反乱軍
1960年4月14日 未明
日本人民共和国首都札幌 郊外のとある場所
「失礼します!司令官!昨日未明に小樽港にて、日本国のスパイが現れたとの情報が入ってきました。」
「そうか、してそのスパイの行方は?」
「はい、憲兵隊は見失ってしまったそうですが、我々はある程度の目星をつけております。」
「そうか、では接触を急げ。
我々にとってこれはチャンスだ。」
「はい、失礼します!」
薄暗い部屋の中で、司令官と呼ばれた男はほくそ笑んだ。
「さて、どんな人たちかね。」
1960年4月14日 午前12:00
日本人民共和国首都札幌 市街地
「…つけられてるな。」
「みたいですね。」
日本国特務機関の田宮と鈴谷は後ろをついてくる不審な気配を見逃してはいなかった。
「どうしますか?
殺っていいですか?」
「いや、殺る前に少し利用しよう。
誤情報を流して敵を混乱させてやるんだ。」
「了解です。速やかに制圧します。」
人気のない路地の裏へ入った瞬間、鈴谷は反転し、追っ手の懐へ潜り込んだ。
唐突な行動に対処しきれない追っ手に対し鈴谷の拳が炸裂し、追っ手はその場に倒れ込んだ。
「殺されたくなかったら言うことを聞いてもらおうか。」
鈴谷に取り押さえられている追っ手に対し、田宮が言った。
まぁ最も、言うことを聞いたとしても殺すことに変わりはないのだが。
「ま、まて、俺はお前らの敵じゃない。」
対して追っ手は言葉を放つ、だが。
「敵じゃない?はっ、笑わせるな。
こんな敵地に都合よく味方がいるというのか?」
鈴谷は付き放すように言葉を放つ。
「頼む、信じてくれ。」
「さっきからぬけぬけと、いいからだまって言うことを聞け!」
「まぁ待てよ、一応聞くだけ聞いてやろうぜ?」
一瞬で制圧され、弁論を一切聞いてもらえないことに同情したのか、はたまた単純に情報が欲しかったのかは知らないが、田宮は鈴谷を制止し、追っ手の言葉を聞くことにした。
「…実は、俺は反乱軍の人間なんだ。」
「反乱軍だと?」
「ああ。上からの命令があったんだ。「日本国から潜入したスパイと接触せよ。」ってな。」
「それを信じるに値する根拠は?」
「今のところ憲兵隊は俺たちの妨害でここにお前らは別の場所に潜伏していると思っている。
いつもなら巡回がいるはずのこういう路地裏に憲兵がいないのがその証拠だ。」
「…隊長。どうしますか?」
「……取り敢えず信じてみるか。離してやれ。」
鈴谷は拘束をとき、追っ手を解放した。
「ふぅ、ありがとう。
じゃぁ早速ついてきてほしい。
俺たち、反乱軍のアジトへ。
おっと名乗り遅れたな。
俺は反乱軍の下っ端兵士の伊黄重火だ。」
こうして2人は反乱軍のアジトへと案内されたのだった。