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極地カフェ  作者: 東 吉乃


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8/8

7.閑話・後:ストレスって、実は精神的なものだけではないかもしれません



 さて、前段が長くなりましたが、ようやく現在の話になります。


 ちょうど今年の2025年9月23日に、朝から右耳の聞こえがまた悪くなりました。今回はかなり手こずって、完治までにほぼ二ヶ月かかってしまい、その間の執筆がほとんどできない(月に一万文字程度)状態でした。

 聴力が落ちてすぐ、これまでの経験を活かして、すぐに耳鼻科と鍼に駆け込みました。

 ところが全然改善しないのです。

 というか症状が不安定で、かなり振り回されました。

 寝て起きたら、ふと良くなっている日がある。でもその日の夜には聞こえが落ちる。逆に、日中は聞こえが回復しているのに、夜寝たら翌日は朝から聞こえない、など。早く寝ても夜更かししても、必ず不調・復調が再現するわけではなく、本当に厄介でした。


 この時の症状の特徴は二つありました。

 一つは耳に指を入れて塞ぐと、正常ならば聞こえる「ゴオー」という音(手の震えの音でしたっけ)が、調子の悪い日にはまったく聞こえないこと。つまり低い音が如実に聞こえていない、ということです。

 もう一つは、その耳を塞いだ指をぱっと引き抜くと、「びよん」というような耳の中に水が入った時のような音が聞こえること。正常な左耳でそれをやってもその音は一切聞こえないので、明らかに右耳の内部に水かリンパ液が溜まっているか、もしくは鼓膜が変に伸びて震えているような感覚でした。


 耳鼻科と鍼に一週間かけても一向に改善しない症状。そこで、私は最後の手段を使うことにしました。

 対難聴の最終兵器、「運動」です。


 これはメニエールや目眩、聞こえの悪化のある患者についての論文があって、継続的な有酸素運動は有意にそれらの症状を改善する、という研究結果があることを知っていたからです。三年前の症状悪化時に調べていたのですが、当時は鍼だけで回復したので定期的な運動まではやっていませんでした。

 今回は症状が不安定すぎる&投薬・通院の効果がほぼ見られないということで、9月末から走るようにしました。平日は朝に20~30分+昼休みに20分ほど、休日はまとめて40~50分ほど。

 ちなみに目標は一日8,000歩を歩くことで、その内数として最低20~30分の有酸素運動(ちょっと息が上がるくらいの負荷運動。私は軽いジョギング)を組み込む方法です。


 有酸素運動ってどんなの?

 え、ジョギングとか無理ハードル高い。


 そう思いますよね。体育授業で日常で身体を動かしている学生ならともかく、大多数の社会人にとっては運動と言われると心理的な壁がかなり高く立ちはだかります。


 でも大丈夫。

 運動といっても基本、歩くだけでOKです。できれば早歩きだと完璧!


 有酸素運動って、ざっくりいうと「ちょっと息が上がるけど、会話は続けられる」程度の負荷なんです。早歩きなら、会話はできますよね? 一人なら、ちょっとテンポの速い曲を聴きながらこれに合わせて歩く、とかでも充分です。

 ちなみに私が歩かずにジョギングにしたのは、手っ取り早く歩数を稼ぐ為です(笑)

 基本、本業が忙しくて平日にはあまり時間が取れないんですよね。

 執筆の一時間を捻出できるかどうか、の状態のところに歩数8,000歩をねじ込むとなると、単位時間当たりの歩数を上げるしかなかったという実情です。

 ジョギングへのハードルが低かった理由は、遠い昔の話ですが私は元陸上部で中・長距離を専門にしていた為で、云年ぶりといいつつも一応走り方などは身体が覚えている状態だったからです。


 さて、ここからは聴力回復までの経過です。

 毎日、朝昼晩の聞こえの記録を残したのですが、最初の一週間は悪いままでほとんど変化無しでした。

 ただ、二週目からは少しずつ改善が見られました。一日のうちのどこかの時間帯は、ふと聞こえが良くなる時間帯が出てくるようになりました。例えば、朝起きぬけは耳の調子が良くなくても、朝に走って会社に出社して、少しするとそういえばふと聞こえが良くなっている。ただ、これがずっと持続するかというとそうではなくて、夜には疲れが溜まってくるせいか、少し耳鳴りがしたり聞こえがまた落ちたり、ということもままありました。

 そんな感じで、一日のうちの数時間は良い時間がある、それが無い日もある、という上下を繰り返して二週間ほど経つと、その良い時間帯が少しずつ伸びてくるようになりました。午前中だけだったのが、午後からも良い状態が持続したり。

