空が眩しくて
目薬をさすために顔をあげて、思いの外青空だったことに気がつく。
瞬間、目薬が目を潤して、瞼をギュッと強くつむって俯いた。
──本当は今頃、本当なら今頃。
もうくることは無い、"本当の今頃"に思いを馳せる。
あぁ、嫌だなぁと。
目薬のせいで鼻までぐずぐずしてしまう。
目を赤くして、ずずっと鼻を啜ると、チラチラとこちらを見ていた人達が目に入った。
あぁみんななんて心優しいんだろうと思いつつも、
──なんでこんなバカみたいに天気の良い日に私が泣かないといけないのよ。
人の優しさが、まるで自分を揶揄っているように思えてしまう。
なんなのよ。
今週は、それどころか来週まで雨予報だったのに。
なんで今日に限ってこんなに眩しいのよ。
まだ今日という日が始まったばかりなのに。
あの人の好みの服装なのに。
「みじめになる…」
我慢して一日の終わりに告げてくれたら良かったのに。
思い出毎消してくれる雨が、土砂降りが通ってくれたらいっそ気が楽なのに。
目薬を刺した瞳に、大雨が降る。
そのせいで顔を上げられない。
空が眩しくて。
顔を上げられない。
──次に顔を上げた時の私に、一体何が見えるんだろう。
終