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王弟殿下から特別扱いされていた私、なぜか悪女と体が入れ代わる  作者: 江本マシメサ
第二章 エルク殿下のお屋敷メイドとして潜入!

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お屋敷見学

 屋敷内を徒歩で移動しようとしたら半日以上かかってしまうとのことで、転移陣を使って案内してくれることになった。アンゼルムもこっそりついてきてくれる。

 案内してくれるのは厨房キッチンメイドのアビー、洗濯ランドリーメイドのチェルシー、蒸留室スティルルームメイドのクララ、それからテアの四名。


「あ、あなたは――」


 アビーだけ私を見て驚いたような表情を浮かべる。


「どうしたの?」

「いいえ、なんでも!」


 ぶんぶんと首を横に振る。他人の空似だったと強く言うので、それ以上追求しないでおいた。


「行きましょう」


 まず向かったのはチェルシーの職場である洗濯室ランドリー・ルーム

 思っていたよりも広く、内部には大きな鍋がいくつもあり、洗濯物がぐつぐつ煮込まれているらしい。今は昼休憩中なので稼働していない。洗濯メイド達の姿もなかった。

 チェルシーが説明してくれる。


「布の素材によって、洗い方を変えているの。ぐつぐつ煮込んでいるのは生地が丈夫な綿や麻なんだよ」


 煮沸消毒できる上に、汚れがみるみる落ちるらしい。


「繊細な絹は手洗いで丁寧に洗濯するんだ」


 真夏は茹だるような暑さになるようで、倒れる洗濯メイドが続出した。

 それを聞いたエルク殿下は、魔法使いを派遣し、冷房魔法を常時展開するようにしてくれたという。今では倒れる洗濯メイドもおらず、快適に作業ができているらしい。


「エルク殿下はすばらしいお方で、使用人を大事にしてくれるんだ」


 貴族にとって使用人は消耗品だ、みたいに言う者も少なくないらしい。そんな中で、エルク殿下は使用人達を家族のように扱ってくれるという。なんていい人なのか、と思ってしまった。


 続いて転移陣を用いて向かったのは、アビーの職場である厨房。

 夕食の仕込みをしているようで、料理人達が忙しなく働いていた。ここは窓の外からの見学になりそうだ。

 その中で、長いコック帽を被った中年男性がアビーに気付く。


「おい、アビー! サボっているんじゃねえよ!」

「料理長、今は休憩時間なのよ」

「うるせー!」


 アビーは困ったような表情で振り返り、口は悪いけれど根はいい人なの、と教えてくれた。


「料理長の料理は絶品でね、夕食を楽しみにしていてね」

「ええ、期待しているから」


 続いて向かったのは、クララが働く蒸留室。

 ここでは来客用のお菓子を焼いたり、庭で採れた花から精油を絞ったり、石けんを作ったり、と物作りを行う工房らしい。

 現在は秋薔薇あきそうびを加工しているらしく、かぐわしい香りで部屋がいっぱいだった。

 棚にはたくさんの瓶が並んでいて、まるでお店のよう。見ているだけでもわくわくする。


 三人の作業場以外の場所も案内してもらった。

 パン焼き専用の〝パン焼き室ベーク・ハウス〟。パンが焼けるいい匂いが漂っていて、料理人に新入りだと言うと焼きたてのパンを分けてくれた。

 魔法仕掛けの冷蔵室コールド・ルームには、凍った肉や魚が保管されていた。

 部屋全体が凍えるような寒い環境だというのは初めてだ。

 ルネ村では冬に造った氷で地下部屋を造り、なんとか夏まで保たせるのだが。

 巨大なお肉はエルク殿下が仕留めた巨大鹿らしい。年末にある降誕祭で使用人達に振る舞われるそうだ。楽しみである。

 隣にある食品貯蔵庫ラーダーは厳しく管理されているようで、鍵がしっかりかけられていた。食品保管庫担当パントリー・マンがいれば、中を見学させてもらえるらしい。

 酪農室デイリー・ルームには牧場から運ばれてきた新鮮な牛乳やバター、ヨーグルトなどが保管されていた。

 チーズは工房で手作りされたものらしく、絶品だという。いただくのが楽しみだ。


 案内はこんな感じで終わった。

 最後は私の部屋に招いて、お茶を飲むことにする。

 案内を通して打ち解けてくれたようで、私に対する遠慮みたいなものはなくなっていた。

 皆、テアと同じ十五歳前後らしい。十歳くらいのときからこのお屋敷で働いているという。

 彼女達は親を亡くしたばかりで、同じ村出身なんだとか。


「そうだったんだ。私もルネ村っていう、辺境にある田舎出身なの」


 同じ村出身とのことで、親近感が湧いたらしい。

 彼女達は境遇について話し始める。


「私達の村は遠く離れた場所にあって、騎士隊の駐屯地すらなかったんだ」

「魔物も多くて、毎年たくさんの人達が亡くなっていたの」

「そんな中で、魔物の集団暴走スタンピードが起きて……」

「村は壊滅寸前だった」


 五年も前の話だという。

 村を襲ったのはワイバーン。昔から村周辺で見かけるワイバーンは気性が大人しく、村に近寄ることすらなかったらしい。

 それなのにそのワイバーンが集団となって村を襲撃したという。


「何日も前から国へ助けを求めていたけれど誰もやってこなくて――」

「もうダメだ、って思ったときに奇跡は起こったの」

「エルク殿下が率いる青狼騎士隊が駆けつけて」

「ワイバーンを倒してくれた」


 エルク殿下は村を救っただけでなく、村人達に衣食住を提供してくれた。

 親を亡くした子どもは王都に連れて帰り、使用人として雇ってくれたという。

 子ども達が年頃になったら結婚の面倒も見てくれて、新居までも用意するようだ。

 親代わりのようなことをエルク殿下はしているのだろう。

 なんてすばらしいお方なのか、と改めて思ってしまった。

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