混成艦隊出陣
1時間後、初島が武蔵に合流し、早速、極東艦隊の3艦長とクルー達、そして重工の高橋技術主任と技術チームが乗り込んだ。
そして2時間後、高橋技術主任からの連絡を受けた帆華艦長が初島艦橋へ上がった。
「完全自動航行にAI化されていましたが、元は教習用護衛艦ですので、AI制御機能を調整することで通常護衛艦同様の支援AIのみの艦となりました。被弾している前部甲板も確認したところ、主砲は交換修理が必要ですが、垂直発射システムは修理可能でしたので、あと1時間ほどで修理完了し、使用可能となります。ただし、航行性能に関しては、教習艦ですので、2世代前の護衛艦相当といったところですので、あまり期待はされない方がよろしいかと思います。」
重工の高橋技術主任が、帆華艦長とあけぼの、きりしま、あまくさの3艦長に説明した。
「わたくしどもの初島が少しでもお役に立てるようで、うれしく存じます。 修理が後1時間と言う事ですね。 ちょうど武蔵でクッキーが焼きあがったところですので、その間、皆様に一服して頂ければと思います。武蔵のココアクッキーは好評ですのよ。」
帆華艦長が微笑みながら、そう続けると、あけぼの艦長も微笑みながら答えた。
「ココアクッキーですか。我々の護衛艦では中々食べられませんので、隊員も喜ぶと思います、ありがとうございます。」
1時間後、武蔵艦橋に初島からの通信が入った。
「初島、垂直発射システムの修理が完了。各部異常なし、現在機関正常稼働中。 我々が正規軍人であるため、本艦が旗艦として指揮を行いますが、よろしいでしょうか?」
「もちろんで御座いますわ。わたくしたちは周年記念航海中の学生艦です。地球連邦政府本部までの先導と護衛をお願い致します。」
艦長が艦橋メンバーを見渡して、頷きながら答えた。
「富士宮艦長了解です。 それでは初島両舷前進全速、目標、地球連邦政府本部。武蔵は単縦陣で航行」
初島艦長となったあけぼの艦長が軍人らしい張りのある声で出航指示を出した。
「それではわたくし達も参りましょう。 武蔵両舷前進全速、目標、地球政府本部でお願いします。」
武蔵が大桟橋出港時とは逆の、護衛艦を先頭とした単縦陣で動き始めた。
「これで残りの航海は正規軍の皆様とご一緒ですので、安心ですわね。わたくし達は周年記念航海行事を楽しみましょう。基本航海はMAIに任せて、まだ開催できていなかった出航記念懇親会の準備を致しましょう。 実はわたくし、艦内イベント用に高橋技術主任にお願いして、いくつか屋台を積み込んで頂いておりましたの。 懇親会では綿菓子屋台で参加させて頂きますわ。」
艦長が満面の笑みでメンバーに説明する。
「敵艦隊を全滅させる武装を準備していた高橋技術主任が綿菓子屋台も準備してたデスか。大きなものから小さなものまで、何でも準備できるのデスね・・」 ミミが呟いた。
「そうなんですが、高橋技術主任が準備したのは、電磁装甲の技術を応用した、高出力で通常の倍速で綿菓子ができる、すごい屋台なのだそうですよ。」艦長が続けた。
「・・超電磁技術に対する冒とくのような・・・ だいたい、綿菓子は、あの、ゆっくりと作られる過程が楽しいんじゃないないか?・・・」凪沙がミミに向かって小声で呟いた。