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吸精魔の歩き巫女 玲奈の天下創世記  作者: 羽柴藤吉郎
第2章 尾張のうつけとの邂逅
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吸精魔と第六天魔王の婚姻の儀式

美濃からの花嫁 帰蝶になりすまし、玲奈は信長と新婚の初夜に望む。


 天文17年(1548年2月)の如月吉日。


 尾張那古野城において、織田信長と玲奈の婚礼の儀式が滞りなく挙式された。


媒酌人は傅役の平手政秀夫妻が務め、花婿の両親である信秀と戸田御前夫婦は、魔道師玲奈が変身する帰蝶を本物と信じて、微塵も疑おうとしない様子を見て、信長は内心で愉快そうに笑っていた。


織田の一族郎党に家臣達が、めでたいと祝っている宴は呼び寄せた巫女達の祝いの舞いを経てから媒酌人の平手が厳かに言った。


「若様に姫様……夫婦の誓いの杯をお持ちします」


白無垢姿の玲奈がまずは杯を恭しく両手で受け取り、並々と注がれた御神酒に口をつけて呷る。

それから信長に杯がまわされた。

信長が無造作に杯を一気飲みして息を吐き出す。


参加者が一斉に「おめでとうございます」と祝福する声を聞きながら玲奈は信長と夫婦になれた喜びを噛み締めて笑顔になる。


宴もお開きになり、二人は灯りをかざす侍女の先導で床に赴いた。


初夜の閨にて信長がさも疲れた顔でのびをして欠伸をした。

「あぁ肩がこって疲れた……玲奈すまんが揉んでくれんか?」


「婚儀の席はさぞや疲れたでしょうから、今すぐお揉みしますわ」


玲奈が信長の背中に移動して肩を揉み始めた。


「しかし上手く化けたものだな……俺はてっきり蝮の娘とばかり思っていた」


「まぁ酷い……まるで狐狸の類いみたいな仰りようですね」

相手が怒っていないとわかる信長は、似たような術を使うクセに怒ることはあるまいと宥める。


言われて玲奈は「はい、そうですよね」と受け流した。


「ひとつ言っておこう、俺はこれからお前だけには気を許すゆえよろしく頼む」

信長がそう言って玲奈の手に自分の手をおく。

「まあ嬉しいですわ、旦那様」


充分にほぐした肩から手を離して立ち上がる玲奈が、白地の小袖を脱ぎ捨ててから襦袢を脱ぎ捨てる。


信長も着物をサッと脱ぎ捨てて裸になる。

「どうぞ存分に私を味わって」

玲奈が妖艶な笑みを浮かべて信長を抱きしめた。



ーーーーーーーーー

天文18年(1549)摂津の江口で、三好長慶と幕府の有力者細川晴元が戦い、三好長慶が勝利して京都を占領し、将軍義輝は近江坂本に逃亡して抵抗を続けた。


実質的に京都の支配者になった三好長慶は支持する細川氏綱を傀儡の幕府菅領に祭り上げて幕府乗っ取りに成功した。


それ以降は信長の上洛する1568年まで、三好の天下が続く。


 薩摩にイエズス会の宣教師ザビエルと通訳者ヤジローが上陸して、島津貴久からキリスト教の布教を貰う。




天文18年 尾張。

「旦那様、私孕みましたよ」と玲奈が信長に真っ赤な顔で告げた。

「よしっ……元気な子を産むことを楽しみにしておる」

未来の英雄が玲奈の腹を優しく撫でた。


備前 天神山城。

宇喜多直家は浦上宗景に砥石を奪還した報告を行い、褒美に3000石の加増と、新庄山城の守備を命令された。

「光栄です……殿様にはますます忠誠心を持って尽くします」


衆道(同性愛)の性癖を持つ浦上宗景と閨房の床を共にしながら、直家は全身を撫でまわす宗景の邪な視線を不快に思ったが、そんな素振りは見せずに、演技を貫きとおす。


「そこでお前も嫁をもらって良い歳だな……相手は中山の息女で亀という可愛い女だ、祝言は明日だから楽しみにしてろよな」


直家はありがたく承った。

(俺は受けた恩は終生忘れないけど、加えられた酷い屈辱はもっと忘れないぜ)


未来の梟雄は生き残りをかけて、引き返せない修羅の道に一歩踏み出した。


続く。

この物語はフィクションです。


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