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王弟殿下から特別扱いされていた私、なぜか悪女と体が入れ代わる  作者: 江本マシメサ
第五章 ヴェイマル家にて

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疑惑

「親父は曲がったことが大嫌いで、お前のことも愛人かと思っていたんだろう」


 結婚する意思があるとわかれば追いだすことはない。とっさに判断し、婚約の許可を願ったという。


「私が路頭に迷っても、あなたは痛くも痒くもないのに……。ギルベルト、ありがとう」

「べ、別にお前のためじゃなくて、あー、そのー、なんだ」

「略奪で傷ついたあなたの名誉を回復させるため?」

「そ、それだ!」

『だったらすぐに新聞社に連絡して、ルルとの婚約を大々的に報じてもらわなければならないわね』

「まあ……そうだな」


 アンゼルムは〝心躍らず〟が掲載されているドリス紙がいいのではないか、と提案する。


「その辺はすでに親父が手を回していることだろうよ」

『そうよねえ。普段悪評を放置しているヴェイマル侯爵でも、エルク殿下相手の醜聞はいただけないでしょうから』

「明日の朝刊には純愛がどうこうっていう婚約を報じた記事が出回るだろうな」

『楽しみだわあ』

「楽しいわけあるかよ!」


 まさかあのギルベルトがここまでしてくれるなんて、夢にも思っていなかった。感謝でしかない。


『それよりも、ヴェイマル侯爵はルルが生きているのを知って、特に反応をしていなかったわね』

「言われてみればそうかも!」


 もしもヴェイマル侯爵が犯人だったら、私が元気に生き残っている様子を見て何か反応を示すだろう。


『ツィツェリエルをエルク殿下の屋敷へ潜入させるときに、具体的な任務内容を言わなかったじゃない。それでヴェイマル侯爵がツィツェリエルと魂が入れ替わっているルルを試しているのではないか、って思っていたのよ』


 アンゼルムは当初、ヴェイマル侯爵が犯人なのではないか、と疑っていたらしい。


『あの子、ツィツェリエルはいろいろ扱いにくい子でしょう? だからついに犯行に出たんじゃないか、って思っていたんだけれど』

「まあでも、安心しないほうがいいだろう」


 ギルベルトもヴェイマル侯爵の指示で犯行が行われたのではないか、と考えていたようだ。


「そもそもルル・フォン・カステルの身分証を用意したのは父ではなく、側近だったらしい」


 私の身分証はギルベルトが確認したところ、よく確認もせずに騎士隊から拝借してきたものだった。さらにヴェイマル侯爵は誰の身分証か確認せずに、任務の指示をギルベルトに出していたという。


『つまり事件の被害者がルルであると、ヴェイマル侯爵は把握していない可能性があるってことね』 

「そうだ」


 誰が敵なのかわからないので、今後も自分達以外は疑うようにしたほうがいい。

 そう、ギルベルトは注意を促す。


「お前達からすれば、俺も怪しい奴なんだろうがな」

「そんなことないよ。あなたは大丈夫!」


 根拠はないけれど、ギルベルトは犯人ではない。そう言い切ると、目を丸くして私を見つめる。


「どうかしたの?」

「いや、そこまで信用されているとは思っていなかったから」

「私のために婚約までしてくれた人を、疑うわけないでしょう」


 もちろんそれだけで信用しているわけではない。これまでの積み重ねがあるからだ。

 そう告げると、ギルベルトはぷいっと顔を逸らし「わかった!」とぶっきらぼうに返す。


「そういえばこっちの顔でヴェイマル侯爵の前に出てしまったけれど、これからはこっちでルル・フォン・カステルを名乗ればいいのかな?」

「いいや、元の自分の顔で問題ないだろう。親父は女性の素顔と化粧顔が別ってことはわかっているだろうから」


 幸いにも、髪はベレー帽にすべて入れていたので、私のもともとの髪色を見せても違和感など覚えないだろう。


「それにしても、ヴェイマル侯爵は女性についてお詳しいんだ」

「そりゃ、経験豊富だろうからな」


 なんでもヴェイマル侯爵は大変おモテになるようで、たくさんの愛人を抱えていらっしゃるらしい。


『ギルベルト、あなたも愛人の一人や二人いるんじゃないの?』

「いるかよ!」

『だったら恋人は?』

「そんな暇あるか!」


 なんでも現在、ギルベルトは侯爵家の仕事の三分の一を担っているらしい。こう見えて忙しい毎日を過ごしているようだ。


「死ぬほど忙しいけれど、まあ、お前の頼むレベルのことだったら、聞いてやらなくもない。どうせ、くだらないことだろうからな」

「わあ、嬉しい」


 あまりの上から目線に、棒読みの喜びとなってしまった。


「で、何かあるのか?」

「ないよ」

「いや、何かあるだろうが」


 死ぬほど忙しいわけに、私のお願いを捻り出そうとしてくる。


「なんでもいい、言え」


 ここで重ねてないと言ったら怒りそうだったので、一生懸命考えてみた。すると一つだけ叶えてほしいことがあったのを思い出す。


「そうだ! 〝心躍らず〟の前回の続きが欲しいんだけれど」

「あーーーー、あれな! わかった」


 暇なときに持ってきてくれるらしい。


「ありがとう、楽しみにしているから」

「いいか、待つなよ。俺は忙しいからな」

「はいはい」


 ギルベルトが帰ったあと、しばらくしたらメイドより数日分の〝心躍らず〟の切り抜きが届けられる。

 やはり今日届いたか、とアンゼルムと顔を見合わせて笑ってしまった。

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