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王弟殿下から特別扱いされていた私、なぜか悪女と体が入れ代わる  作者: 江本マシメサ
第八章 踊れ、踊れ

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小説発売記念ショートストーリー『ギルベルトとルネ村へ』

 結婚前に、ギルベルトと一緒にルネ村に行くこととなった。

 たっぷり時間をかけた到着した生まれ故郷は、まったく変わりなくのどか。

 一面に広がる田園風景を前に、ギルベルトは呆然としているように思えた。


「その、びっくりしたよね?」

「ああ、驚いた!」


 王都育ちのギルベルトにとって、この光景は衝撃だったのかもしれない。


「なんて美しい場所なんだ」

「え!?」

「すまない、少しメモを取ってもいいだろうか?」

「いいけれど」


 そう言うやいなや、ギルベルトは猛烈な速さでメモを取り始める。

 どうやら小説の参考にするために、風景を描写したいらしい。

 それからしばらくギルベルトは風景を眺めながら、楽しそうにメモを取っていた。


「すまない、時間をかけてしまって」

「ううん、気にしないで。ルネ村の風景が、作品の役に立つみたいでよかった」

「ああ。こんなに美しい場所だとは思いもしないから、ペンが止まらなかった」


 ルネ村はギルベルトにとって何もなく、退屈な場所だろうと決めつけていたが、そうではなかったようだ。

 彼の言葉のひとつひとつが、嬉しくなる。

 そのあともギルベルトは風車を目にして感嘆し、逃げだした山羊の群れに驚き、子ども達の元気いっぱいな様子に笑みを浮かべる。

 そんな彼と共に、実家に帰省した。

 両親が立派な貴公子であるギルベルトを前に、ひたすら驚いていた。


「まさか娘がこんなに立派なお方と結婚するなんて」

「びっくりしたわ」


 父はギルベルトのために大きな雌鹿を仕留めたらしく、晩餐会のメインとして提供された。

 ギルベルトはその鹿を、世界一おいしいと絶賛してくれた。


 翌日は村の案内を行う。

 私が木登りしていたリンゴの樹や、夏に泳いで冬はスケートをして遊んでいた湖、春に美しい花を咲かす花畑などなど、余すことなく案内する。


 ギルベルトはルネ村をたいそう気に入ったようで、社交期以外はここで過ごしたい、なんてことも言い出す。

 両親は社交辞令でも嬉しい、と喜んでいた。


 ギルベルトは草原に寝転がり、夢みたいなことを語り始める。


「ここにいたら、爵位をツィツェリエルに譲って、小説の執筆だけして暮らしていきたいな、なんて思うようになった」

「ツィツェリエル、怒りそうだよね」

「怒るだろうな。父上とアンゼルムと一緒になって」

「最強の布陣だね」

「面倒だな。諦めるか」


 何もかも、役目を終えたあと、ここでのんびり暮らすのもいいかもしれない。

 そんなことを語るギルベルトの隣に寝そべり、そうだね、と答える。

 穏やかな昼下がりの話だった。

挿絵(By みてみん)

本日、下巻の発売日です!

どうぞよろしくお願いします

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