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残火のソフィア  作者: 結城 漣
残火のソフィア ―絶望の檻 編―
16/25

【交錯する剣と真実】

黒炎が渦を巻き、レイの剣がソフィアを斬り裂かんと迫る。


「やめて……お願い、レイ!」


ソフィアの叫びは、届かなかった。


「お前たち人間が……俺の家族を殺したんだ!」


――空気がねじれた。甘ったるく、毒のような香りが辺りを包む。


「ふふ……また家族ごっこ?飽きないわねぇ、ほんと」


妖艶な声とともに現れたのは、紫のドレスをまとい、唇の端に笑みを浮かべた女。


七魔帝のひとり――メリュシア。


「……メリュシア!?」


ミカの表情が険しくなる。


「ふふふ、そんなに睨まないで。ボク、ただ見に来ただけだよ?ねぇレイ、調子はどう?」


「……お前か、あの“記憶”を見せたのは」


「そう、あれが、あなたの“真実”だったでしょ? あなたの家族を手にかけたのは、紛れもない“人間”の兵士たちだよ」


レイは歯を食いしばる。

思い出すのは、炎の中で泣き叫ぶ妹。

母の断末魔。

血に染まったあの光景。


――そして、その手に銃を持っていたのは、人間だった。


「嘘よ、レイ!」ミカが叫ぶ。「クラヴィスやメリュシアの見せるものは“虚構”!あなたを騙すための幻なの!」


「幻なんかじゃない……!あれは……あれだけは、現実なんだ!」


「あなたの“感情”が真実を歪めてるのよ」

メリュシアが妖しく微笑む。「でも、それでいいの。憎しみは、いつだって都合よく記憶を染め直す。あなたは、それを選んだのよ」


「……俺は……!」


「レイ!」ソフィアが一歩踏み出す。「私たちはずっと、あなたを信じてた!一緒に笑って、戦って……!」


「その信頼が、あの夜すべて崩れた!」

レイの剣が闇を裂く。「守れなかった。奪われた。だから……もう、何も信じない!」


ソフィアは拳を握りしめ、必死に食い下がる。


「だったら――私がその闇ごと、あなたを止める!」


二人が激突しようとしたその瞬間、メリュシアがすっと手をかざした。


「まあまあ。いいの?このまま彼を斬って。悲劇の結末よ?」


「あなたが仕組んだ“悲劇”でしょうが!」


ミカが雷の魔力を放とうとするが、毒の霧が魔法をかき消す。


「言ったでしょ?私はただ、“記憶を見せた”だけ。選んだのは彼自身」


メリュシアはレイに優しく触れる。


「ねぇ、あなたはまだ迷ってるわ。だから、もっと思い出して……あの夜のこと。もっと深く、もっと正確に。何度も、何度でも」


レイは瞳を伏せる。その目の奥で、黒炎が揺れていた。


「……俺の家族を殺したのは、人間だ。お前たちが……!」


その言葉に、ソフィアは剣を構える。


「なら、私は戦うしかない。あなたの誤解を、力で打ち砕く!」


メリュシアがくすくすと笑う中、再び剣が交わされる。


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