表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/27

【第25話】邂逅と再会

「ところで君たちは誰? どこから来たの?」

 ふわふわとした口調に拍子抜けしながら、ユニアスは言葉を選びながら応じた。

「俺たちはヴェルドレ地方から来た」

「へえ、奇遇だね! 僕もそこの出身なんだ」

「知ってるよ、ジャックフォードの家系だろ?」

「そうそう、さっきも君はそう呼んだね。だけどね、結局家業は継がなかったんだ」

「どうして?」

「僕が本当の子じゃないから、嫌がらせをする人が居てね。それが辛くて家を出てしまった」

 しょんぼりと語るセオドアは、まるで小さな子供のようだった。

 実家で聞かされた話と大きく齟齬はないようだが、何か根本的に違和感を覚えながらもユニアスは会話を続けることにした。

「家を出てから随分経つだろ? これまで何十年もどこでどうしていたんだ?」

 するとセオドアは、困ったように首を傾げた。

「細かいことはよく覚えていないんだ。一つだけ覚えてたのが、僕を生んでくれた母さんのことで。だから本当の母さんを探そうって決めた。亡くなってはいるけれど、幸い僕はネクロマンサーだからね」

「それでここへ?」

「うん、ここが母さんの故郷だって分かったから。でも困ったな、せっかく元通りにした村の人達が動かなくなってしまった。これじゃあ母さんが安心して戻って来れないよ」

「……元通りだと?」

「そう、ちゃんと昔のままの姿で生活しているようにね。村が元に戻ったら、きっと母さんも喜んで――」

「ふざけるな!!」

 激昂したユニアスの怒声に、セオドアは驚いて言葉を飲み込んだ。

「何が元通り、だ。全うに人生を終えて魂が離れた死体を弄んで、何がネクロマンサーだ! おまえがやっているのはただの死者への冒涜だ。この無免のクソマザコン野郎が。こんなことをして、アーデルハイトが喜ぶと本気で思っているのか?」


「どうして、君が母さんの名前を知っている? 母さんを気安く呼ぶな」


「呼ぶさ。アーデルハイトは俺の蘇生体サモン・ファクトだからな」


「――嘘だ」


 絶望的な呟きに、ユニアスはせせら笑いながら挑発的に返した。


「嘘なもんか。俺たちは三年前から、片時も離れず共に居る」


「嘘を吐くなあああ!!」


 感情が爆発したような叫びと同時に地面が大きく揺らぎ崩れたと思うと、セオドアの背後に巨大な影が起き上がった。目の部分が爛々と光り、骸骨がぼろを纏ったような禍々しい姿。身の丈五メートルに及ぶかと思われる、正に怪物と呼ぶに相応しい異形だった。

「な、な、何あれ、ユニアス!」

「……死者の集合体、ってところだろうな。尤も過去にこの地で巨人が生息していた事実があるって言うなら話は別だが」

「冗談言ってる場合か!! あ、あんなの所詮、見かけ倒しなんだよな?」

「どうかな?」

「どうかなって、おまえ」

「俺は正当な力の使い方しかしたことがない。こんなイレギュラーは初めて見るし、初めて見るものに正しい評価は下せない」

「うん、冷静だね! おまえのそういうとこ、すごいと思うけども今は推測でも良いから情報が欲しいな!!」

「そうだな敢えて言うなら。相当な魔力が注がれているのを感じるし、あの渇いた固い地面をぶち破って出て来たわけだ。力は相当あるんじゃねぇかな、殴られたら死ぬかも」

「じゃあ逃げないとね!?」

 言うが早いかユニアスの腕を掴むと、ラントは踵を返して駆け出した。しかし相手は四足獣の動きで追って来たため予想外なほど速く、巨大な腕の片手ずつにそれぞれ捕まってしまった。

「ぎゃー! 助けてー!!」

「落ち着けって、魔術で燃やしてみたらどうだ?」

「火を付けてこのまま離してもらえなかったら、たぶん一緒に焼け死にますけど!?」

「それは困るな」

「もっと慌ててくれ!! 嫌だ嫌だ、まだ死にたくないー!」

「おまえが先に死んだら、仮蘇生してやるよ」

「だから冗談言ってる場合じゃ……!」

 号泣し始めたラントとは対照的に、ユニアスは落ち着いていた。何故ならラントには見えないものが、彼の目だけには確実に映っていたから。

 二人を捕まえたまま伸ばした腕を引き寄せる怪物の手首が、次の瞬間粉々に爆ぜていた。宙に放り出されたユニアスとラントは、空中でキャッチされて安全な地面に下ろされる。


「主役は遅れて登場ってか? それにしたって、遅すぎだろアーデルハイト」


「アーデちゃん!!」


 颯爽と現れて窮地を救ったヒロインは、間に立ち塞がりながら二人の呼びかけに応えるように見返った。

「ガキの躾は任せたぞ。俺の魔力は存分に使っていいから」

「うん」

 頼もしい笑みを浮かべると、アーデルハイトはぐっと拳を握ってセオドアとその屍人形デッドリー・ドールを見据えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