【あの日】
1か月前のあの日、夜風が冷たく森を吹き抜ける。
遠くの村は燃え盛る炎に包まれ、悲鳴と怒号が混ざり合っていた。
「早く逃げろ!村を守れ!」
レイは家族の元へと駆け抜ける。
母が必死に井戸の水を汲み、妹のリアが震える小さな手を母の手に絡めている。
「リア、こっちだ!急いで!」
だがその声は届かない。
人間の軍勢が無慈悲に村を襲い、火の手が家々を飲み込んでいく。
「燃やせ!奪え!この地と資源を全て我らのものにするのだ!」
村人たちは抵抗するが、武器もなく次々と倒れていった。
レイは必死に駆ける。
「母さん!リア!」
だが、すでに遅かった。
母は刀を振るいながらも、多勢に無勢で倒れ、リアは血を流しながら倒れている。
「母さん……リア……!」
胸を鋭く締めつける痛みが貫く。
レイはその場に膝をつき、冷たいリアの手を握りしめた。
涙が頬を伝い落ちる。
それは悲しみの涙ではなかった。
失われた未来への後悔、叶わなかった約束への痛み、そして己の無力さへの怒りが、胸を焦がす。
「なぜ……なぜお前たちは……!」
絶望は重く、深く、彼の心を飲み込んだ。
「……こんな世界、壊してしまいたい……」
闇に染まる瞳。
絶望の淵で、彼の中で何かが壊れていくのを感じていた。
夜の闇に包まれた村の廃墟で、レイは冷え切ったリアの手を握りしめていた。
彼の胸の奥底には、言葉にならない怒りと絶望が渦巻いていた。
「なんで……なんで、俺だけが……」
涙と共に堰を切ったように感情があふれ出した。
呟きはやがて叫びに変わり、夜空へと響いた。
「助けられなかった……守れなかった……」
虚空を見つめながら、彼の体は震えていた。
己の無力さを痛感し、世界が音を立てて崩れていくような感覚に襲われる。
「こんな世界なんて、壊れてしまえばいい……」
闇の中、レイの瞳は凍りついたように冷たく光った。
その瞳の奥底で、かつての優しさがゆっくりと消え始めていた。
「……俺は、誰かを守る力を手に入れなきゃ……」
その決意は、復讐への渇望となり、心に深い闇を刻みつけていったのだった。
了解です!
では、このレイの家族を人間に殺された悲劇の裏には、実はメリュシアの思惑が隠されている――という展開を組み込みますね。
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追加シーン案(第8章中盤以降)
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レイが絶望に沈み、闇に染まろうとするその時、遠くから冷たい風が吹き抜けた。
燃え残る村の影から、黒い花弁のような魔力がひらひらと舞い落ちる。
「――愚かな人間たちね」
低く響く冷たい声。
そこに立つのは七魔帝の一人、メリュシアだった。
「すーぐ騙されて…❤」
彼女の目は、闇の底に光る冷徹な炎のように輝く。
「混沌を生み、争いを増幅させることで、彼の心に憎悪と絶望を植え付けた。」
メリュシアは冷笑を浮かべる。
「七魔帝の空席の穴埋めが必要だもの…❤❤」