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残火のソフィア  作者: 結城 漣
残火のソフィア ―残火の誓い編―
3/22

【蒼獄、顕現】

それは、空が裂けるような音とともに始まった。

 夜空に巨大な歪みが生じ、

そこからゆっくりと黒い影が降りてくる。


 蒼い仮面、闇色の法衣。その足元には、踏みしめるたびに凍てつく霜が広がっていた。


 「魔帝級……!? まさか、七魔帝が……!」


 見張り台の兵士が叫ぶより早く、結界の一部がバリバリと音を立てて凍りついていく。


 地に降り立ったその存在は、すべてを見下ろすように静かに言った。


 「……愚かな人類ね。まだ、抵抗するつもり?」


 七魔帝――蒼獄のヴィルゼラ。


 その声が響くだけで、空気が凍りつくような錯覚に包まれた。




 「七魔帝…だと…!? どうしてここが…!!

まあいい、やるしか生き残る道はない。」


 レイ・アルステラは左腕に魔導符を展開し、構える。


 ソフィアも残火刀を握りしめた。

 だが、身体の奥からせり上がる恐怖は、今までの敵とは比べものにならなかった。


 「この圧迫感…これが七魔帝……!」


ヴィルゼラは導かれるように2人の前に顕現した。


 ヴィルゼラはふたりを一瞥し、口元だけで笑ったように見えた。


 「焔の残滓と、かつての騎士。なるほど、なかなか趣深い布陣だ」


 彼が指を軽く動かす。


 次の瞬間、遠くの防壁が音もなく崩壊した。


 「なっ……!? あれは、結界の中心部だよな…!?」


 レイが顔を青ざめさせる。



---


 ソフィアが前に出て、叫ぶ。


 「これ以上、街は壊させない!私たちが、あなたを止めてみせる!!」


 ヴィルゼラは、ほんの一瞬だけ間を置き、こう言った。


 「人間に私が止められるとでも?」


 氷の霧が一気に広がる。


「審判はもう済んだの、人類はこの世界に必要ないわ。」



---


 ソフィアは震えながらも、残火刀を振りかざす。


 炎がほとばしり、蒼の空気を焼き裂いた。


 「“火”は、燃え尽きることは無い……!」


 「面白い、やってみてよ」


 ヴィルゼラが静かに手を上げる。


 空間が捻じれた。氷の矢が無数に生まれ、都市全体を狙って降り注ぐ。



---


 「これが……魔帝の力……!」


 レイが詠唱を放ち、魔力バリアで一部を防ぐ。


 だが、次々と建物が凍りつき、崩れていく。


 「ソフィア、やるしかない…!」


 「でも、まだ……!」


 「もう後がない、今しなければ誰も残らない!」



---


 ソフィアは覚悟を決め、刀を構えた。


 炎が、刃から噴き出す。熱が空を染める。


 「……《残火・陽炎断章》!!」


 紅蓮の斬撃が放たれ、氷を焼き、空気ごと敵を焼き尽くそうとした――


 だが。


 ヴィルゼラは1歩も動かず ただ、その場に立ったまま、薄氷の結界を展開し、全ての炎を遮断した。


 「……その火、“核”にはとどかないようね。」


 結界の内側に、傷一つなかった。



---


 ソフィアは膝をつき、息を荒げる。


 「…やっぱり……七魔帝には届かないの……?」


 その時、ヴィルゼラが仮面に手を添えた。


 「最期に言い残すことでもある?」



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