 この症状の面白い、というと語弊がありますが、面白かったのが睡眠が改善因子としてはあまり寄与しなかったな、という点です。

 人情としては、一日疲れて耳の調子が良くないまま眠りにつくと、「どうか寝て明日の朝は改善していますように」と願うのですが、たっぷり寝ても翌朝も大して変わらないのです。

 逆に、睡眠時間が短くて身体のコンディションが悪いはずなのに、朝から聞こえが普通に良かったり。そしてこの例に当てはまらないこともあり、本当に良く分からない挙動というか、症状でした。


 あ、ただ如実に悪化する要因だなと思ったのは、飲酒です。


 これはおそらく体内の水分量が減るとか血流などが関係しているんだろうなと思いますが、二度ほど付き合いで飲酒したところ、おそらく難聴とは絶望的に相性が悪いのでしょう。いずれも飲んだ翌日はほぼ聞こえない、まで症状が悪化しました。お気をつけください。

 なんていうか、本当にあれこれ試したので自分で人体実験している感じでした。


 あともう一つ、外食(塩分の高い食事)も割と悪化率が高くなりました。


 飲酒と同じで、基本的に体内の水分バランスが崩れる方向になるので、良くなかったんだろうなと。

 超でかいかつ丼とか、割烹の昼定食とか。どれもこれもおいしくて完食してしまうわけですが、その数時間後くらいから聞こえは悪くなりましたね。

 外食に関しては少なくとも私はということなので、もう少し意識して三食で塩分調整図るとか水分沢山採っている方なら、もう少しマシというか影響少ないかもしれません。


 そんなこんなで、良い悪いを繰り返しながら時は9月から11月に移り変わります。

 運動を初めてから二ヶ月経過して、基本的に毎日どこかで聞こえは回復している状態になりました。が、それでも一日ずっと良いということはなく、もう少し運動を続けなきゃ効果は出ないかなーなどと考えていた頃です。(前段で書いた継続的な有酸素運動の話で、そこでは確か8か月継続すると8割だったか9割が改善する、という話だったので)


 11月17日の朝から、ふと聞こえが完全に戻りました。


 これまでは、調子が良くてもどこか信じきれないというか、またぶり返すであろう予感というか感覚が常に付きまとっていて実際そのとおりだったのですが、その日は違いました。

 明らかに聴力が落ちる以前の感覚に戻った、といえば分かるでしょうか。

 嬉しかったのですが、正直言って「なぜ急に?」という疑問が拭えませんでした。だって、二か月間運動していて少しずつ良くなってはいたものの、まだしばらくかかりそうな感じだったからです。これが急に好転するというのも俄かには信じられない、というか。

 でもこの感覚は割りと正確だったようで、その日を境に寝ても起きても耳は正常のままで、これを書いている現在に至ります。

 これで運動だけで改善した、と結論づけるのは簡単なのですが、しばらく考えて一つだけ思い当たることがありました。


 もしかして免疫低下していて、それが今回の聴力低下の原因だったかも、と。


 実は、9月5日に顔にできものができたんです。虫刺されのような。

 ちなみになぜこの日を覚えているかというと、ちょうど出張に出ていて、フライトを終えて空港に着いた時に「あれ、顔になんかできてる」と気付いたからなんです。離陸前は無かったのに、飛行機の中で虫に刺された? 痛くも痒くも全く無いのに? と、不思議ではありましたが、まあそんなこともあるかもな、とさして気にも留めずにいました。

 で、ただの虫刺されだろうから、まあ一週間もすれば治るだろうと高を括っていたんです。

 ところが全然治らないんです。丁度こめかみの辺りで、敢えて鏡を見て顔を傾けなければ見えない位置だったこともあり、全然気にしていなかったんですが、周囲から「結構酷いよ!?」と驚かれるようになったのがおよそ二週間後、9月22日でした。

 そう、聞こえの落ちる前日です。

 この22日に、三人以上に指摘されて「そうかそんなに酷いのか」と認識し、ようやく皮膚科に行ったんです。

 ただしその症状が出てから二週間は経っていたので、さすがに「これ!」という原因特定はできなかったんですが、皮膚科の先生の見立てでは「虫ではなさそう」ということでした。顕微鏡で病片を見て頂いて、カビなどでもない、と。

 で、基本的に症状は赤みと痒みなので、そこはステロイドの塗り薬で赤みを軽減+痒みはなにかあれば飲んでいる市販薬のアレジオンが抗ヒスタミンなのでそれで良いとなり、対症療法をしました。

