【連焔】
夜の森を照らす月明かりは雲に隠れ、辺りは暗闇に包まれていた。
ソフィアとミカ、そしてレイは、廃神殿の裏手にある結界の外れに身を潜めていた。
「……来るね、ソフィア」
ミカが囁くように言った。空気の流れが、さっきとは違う。
「わかる。あれは……ただの魔物じゃない。七魔帝だ」
漆黒の獣影が木々の間を走る。地面を這うように広がる闇の気配。その中心にいるのは――
「“斬瞳のドレイゼ”……!」
七魔帝の一柱、ヴィルゼラとは違う“見ることで切り裂く”という奇妙な力を操る異形の魔帝だった。
「ドレイゼ…!!」
レイはそう呟きどこかへ行ってしまった
「レイ!? ッ――ミカ、下がって!」
ソフィアが炎をまとい前へ出る。だが、ミカはその背中を追うように叫んだ。
「違う……今度は一緒に戦うって決めた!」
ソフィアの刀が炎を纏って振るわれるが、ドレイゼの「斬視」が空間ごと切り裂く。
その衝撃に吹き飛ばされるソフィア――
「ソフィア!!」
その瞬間、ミカの胸が熱くなる。体の奥から、燃えるような力が溢れた。
(お願い……あたしに力を貸して。ソフィアを守りたいの!)
ミカの手の中に、微かな炎が生まれる。けれど、それはただの火ではなかった。
ソフィアの持つ“残火”と共鳴し、呼応していく――
「共鳴……してる? あたしの火と、ソフィアの火が……!」
ミカの炎が紅蓮に変わり、その刀が残火刀と似た形に変化する。
「いける……今なら、あたしたちの火が届く!」
ミカが先に走る。ソフィアはそれを見て驚き、そして微笑んだ。
「……やるじゃん。じゃあ、合わせるよ」
二人の炎が重なり、左右からドレイゼへと斬り込む。
空間が裂け、地が揺れる――そして。
「――“双閃・紅焔連牙”!!」
炎が弧を描き、ドレイゼの体を焼き裂いた。
「……やった、の?」
ミカが肩で息をしながら尋ねる。
ドレイゼの影が霧散し、森の奥に消える。
ソフィアはゆっくりとミカの肩に手を置いた。
「ありがとう、ミカ。あんたの火がなかったら、私……本当に終わってた」
ミカは照れくさそうに笑って、小さく頷いた。
「ソフィアの火があったから……あたしの火も、ちゃんと燃えられたんだよ」
夜の静けさが戻ってくる。