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残火のソフィア  作者: 結城 漣
残火のソフィア ―残火の誓い編―
11/25

番外編【影の矜恃】

瘴気が渦巻く廃神殿の奥、誰にも知られぬ地下の“結界層”――

 そこに、ひとりの男の影が消えていった。


 レイ・ヴァレンス。

 ソフィアとミカが〈七魔帝・ドレイゼ〉と戦闘していた時、彼は単独で行動していた。


 


 「ドレイゼが現れたってことは……やつらの《補助魔導核》が近くにあるはずだ」


 それは、七魔帝が瘴気を制御し、自身の力を効率的に発揮するために地脈へ埋め込む“魔核”――

 放っておけば、いくら倒してもドレイゼの力は再生し、無限に蘇る。


 だからこそ、レイは戦場を離れ、その魔核の破壊へと向かったのだ。


 


 「2人が“火”を繋いでる間……俺は影を断つ」


 


 剣も魔導銃も使わない彼の戦い。

 それは、“裏”に潜り、敵の核を絶つ暗殺者の道。


 


 廃神殿の地下、腐蝕した岩盤の奥。

 レイは瘴気を吸収する黒布のマントを翻しながら、静かに侵入していく。


 


 ――ゴウ……ッ!


 突如、瘴気が膨れ上がり、魔力の波が襲いかかってきた。

 応じるように、床の文様が光る。起動式防衛術だ。


 


 「……こっちも起きてたか」


 


 レイは符術を瞬時に展開。

 《重影転位》――自身の影を媒介に、位置を一瞬だけズラす技。


 雷撃が空を切り、その直後、彼の手には“魔核の防護鍵”が掴まれていた。


 


 防御層を破壊し、ついに現れる《魔導核》。

 中心には、脈動する瘴気の結晶。黒く、赤く、毒々しい輝き。


 


 「……これで、ドレイゼの再生速度は削れる」


 


 だが――


 


 「それを壊させはしないよ、“影の男”」


 


 魔導核の奥、そこにいたのは《魔帝信徒》のひとり――第四信徒・サラヴィス。


 白い仮面をつけた女。

 彼女はドレイゼ直属の補佐として、核の護衛を任されていた。


 


 「……貴様ら、どこまで腐ってる」


 「腐った果実こそ、最も甘い香りがする……なんて、ね?」


 


 瞬間、無数の糸状魔力がレイを包囲する。

 “拘束型空間魔法”――レイの天敵とも言える類。


 


 「なら、斬るまでだ」


 レイは足元の影から刃を抜く。《断影刃》。

 光を飲み込む刃が、糸を斬り裂いていく。


 


 サラヴィスの手から毒の符が舞う。

 だがレイは“言葉”を一つも交えぬまま、静かに背後を取り――


 


 「――終わりだ」


 


 刃が、仮面を割った。


 


 サラヴィスは呻き、瘴気の中に崩れ落ちる。


 


 残るは魔導核。

 レイは手にした《裂晶符》を起動させ、核に貼り付ける。


 


 「……あとは、火の番だ。頼むぞ、ソフィア」


 


 爆発と共に、魔導核は粉砕される。

 その瞬間、遠くの空――ドレイゼの魔力が不安定に揺れたのを、レイは感じ取った。


 


 「さあ……そろそろ、あいつらの“炎”が届く頃だな」


 


 そして、彼もまた戦場へと走る。

 影の中を疾るその背に、兄と交わした約束が灯っていた。


 


 ――この影は、あの火を守るためにある。



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