 結果、こめかみの傷はそれから一週間で治りました。

 さすが皮膚科の薬! と喜んだのも束の間、同じようなものが顎や眉、そして首へと徐々に飛び火していきました。

 一か所が治ると次の箇所に出てくるんです。最終的に、いわゆる子供がよく罹患する「とびひ」にそっくりでした。

 一つ一つは大したことのない傷というか小さかったのでつい放っておいて「そのうち治るだろう」と淡い期待を抱きつつ日々を過ごしていましたが、これがまあ頑固に治らないんですよね。最終的に、うなじから左肩にかけて直径7~8cmほどのかなり大きな傷が出来てしまいました。

 そして、以前に処方して頂いていた薬を塗っても治りません。

 というわけで、今度はまた別の病院に行き、今度はとびひの時に塗る抗生剤と、かなり酷い症状ということで飲む方の抗生剤も合わせて処方されました。抗生剤ってすごくて、塗る・飲むの合わせ技で効果てき面、いたちごっこを繰り返していたこの症状が飲み薬を終えた時にはかなり症状が改善しました。


 そして、忘れもしない11月17日の朝。

 ふと鏡を見ると、頬に残っていた最後の一か所がかさぶたになってほぼ治っていたのでした。


 ここで、今回の耳の調子と連動しているな、と気付いたんです。

 たまたまかもしれません。

 ただ、このとびひっぽい奴は、そもそも特殊な菌ではなくその辺にいる黄色ブドウ球菌などが原因だそうです。平時はどうということはなくても、免疫が落ちるととびひなどの症状を引き起こします。

 なので、そもそも9月頭に自覚なく体調を崩していた → まずとびひ様の症状が表れた → 免疫低下状態がストレスになって難聴が再発した、という流れだったのでは、と思い至りました。私は医者ではないので定かではありませんが、少なくとも難聴などの原因となるストレスというもので自分自身に思い当たるのがこれしかありませんでした。


 単純にストレスというとよく精神的なものを思い浮かべがちですが、今回はものの見事に物理――本当に肉体的なことだったのでは、というお話です。


 免疫低下が今回の原因だったとしたら、前回の時に効いた鍼が中々効かなかったのも納得です。

 前回はステロイド系の薬を全てやってそこで可能な限りの効果は得た上で、鍼で耳神経に直接アプローチして、奏効しました。多分、投薬期間中に仕事量の調整や睡眠優先するなどして、精神肉体共にストレスの要因は取り除かれていたからであろうと思います。

 今回は耳神経そのものにはそれなりに効いていたのでしょうが、別口の原因があってそこに気付かず対処が遅れた結果、回復にも時間がかかってしまった形かな、と。


 一連の流れを経験して、これを読んでくださっている方々にお伝えしたいのは、ほんの少しの不調や異変であったとしても甘く見ず、すぐに病院にかかるようにしてください、ということです。

 私がそれなりに人生経験を積んで理解したことは、人生における悩みの九割はお金で解決できるということと、同時に残る一割はお金では決して解決できないもの――健康は、損なってしまってからでは取り返しがつかない、ということです。


 健康は、全てにおいて予防が大切です。


 大切というか、掛かるコストが予防と対症では如実に異なります。

 例えば歯も、虫歯になったり抜けてから慌てても遅く、しかもその時点で選べる手段は限られていますが、予防歯科で定期健診に通うだけで加齢による予後がまったく違います。

 健康診断や人間ドックの結果が芳しくないけれど、つい受診や運動などを後回しにしてしまうのも分かります。他でもない自分がそうでしたから。

 でも、小さな不調の積み重ねは、いつか大きな変調として現れます。

 それが数ヶ月後なのか十年後なのかは誰にも分からないし、運次第の部分は間違いなくあります。それでも、たとえば今日から毎日十分でいいから早歩きをやるだけでも、確実に肉体劣化の速度は緩くなります。


 私は今回聴力が落ちて、しかもいつものように回復しないという時期を経てから慌てて運動を始めましたが、それでも改善するかしないかの未来はまさに五里霧中で、不安になることも多かったです。

 それでもやらずに悶々とするよりは、確約されない未来であってもそれを信じて突き進むしかなかったのでどうにか続けて、再び正常な聴力を取り戻すことができましたが、こういう思いをする人は少ない方がいいに決まっています。

 誰もが皆、毎日を健やかに過ごせたらいい。

 願わくばそういう難聴やメニエールなど感覚器の不調に悩まされている一部の人だけの話ではなくて、日頃から運動不足になりやすい執筆業の方々なども意識して運動を日々の生活に取り入れてくだされば、と思います。


 ですから、私は迂闊だった自分の体験をここに記して、少しでも多くの方の一助になれればと願っております。

 長くなりましたが、ここまでご覧くださってありがとうございました。


 次回からは、また創作関連のお話をしようと思います。


 

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