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王弟殿下から特別扱いされていた私、なぜか悪女と体が入れ代わる  作者: 江本マシメサ
六章 誰が犯人なのか!?

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犯人は誰なのか?

 ミセス・ケーラーが状況について説明した。


「ルルさんが使っていた部屋が、不自然に開いていたんです。不思議に思って中を見てみたら、みたら部屋の中が荒らされていまして」


 金庫がある寝室だけでなく、居室や風呂場なども乱雑な状態になっていたらしい。


「あの部屋はルルさんがいなくなってからというもの、誰も入室していなかったんです。部屋の鍵だって閉ざされたままで」


 よくそんなことが言えるものである。

 ミセス・ケーラーは私がいなくなったあとに忍び込んで、化粧台に入っていたエメラルドの耳飾りと首飾りを盗んでいるのだ。


「まだ、他の被害がないかどうかは調べていないのですが」

「ルル嬢、部屋に高価な品は置いてありましたか?」

「あー、たしか、エメラルドの耳飾りや首飾りがあったはずです」


 そう答えると、ミセス・ケーラーはギョッとする。なんで知っているんだ、という表情を浮かべていた。


「偶然化粧台で見かけて、誰の物かわからないのでそのまま触れずに入れていたのですが」

「ああ、あれはルル嬢のために用意していた品ですよ。もしかしたらそれもなくなっている可能性がありますね」


 部屋を確認にいきましょう、とエルク殿下は提案してくれた。

 護衛や上級従僕をぞろぞろ引き連れ、私がかつて使っていた部屋を目指す。

 そこは泥棒が入ったかのような状況になっていた。


「あら?」


 ミセス・ケーラーの姿がないことに気付く。


「おい、どうかしたのか?」

「いえ、ミセス・ケーラーがいないと思って」

「高飛びしたのか?」

「まさか」


 まだ中に犯人が潜伏しているかもしれない、とエルク殿下が室内を確認してくれたのだが、誰もいなかったらしい。


「内部は酷い荒れ具合です。先ほど話に出たエメラルドの宝飾品も盗まれてありませんでした。なんというか、このような事態を招いてしまい、本当に申し訳ありません」


 頭を下げるエルク殿下を前に、おおいに慌ててしまう。

 一方、ギルベルトは勝ち誇ったような表情を浮かべ、「どう責任を取ってくれる?」などと言っていた。


「それにしても、いったい誰が犯人なのか、見当もつきません」

「いや、見当もつかないって、ここの使用人の誰かが犯人に決まっているだろうが」


 ギルベルトの歯に衣着せぬ発言を聞いた使用人達は、怒りの表情を浮かべる。

 それも無理はない。勝手に犯人扱いをされたのだから。

 ただ、ここは他者の侵入を許さない孤高の地。

 外部からの侵入者が犯行に及んだ可能性はごくごく低いのだ。


「ヴェイマル侯子、私の使用人を疑うのは止めていただきたい」

「だってそうだろう? ここは国の重要拠点、他者の侵入を防ぐためにさまざまな対策を施している。そんな場所に、出入りしている使用人以外の悪人が入り込んで犯行に及ぶほうが大問題だろうが」


 ギルベルトは嫌なところをぐいぐい指摘してくれる。

 つまり今回の事件は外部の者が犯人だった場合は、エルク殿下の顔に泥を塗ることになるのだ。

 使用人が犯人でも、エルク殿下の心に傷をつけることになるのだが……。


「面白いじゃないか。犯人とやらを、手っ取り早く探してやるよ」


 ここで名探偵ギルベルトが名乗り上げるとは思わなかった。これから名推理が始まるのか。ドキドキしながら待っていたのだが、彼が一歩踏み出す前にミセス・ケーラーが戻ってくる。


「犯人を、発見しました!!」


 彼女の手には銀盆があり、その上にハートのチョーカーとエメラルドの耳飾り、髪飾りが置かれてある。

 そして、エルク殿下の騎士達によって犯人が連行された。その姿を目にして驚愕する。


 縄に繋がれ、猿轡さるぐつわをした状態で乱暴に連れてこられたのは、テアとチェルシー、クララにアビーの四人だったのである。

 テアは私がいることを知らされていなかったからか、目を見開いて驚いた表情を浮かべていた。

 ミセス・ケーラーは血走った目で訴える。


「テア・ノームの部屋でハートのチョーカーとエメラルドの耳飾り、首飾りを発見しました! 話を聞いたところ、彼女がルルさんが管理する宝飾品を発見し、犯行を思いついた、と。そしてルルさんが宝飾品を回収にこないことをいいことに、部屋から盗み出した――」


 テア以外の三名は協力者だという。


「さらに、四名の部屋から大金を発見しました! おそらくこれまでも何かしらの品物を盗み、換金していた模様です!」


 エメラルドの耳飾りと首飾りを盗んだのはミセス・ケーラーで間違いないが、ハートのチョーカーについては犯人はわからない。

 けれどもテア達が盗んだとは思えなかった。

 テアのほうを見ると、頬が真っ赤になっていた。おそらく誰かにぶたれたのだろう。可哀想に。

 彼女は俯き、前を見ようとせず、何もかも諦めたかのような様子でいた。ただ微かに瞳が潤んでいることが確認できる。

 テアだけではない。チェルシーにクララ、アビーも同様である。

 エルク殿下も信じがたい、という表情を浮かべていた。


 そんな中、ギルベルトだけが一人楽しげだった。


「傑作だな」


 何がそんなに面白いのか。味方ながら腹立たしくなった。

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