黄色のノート編3
第二十話 幽冥のノート
「はぁ……はぁ……」
呼吸を整える。
ふと、ひとつ気になることがあった。
今目玉のせいで姉ちゃんの目は両方見えている。……髪ってどうなってるの?
俺は姉ちゃんが髪を両目が見えている状態にしているところを見たことがない。いや、記憶に無いだけなのだろうけど。
とにかく、俺は見てみたい衝動に駆られた。そんなことをしている場合ではないというのに、気になったら止まらない。俺は恐る恐る姉ちゃんの方を見た。
……と、どこかに引き戻される感覚がした。
「オラアアアアアッ!!!」
聞き覚えのある声がした。……間違いない、姉ちゃんだ!姉ちゃんの怒鳴り声だ!!しかも赤い方!あーあ、殴られてる人かわいそーだなー。
って、そうじゃない!俺は……俺は、『アナスタシア』と戦ってたんだ!
ガバッと起きる。
目に飛び込んできたのは漫画のような……姉ちゃんがグーでアナスタシアのお腹を殴りつけ、アナスタシアがさっきの夢の中の姉ちゃんのように体をくの字に曲げて吹き飛んでいる光景だった……。縛られているため、動けなかったのだろう。……どうして縛られているのかはわからないが。
たった一つ、夢の中と同じなのはアナスタシアの顔が最初に見た一つ目の化け物と同じだということだ。
「あ……え……?」
情報がゴチャゴチャになっている。普通じゃありえないからな。
「悪夢を操る神……アナスタシア。あなたはやってはいけないことをした」
『ナ……ナニヨ……』
姉ちゃんは倒れたアナスタシアの前に立ち、見下ろした。
「大切な弟、ラビスに手を出したこと」
『ソンナコト……シラナイワヨ……』
「愚かですね。もうちゃんとした話し方もわからないなんて。医者として、精神科に行くことをオススメします。……ですが。占いではあなたはもうすぐ死ぬ……元からあってはならないものは、自然に還る。消えるのです。悲しい話ですね」
『……そう言うアンタも。精神科に行ってみることね…………』
そう言って、アナスタシアは黒い砂となって消え去った。最後に残された顔の付いたリボン。それを姉ちゃんは踏みにじり、何かを唱えるとそれは怨嗟の叫びを上げて黒く燃え上がった。
「……これで終わりですね」
「姉ちゃん!」
俺は転びそうになりながらも姉ちゃんに駆け寄った。
今度こそ本物の姉ちゃん。さっきまでの気味悪さは、もう、ない。
「姉ちゃん、姉ちゃんっ……ううっ、ぐすっ……」
「はい、お姉ちゃんですよ。ラビス、あなたが無事で良かった」
姉ちゃんはニコッと笑い、俺の頭を撫でた。
いつの間にか髪は緑の目のほうになっていた。この方がいい。優しい姉ちゃんだもん。
「どうして倒し方がわかったの?」
「ヘッジくんに聞いたの。ノート対策として、今までわかった対処法をまとめたものを。『昔カリビアを助けてくれた恩人にもう一度頼むのは心苦しいが、ノート戦に参加してほしい』と言っていました。……それが今一番わかっている相手がここにいてよかった」
「……アナスタシア対策って?」
「それは……。『アナスタシアは運動音痴なので、一発殴ってやる』こと」
「…………はぁ!?」
殴るだけでいいとか……。
「で、でもさ、眠らなかったの?」
「ええ。これを受け取ったから」
姉ちゃんは腰の茶色いポーチからリボンを取り出した。いつも予備の薬が入っているため、少し薬くさい。
「それって……」
「カリビアくんのマジックアイテムよ。彼が常に身につけていたリボンは不眠の能力を持っていたの。いつも側にいたヘッジくんだからこそすぐに考えられた作戦かもしれないわね」
「……そ、そうなんだ」
俺の妖精肉壁作戦は意味無かったのか。
「ラビス……もう一人で飛び出したりしないで。何かあったらまず私に言うこと。わかった?」
「……わかった……」
俺は姉ちゃんの胸に顔をうずめた。
俺は、ずっとあの言葉が頭に引っかっている。
『アンタも精神科に行ってみることね』
姉ちゃんの二重人格は治せるものなのか?でも治したら姉ちゃん自身を守る力がなくなってしまう。俺も情けないが、赤い方になった姉ちゃんには力では敵わない。……今はこのままでいいか。そう考えた俺は、もう少し姉ちゃんの優しさに身を委ねることにした。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




