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吸精魔の歩き巫女 玲奈の天下創世記  作者: 羽柴藤吉郎
第3章 今川との戦い
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秘めたる野心家 玲奈の悲願

村木砦救援活動2



穏やかに波打つ海を信長軍一千・信光軍8百が熱田港から大船団で突き進む。


目的地は知多半島西岸の大野で、信長は兵にも休む暇すら許さず東側の緒川城に向けて進軍する。


正月23日に緒川城に入った信長は、三河刈谷から駆けつけた水野信元(家康の叔父)と合流して軍議を開いた。


「敵の大将は三河松平衆の松平義春、兵力は一千ばかり、戦意旺盛な輩の集まりですので、油断なりません、しかも砦の位置は海岸の微高地で北は海、南側は深い堀に守られた攻め難い砦です」


水野信元の説明に信長は、絵図を睨みながらも相槌を打つ。


「敵は今川支配下で、最前線に駆り立てられ、追い詰められた三河松平の兵……油断などできるわけが無いわ」


「こんな砦は強襲をかけて落とす、兵など皆殺しに致す、生かしたところでまた刃向かって来る奴らだからな、この際根切りにして少しでも今川義元の兵力を削り取りたい」


信長が鋭い目つきで水野信元や、叔父の信光を見ると彼らは黙ってうなずく。


「ならば水野どのには東側の大手門、叔父上は西の搦手門を固めていただく、俺はもっとも難関の南側を受け持つ、以上」


唐突に軍議の終わりを告げる信長の言葉に両人が呆気にとられた顔をするが信長は気にせず立ち上がる。


「軍議は終わりましたので皆様には明日の用意をお願いいたします」


側近の河尻秀隆が、信長の代わりに締めくくる。


そのまま奥に籠もる信長が、同行している玲奈に言った。


「さてと、お前の作戦は南側の兵を金縛りにして、空から威嚇射撃で、地上の武器を無力にして搦手門に敵兵が殺到するように援護攻撃を行うだったな」


「はい旦那様」

玲奈が信長に答えると、信長が照れくさそうに脇を向いた。


「今川義元相手に、俺はいずれ一戦をやるかも知れん、その時には兵力はいくらでも欲しい、こんな砦を落とす為に貴重な兵を失いたくは無い……これが今の俺の本心だ、お前たちの魔力を借りることになるが礼を言う、ありがたい」


「お礼にはおよびません、私達は戦巫女として当然のことをやるまでですわ、これからも遠慮なく私達をお使いください。他の人が全て旦那様に背いたとしても私達は裏切りませんから」


玲奈の言葉に反応した信長の目がニンマリ緩む。


「そこまで俺についてくる覚悟ならば、もはや遠慮なく戦巫女を使うことにいたそう、お前たち以外は信用できないからな」


信長が玲奈の目を真正面から、射抜くように告げるのを聞いた玲奈が内心でニンマリとほくそ笑む。


「信用いただきありがとうございます。では私がこれから将来的に巫女達とやることに口出しは無用に願います」


「お前たちのやることにか……ああ何をやろうと構わない、俺が許す範囲内ならな」


信長は何も疑うことなく玲奈に言う。


「まぁ嬉しい、旦那様のお手伝いが出来て光栄ですわ、旦那様の喜びは私達の喜びと一体ですからね」

[今のところはね……]

玲奈が信長の頭を優しく抱え込む。


「お前たちが一番喜ぶことは何だ?」


「織田が巨大化して、この国をすべて平らげ……朝廷を飲み込み、私がいずれ産む男子に、天下の全てが継承された時にわかりますわ」


「織田の天下……か」

眠りに落ちかける信長の声を聞いて、玲奈が嘲りの笑みを漏らす。

「フフッ……我らの天下……ですわ」

玲奈が滔々と眠気を誘う声で、信長に本心を語る。



 織田を魔道の力で巨大化して日本を織田の支配下に置く。

日本を統治する織田政権は表向きの看板に過ぎず、その実態は玲奈の子孫が、治める祭政一致の魔道国家日ノ本……新国家樹立の時をもって魔道維新は完遂されるのだ。


人はただ支配されるのみの存在にすぎなくなる。

生殺与奪は魔道巫女が握られる事になる。



「魔道を操る巫女が、大八州(おおやしま)の1千200万の民を治めます、さざれ石が苔むすまで永遠にね、旦那様は新しき世の礎を築いた英雄として歴史に名を刻み、永遠に語り継がれるでしょう」



玲奈の言葉を子守唄のように聴き入り、自己の意識に刷り込まされる信長が眠りについたのを確認した玲奈が、信長の横になる。


「命尽きるまでお慕いいたします、旦那様」


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