第52話 助ける基準
長らくお休みしていてすみませんでした!
2月から色々と立て込んでおりましてまとまった執筆時間とか取れませんでした。
ぼちぼち生活が落ち着いてきたので投稿再開したいと思います!
教官たちから最初から言われていたように開拓士は死亡率が非常に高い。
それだけに安全対策や救命救助についても一通り学ぶ必要があり、精霊術以外にも学ぶことが多々あった。
中でも印象的だったのは──助ける命の選別についての講習だった。
「いいかお前ら。開拓士やってりゃ命に関わる状況なんていくらでもある」
いつもおちゃらているように見える教官のアドレットも、この話の時だけは真面目に話していたのを覚えている。
「自分の命を失うだけならまだいい。だが、さらにまずいのは二次災害だ。助けようとした奴が死んだり、下手したらチーム全員巻き込んで死ぬことだってある」
そうか。チームで動いているとそういうこともあるのか。
アリカは師匠であるクオンとの二人旅が長く、チームというよりは個人で動いていたのである種の盲点であった。
「例えばだ。チームメンバーの一人が負傷して動けない。この場合アリカはどうする?」
「もちろん助ける!」
「あぁ、そうだ。その判断は間違いじゃない。じゃあ、これならどうだ。多数の獰猛な獣に囲まれ足場も悪い。全員が疲労困憊の中で負傷した奴を見捨てれば一人でも多く助かる確率が上がる。この場合でも助けるか?」
「えっ……?」
アリカだけではなくボッシュやセネムも言葉に詰まった。
なんだその状況は。意地悪問題にもほどがある。
そもそも前提がおかしいではないか。
そうならない状況を作る方が大事だと思う。
反論しようとしたら。
「ちなみに前提条件の変更は不可だぞー。だってこれ実際にあったケースだから」
アドレットは軽く言ったのに空気は重くなった。
「私は──それでも助けると思う。仲間を見捨てるなんてしたくない」
「そうか。じゃあ、ボッシュはどうだ?」
「俺もそうです……って言えたらいいんですがね。自分が怪我した側で仲間が死ぬなら見捨ててほしい気持ちもあります」
そうか。そっち側の気持ちを考慮していなかった。
ボッシュに言われて改めて気づかされた。
次にセネムが尋ねられて。
「わ、私はきっと助けるんだと思います。……誰かが死ぬのは嫌です」
「なるほどな」
優しいセネムらしい意見だ。
同じ答えになって少しほっとした。
「じゃあ、最後にエバはどうだ?」
「その状況であれば隊を預かる者としては──負傷者に足止めの囮を命じて少しでも他隊員が助かる確率を上げます。無論、怪我の度合いや救助側の疲労度にもよりますが、おそらくは最悪を想定しての状況ですわよね?」
「あぁ、その通りだ。体調最悪、環境最悪の悪いこと尽くしだな」
「であれば結論は変わりませんわ」
凄まじいほどの決断力にアリカは引いた。
言っていることは自体は正しいが、なんというかこう人の情。そういった温かみが感じられないのだ。エバが隊長で大丈夫かと思うが、勝負して決めたことだけに今更文句は言いづらい。
「アドレット教官。ちなみにそのケースは結局どうなったんですか?」
「お、そうだったな。後学のために覚えておけよ。そのケースでは助ける判断を下して──生きて帰ってこられたのは一人だけだったよ」
改めて開拓士がどれだけ危険なのかを知らされた思いだ。
その後も開拓士が実際に遭遇したケースを元に、机上の判断演習を行った。
これについては正解なんてものはなく、チームメンバー全員が意見をぶつけ合い、対策案を練ることに意味があるのだという。
前から分かっていたことだがつくづくエバとは意見が合わず対立することも多かったが、それでもエバなりの判断基準の輪郭はつかめたと思う。
エバが助けると決めたとき──それは何かしらの勝算がある時だ。
「き、君たちは……!?」
「エリック。助けに来ましてよ」
助けることに基準はある。
でも、同じ開拓士を助けることに理由なんかいらない。




