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開拓のアリカ  作者: 菊日和静
第二章 開拓士養成学校編
54/56

第54話 共闘する二人

「アリカ!」

「わかってるっ!」


エバの掛け声と同時に仕掛ける。

泥塗れの狼(ルートムウルフ)】をエリックたちから引き離し、ボッシュたちが助けてための算段だ。


「よそ見すんな、ゴラァ!」


自慢の大剣を思い切り振りかぶり大木を折るかのように斬る。

森の主である王角鹿でさえも一撃で屠ったアリカの斬撃。当たればハイ領域に生息する精霊獣でさえも深手を負うに違いないと思われるほどの威力だ。

そう、当たりさえすればだ。


「ちっ──……!」


空を斬る感触。

練精法による身体強化を使っているアリカの斬撃の速度に対し、当たり前のように躱された。

これが──精霊獣。

完全な野生という環境に身を置きながら、人と同じように精霊術を使用する獣。


「──これでも喰らいなさい!」


アリカが斬りつけた隙に十以上の霊球を展開していたエバ。

それらを緩急つけて【泥塗れの狼】に叩き込んだ。

最初の何発かは躱されたが少なくとも五発以上は当たった。

だが、


「……やはり、威力不足は否めませんわね」


分厚い毛皮に覆われた狼は、何ともなさそうに佇んでいる。

苛立たしそうな唸り声を出していることから、こちらへの関心を高めたのは成功したとも言える。


「アリカ! 当初の想定通り(・・・・・・・)に行きますわよ!!」

「了解っ!」


そうだ。エバの霊球が決め手にならないことは想定通りだ。

訓練でアリカは何度も霊球を受けたことはある。当たり所が悪ければ悶絶する程度の力はあるが、それが野生の動物、ましてや精霊獣を相手にして嫌がらせになっても決定的なダメージにならないことは織り込み済みだ。

ならばどうするか?

決まっている。

攻撃はアリカで支援はエバ。

その役割で戦うだけだ。


「オラァァァァ────!!」


気合と共にアリカは【泥塗れの狼】に肉薄する。

下手に距離を空けてしまえば狼の俊敏性に翻弄されるし、何かの隙に逃げられエリックたちの所に向かわれる方がまずい。

だからこその近距離戦を選択したわけだが──


「やばっ!?」


【泥塗れの狼】は、巨体を一回転させ尻尾に精霊術を纏わせた一撃を放った。

もはや斬撃と言ってもいいほどのそれにアリカは全力で回避行動を取った。

ごろごろと無様にも地面を転がりぎりぎりのところで避けられた。

その隙を【泥塗れの狼】を見逃すわけがなくアリカに襲い掛かるところを、


「やらせません!」


エバが霊球を【泥塗れの狼】の顔面に集中させて当てる。視界を奪う攻撃に集中力を奪い、アリカはその間に態勢を立て直した。


「ごめん。助かった!」

「安心なさい。あなたの失敗は計算の内ですわ」


普段なら「ふざけんなこの野郎!」の悪態の一つも吐いているところだが、そんな隙すら見せられない。たった数十秒程度のやり取りで精霊獣の危険性がよくわかった。

森に生息する狼よりも何倍も大きい【泥塗れの狼】は、身体強化しているのか鈍重さを欠片も感じさせず、俊敏な大型獣という悪夢のような組み合わせで襲い掛かってくる。

それに加え霊操法も使えるのか、先ほどは自分の尻尾に水の精霊術を纏わせた攻撃まで放ってきた。

──間違いなく今まで出会ってきたどの獣よりも強い。

だけど、


「勝てないわけじゃない!」

「当り前です。負ける気なんて毛頭ありませんわ」


普段はいがみ合って衝突しがちな二人の意見が一致した。

腹立たしいことを言うエバであるが、こんな時は頼もしさすら感じる。

そのせいかわからないが、アリカは静かに笑いが零れた。


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