【焼き尽くす者】
七魔帝の一角“斬瞳のドレイゼ”を退けたものの、ソフィアとミカの身体は限界に近かった。
ソフィアの肩口からは血が滴り、ミカは立っているのがやっとの状態だった。
ソフィアが剣を杖代わりにしながら呟く。
「…勝ったんだよ、私たち」
ソフィアは笑っていた。
しかし、その笑みは次の瞬間に凍りつく――
“視線”が戻ってきた。
森の奥。空間の向こうに、再びドレイゼが現れたのだ。
「まさか……まだ生きていたの!?」
ソフィアが構え直す間もなく、ドレイゼの“視界”が再び森を切り裂いた。
木々が崩れ、空間が引き裂かれ、ソフィアが咄嗟にミカをかばって倒れる。
「ソフィア!!」
焼ける匂い。血の匂い。
その瞬間、ミカの中で何かが“切れた”。
「やめてよ……!」
ミカの声が森中に響く。
その両手から、真紅の残火が爆発的にあふれ出した。だが、それはただの火ではなかった。
ソフィアと“重なった”記憶――怒り、痛み、優しさ、孤独、願い――
そのすべてが共鳴し、ミカの中に“もうひとつの火”を灯した。
「この火は、ソフィアの火じゃない――あたしの意志で燃やす火だよ!」
炎が変質する。
名も無き残火から、己の名を得た力へ。
ミカが跳ぶ。その瞬間、ミカは
ドレイゼの力が弱まったように感じた。
「やるなら今だ…!」
火が翼のように背に現れ、空中でドレイゼを直撃する。
一瞬の静寂の後、空間が灼かれ、爆ぜた。
炎は黒い霧のような残骸を包み込み、ドレイゼが崩れ落ちていく――
「これが……あたしの、火!」
ミカは地に着地し、崩れ落ちたが、その表情は清々しいものだった。
ソフィアは静かに、立ち上がる。
「ミカ……あんた、本当に強くなったね」