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吸精魔の歩き巫女 玲奈の天下創世記  作者: 羽柴藤吉郎
第3章 今川との戦い
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戦国初の空からのピンポイント攻撃

村木砦陥落


天文23・1554年 正月24日 8時。


知多半島の東側付け根に位置する村木砦は、絶壁海岸の北を除いて、織田信長・水野信元連合軍に包囲された。


「どうだった敵の様子は?」

空中偵察から戻ってきた玲奈に、勢いあまり急かすように信長が尋ねる。


「南側の堀に、面する塀の3つの狭間に槍と鉄砲を構える多数の兵がたむろしていました、東側の大手門と西の搦手門には、警戒態勢の足軽が槍を構えています」


「フム」腕組みして沈思黙考していた信長が刮目する。

そして自軍を一瞥して一言だけ告げた。


「全軍突き進め、逃げる奴は斬る」

殺意あふれる眼差しに怯む兵はひとりもいない。


信長みずから陣頭にたって訓練してきた命知らずの若武者達がエイエイオゥーと一斉にどよめきおのおの武器を手に、がむしゃらに前に前進を始める。


「では旦那様、敵をあしらって参ります」

玲奈と数人の歩き巫女が一礼して、飛び出していく。


砦の上空に静止した玲奈が両手を突き出した態勢をとり、真紅の閃光を放射状に地上に向けて拡散させる。



砦の鉄砲狭間から銃声が轟く前に、多数の兵士が無言で倒れていく様に、敵兵はパニックに陥った。


その隙を突くように、信長軍は魔力で硬い膜が張られた堀を渡り急斜面の上の塀に殺到する。


「鉄砲隊放てぃ」

毛利新助や河尻秀隆が命令するや鉄砲が火を吹いて敵を倒す。


それでも真上からの攻撃に気づく者もいたが、「あれは」と指を上に向けるが、味方に伝える前に鉄砲玉の餌食にされていく。


やがて信長自慢の六メートルの長槍隊が、先に塀を乗り越えた兵の先導で砦内部に突入していった。


水野信元隊はようやく大手門を突破して松平義春勢を忽ち切り刻む。


玲奈を狙撃しようと足軽が火縄銃を弾込めしているところを信長自慢の鉄砲隊が狙い撃つ。


「魔道巫女を討たすな援護射撃せよ」


「大将以外の首は取るな、打ち捨てにしておけ」


首を取ろうとして背後から討たれる危険を排除し、身軽に動くようにという信長流の合理的配慮である。


信長が命令を次々と飛ばして敵に息つく暇すら与えない猛攻撃を加える。


「搦手門の信光どのはどうしてる?」

信長の問いに伝令が即答した。


「魔道巫女と味方に追い立てられた敵をあしらいかねて、苦戦中とのこと」


「であるか」

信長は淡々と応じるのみで前を睨むのみだ。


「もう少しで終わる」信長はすでに勝ちを確信して勢いよく采配をふるう。


はぁ?と言わんばかりの伝令は黙っていた。


搦手門方面では信光勢が押されていたところを水野信元隊と織田信長隊が背後から敵を挟み撃ちにした時点で、勝敗は決した。


本丸とは名ばかりの粗末な館に籠もる松平義春は、自決しようとしたところで、河尻秀隆に見つかり馬乗りにのしかかられて一刀で首を落とされた。


「敵の大将を討ち取ったり」


河尻秀隆の絶叫を聞いた敵の雑兵達は戦意喪失して武器を投げ出す者が続出した。


雑兵達はその場で、奴隷商人に売り払われ、査定されて奴隷市場があちこちに立った。


彼らには百姓や商家の下男や下女として酷使される運命が待っていた。


負傷兵の見舞いをしてまわる信長は労いの言葉をかけて兵を感動させることを忘れない。

信長への忠誠を育むメリットがある。



勝ち戦の祝いの祝宴が開かれて酒に肴がふんだんに振る舞われた。


「玲奈ありがとう、兵達に死者すらいない勝利は初めてだ」

「勝ち戦おめでとうございます」


「俺は決めた、来年の正月は清州城で祝う」


「まぁそれはめでたいですわ」



やると言えば必ずやり遂げる信長に惚れている玲奈が立ち上がる。


「では出雲大社に伝わる縁起舞を披露いたします」


「皆の者ども、魔道巫女の舞を楽しむが良い」

信長の言葉にその場の全員が湧き上がる。



嵐をついての渡海・総力をあげて信長力攻めにより貴重な味方を繋ぎ留めた信長の手腕を安藤守就から聞かされた斎藤道三は、苦虫を噛み潰したような顔をして娘婿の信長を評価する。


「凄まじき男、隣には嫌なる人にて候」


続く。




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