潜入?
1960年4月13日未明
日本人民共和国首都北海道 小樽港
ダダダダダダダダッ
「撃て撃て撃てぇ!我が国を汚すアメリカの犬どもを撃ち殺せぇ!」
「「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
日本人民共和国への潜入を行おうとしていた日本国特務機関の田宮と鈴谷は潜入早々に発見され、銃撃戦が発生していた。
当然である、なぜなら。
「だから貨物船で潜入するのは反対だったんだぁぁぁぁぁぁ!」
貨物船に紛れ込んでこっそり侵入という「お前バカなの?」と言いたくなるような杜撰さで計画が始動したのである。結果は上の通り。
「やっぱり上の奴らは、私たち殺そうとしてるんじゃないんですか?帰ったら一発ぶん殴ってやりたいです。」
「生きて帰れたらな!」
その後しばらく逃げ続けた結果…
1960年4月14日 午前8:00
日本人民共和国首都北海道札幌市郊外
「…もう追ってきてないみたいだな…」
「死ぬかと思いました…
それにしてもさすが田宮隊長です。
逃げ足だけは一丁前と呼ばれるだけはありますね。」
「だろ?感謝しろよ、俺の逃げの上手さにな。
それはそうとその噂広めたやつは今度叩き潰すか。」
何とか追っ手を撒いた田宮と鈴谷は札幌郊外から街の中心部へと向かっていた。
今回の潜入任務で最も楽な点は、相手も同じ日本人である、ということだ。
顔で特に怪しまれることもなく、意思疎通も問題ない。
潜入さえできてしまえばかなり楽な任務だと言えるだろう。
1960年4月14日 午前12:00
札幌市街
街の至る所に最高指導者のポスターや銅像が飾ってある札幌市街地は、さすが首都というだけはあって人で溢れていた。
「しっかしまぁよくもこんなに銅像やポスターばかりあるもんだねぇ。」
「シィー、黙れ。共産党の憲兵隊に聞かれたらどうするつもりだ。きっと悪魔ですら顔が真っ青になるようなことをするんだ。」
「国旗は赤いのにな。」
「…まぁとにかく俺は巻き込まれたくないんだ。
愚痴なら誰もいないところで一人で言いな。」
街に飾ってあるポスターには、その一つ一つに最高指導者の功績が書いてあった。
毎度のように成功するにもかかわらず一向に生活の質が変わらない計画経済もである。
しかしこの事実に違和感を覚えるものはいない、不平不満を訴える人も誰一人といない、街の人に満足ではない人など居ない。当たり前である。
だってそんな人達は既にこの世には居ないのだから。
しかし、何事も完全というものはない。
どんなに徹底していてもどこかで必ず綻びが出るものである。