【審判の猶予】
転送によって生まれた時空の歪みは、周囲の魔を散らし、静寂をもたらしている。
レイの呼吸は荒く、転送術の反動で額から汗が滴っていた。
「…ごめん、もっと私が強かったら…」
ソフィアが振り返ると、彼はわずかに笑って首を横に振った。
「いや……お前がいたから俺は生きてる」
「私、さっきの技でわかった。力を制御できてない気がするの…」
ソフィアは怯えた声でそう言った。
「信じろ、信じろよソフィア。俺はお前の仲間だ。
お前が燃やすなら、俺はその火に賭けるさ」
木々に囲まれた廃神殿の跡地。
そこが、今の彼女たちの“仮初めの避難地”だった。
「それにね、ヴィルゼラはまだ生きて…」
ソフィアの声が静かに落ちる。
「わかってる。次は、“奴ら”も動くだろうな」
レイは荷物の中から通信石を取り出した。魔力を流すと、石の中に微かな光が点る。
「……応答なし。防衛軍はやられたか、地下へ潜ったか」
ソフィアは、膝に手を置いたまま、空を見上げる。
ヴィルゼラが最後に言い残した言葉――
『次こそは――』という言葉が、耳に焼き付いて離れない。
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ふいに、空気が変わった。
まるで、空そのものが震えたかのような圧。
レイが顔を上げると、空の彼方に**巨大な“眼”**が現れていた。
それは、天空に穿たれた裂け目。その奥でこちらを覗き込むように、不気味に光っている。
「あれは……“視られている”のか?」
レイの声がわずかに震えた。
「七魔帝の誰かが俺たちを捜索しているんだ」
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「……くそ、この拠点がバレるのも時間の問題だ」
ソフィアが立ち上がる。再び刀を握る指先には、力が宿り始めていた。