し指の腹で撫でた。チクチクしてほんのり痛い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