東日本縦断鉄道
1960年5月2日午前11:00
日本人民共和国青森県今別町
なんだかんだで津軽海峡を渡ることに成功した田宮たちは、東日本縦断鉄道を使い、一気に関東まで南下することにした。
「おっ汽車が来たみたいだぞ。」
「中に憲兵とか乗ってないかな…」
「乗ってたら殺ればいいんじゃないですか?」
「何でお前はこう…血気盛んなんだ…」
幸い汽車内には憲兵はいなかった。
「どのくらいかかるんですかね。」
「ここから関東だと…まぁ明日には着くんじゃないかな?」
「明日ですか…なんか急行せよとの命令の割にはのんびりしてるような気がしますね。」
「仕方ねえだろ、こっちはまだ電化してないんだから。」
「そういやさ、日本国の方はいろいろ技術が進んでるみたいだがやっぱりこっちとは違うのか?」
「あぁ、いろいろ違うな。まず、さっきも言った通り鉄道の電化がどんどん進んでるな。国鉄のやつらがなんか新しく新幹線?とかいうやつを作ろうとしてるって話もある。信じられるか?東京から大阪まで約3時間で到着する時速200km超えの高速鉄道だってよ。」
「そんなに進んでるのか。うちの国はなぁ…技術は高いっちゃ高いんだが専ら軍事面での技術だからな…」
そんなことを話しつつ時間は過ぎていったのだが。
1960年5月2日午後14:00
日本人民共和国宮城県仙台市
「おい、これまずくないか?」
田宮達の乗っている汽車は仙台駅に到着した。
そこまでは良かったのだが…
「よりにもよって憲兵が乗ってくるとは…」
「どうやら兵員輸送も行ってるみたいだな、軍人が多い。」
「もしこんなところでバレたら…」
「むしろ堂々としてようぜ、もしかしたら怪しまれないかも…」
「これより車内の炙り出しを行う!
乗客は全員取り調べを受けてもらう!」
「…不味い、ほんとに不味い。」
乗客が1人、また1人と調べられていく中でとうとう順番は田宮達のもとに回ってきてしまった。
「そこの女、出身と年齢は?」
「え、えと、しゅ、出身は岩手県で、年は20です。」
「この列車に乗った目的は?」
「えと、その、それは、観光というか…」
「ほう、観光ねぇ、このご時世に観光か。」
「それは、その…」
「観光と言うよりかは療養ですね。」
「…なんだ貴様は、今はこの女に聞いているのだが。」
「すみませんね。ただ、そいつかなりの人見知りなもんで、こういう受け答えは少々苦手なんですよ。」
「なるほど。で、療養とは?」
「ええ、隣にいるこいつがですね、病にかかってしまいましてね、福島の病院にかかることになりまして、それでこの汽車に乗ったのです。それで、わざわざ福島まで行くんであればついでに観光でもしてしまおうと。」
「それならいいが、あまり紛らわしいことはするな。」
「ええ、すみません。以後気をつけます。」
そう言うと憲兵は次の車両へと向かっていった。
「…はぁ、助かった。」
「お前ほんとに芝居下手だな。」
「わかってるなら最初からやってくださいよ。」
「伊黄は割とできるんだなこういうの。」
「まぁ伊達に反乱軍してねぇからな。」
その後、憲兵による取り調べが終了した後、汽車は最後の目的地、福島に向かっていった。