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王弟殿下から特別扱いされていた私、なぜか悪女と体が入れ代わる  作者: 江本マシメサ
第三章 謎が謎を呼ぶ!?

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反省会

 意地悪をされたときの対処法は、叔母が教えてくれたものだ。

 まさかここまで成功するとは思わなかった。感謝しかない。

 けれども効果てきめんすぎて、使用人達の表情に緊張が走っている。

 やりすぎてしまった。

 これでは噂話に聞き耳を立てる、ということができなくなるだろう。

 同時に申し訳なくなる。

 やはり上級使用人がここにやってきても、仲よくできないのだ。

 まあ、私がエルク殿下のお気に入りだから、というのもあるのだろうが。

 気まずい雰囲気の中でどうしたものかと思っていると、テアとチェルシー、クララがやってきた。

 彼女達は今から休憩時間のようだ。


「テア! みんなも!」


 彼女らは私を見つけるなり、嬉しそうに駆け寄ってきた。


「どうしてルル様がこちらに?」

「他の人達とも仲よくなろうと思ったから」

「そうだったのですね」


 そんな会話をしているうちに、新しい料理が追加されている。テア達は温かい料理をいただけるようだ。

 残りの料理はテア達と食べることになった。


「あら、そういえばアビーは?」

「キッチン担当は夜の仕込みで忙しいから、厨房で食べるそうです」

「へえ、そうなんだ」


 昼過ぎから夕方までがもっとも忙しい時間帯らしい。

 キッチン担当は夜まで紅茶の一杯すらのんびり飲む時間もないという。夕食を食べている暇もないようだが、一息つくような時間帯にミート・ティーと呼ばれる肉料理が含まれたメニューをいただくようだ。


 テア達がきてくれたおかげで、気まずい空気から解放された。心の中で盛大に感謝したのだった。


 残った料理は各自持って帰っていいというので、ハティへのお土産としてパンとベリーをハンカチに包んであげよう。

 夕食についてはエルク殿下次第らしい。帰宅できれば一緒に食事をし、帰れないほど忙しい日は自室でいただく。

 当日にならないとわからないというので、夜の予定は未定だった。

 テア達と別れ、私は階上へと戻る。


 仕事は午前中に終えてしまったので、午後からは自由に過ごしていいらしい。

 ミセス・ケーラーに何か仕事がないか、と聞きにいったものの、何もないと言われてしまった。

 それだけでなく、他の使用人に仕事がないか聞きにいくことを禁じられた。

 私がやりそうなことはお見通しらしい。

 今の時間から夕方までは第一休憩室には誰もやってこないから、好きに過ごしていいと言ってくれた。

 テアや他のメイドも招いても構わないらしい。なんて寛大な。

 そんなわけで、午後からは少しゆっくりさせていただく。

  部屋に戻ると、ハティが迎えてくれた。


『おかえりなさい!』

「ただいま」


 ハティは私の肩に乗って頬ずりしてくれる。なんて甘えん坊で懐っこい子なのか。

 お土産があると言うと、無邪気に喜んでいた。

 ハティがパンを突くのを眺めながら、昼間の反省をする。


「アン、私、失敗しちゃった」

『何が?』

「使用人達に怖い人だって思われてしまったから」

『ああ、食堂での見事な立ち回りのことね』

「うう、忘れて」


 もっと控えめにすればよかったとか、情報を得るためだったらやり返さなければよかったとか、後悔しっぱなしである。


『あれでよかったのよ。舐められた態度を我慢するなんて、精神状態にもよくないし』

「アン、ありがとう」


 ただ、下級使用人に対する調査は行き詰まってしまった。

 頭を抱えていたら、アンゼルムがいい案があると言う。


『こういうときは相手が喋ってくれるまで待つのではなくって、強制的に喋らせたらいいのよ』 

「どうやってするの?」

『自白させるのよ』


 問いかけに対し素直に情報提供をしてくれたらいいのだが、昼間のやりとりで私はすっかり下級使用人達の敵になってしまっただろう。


『ルル、大丈夫よ。自白剤を作ればいいだけの話だから』

「自白剤?」

『ええ。材料は庭にあるはず』


 そう言ってアンゼルムはバルコニーから庭を見下ろす。目を細めたかと思ったら、『あったわ』と声をあげた。


『教えてあげるから、一緒に行きましょう』


 そう言ってアンゼルムはバルコニーの手すりに前脚をかける。


「待って、アン。私はギルベルトみたいにバルコニーから飛び降りることができないの」

『言われてみればそうだったわね』

『ハティに任せて!』


 背後からハティがやってきて、驚くべき行動に出る。

 ハティの小さな体が光に包まれたかと思えば、突然巨大化した。


「え!?」

『背中に乗って』

『あなた、そんなことができたのね』

『できるよ!』


 他の人に見られたら怪しまれるだろう。すばやくハティの背中に乗り、地上へ運んでもらう。

 ハティの羽毛はふかふかで、大きく揺れることもなく乗り心地は安定していた。

 あっという間に地上へ降ろされる。

 アンゼルムも続けて着地した。


『ルル、こっちよ』

「ええ」


 ハティは小さくなって私の体に止まった。

 外は寒いので、手早く終わらせたい。急いでアンゼルムのあとを追いかける。


「庭の植物をいただくのだったら、庭師頭ヘッド・ガーデナーに声をかけたほうがいいのかな?」

『材料はその辺に自生しているようなものだけだから、許可は必要ないわ』


 それを聞いて安心する。

 アンゼルムの指示で数種類の植物を採取し、部屋に戻る。

 これを煎って、お茶として出すらしい。数回分の自白茶が完成した。


『さて、誰を自白茶会にお招きしようかしら』

「迷うねえ」


 なんて会話をしていると、扉が叩かれる。


「どなたですか?」

「ヨルダン・レーベルだ」


 それは昼間にミセス・ケーラーから紹介された、下級使用人達のボス的存在だった。

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