第51話 意思を一つに
新年初の更新。更新が遅れて申し訳ありませんでした!
今年も執筆がんばります!!
こういう時の感覚は何度も覚えがある。
肌がピリピリして針を突き刺すような空気感。何とも言えない嫌な匂いが漂い、そこに近づいてはいけないと本能が警告する。
旅の間で何度も感じた。命の危機を感じる争いの場に投じる雰囲気。
間違いない。もうすぐだ。
「エバ」
その一言でエバがコクリと頷き後ろにいるボッシュとセネムに合図を送る。
走っていた速度を落として気配をできる限り消した。
身軽さと勘が働くアリカは斥候役を兼ねて先頭に位置取っている。
山で獲物を追う経験が人一倍多いアリカは慎重に歩を進め、エバたちはそれを習い後ろに続く。現場がどうなっているかわからない以上、まずは状況を把握しなければならない。
こんな時ではあるが、開拓士養成学校で訓練したことが活きることを実感する。
「うああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
叫び声が聞こえた。
アリカ達は声がした先へと近づき木陰から様子を窺う。
視認した先にいたのはエリックだ。
彼は見慣れない狼に向かって精霊術の霊球を打ち込んで牽制しているがダメージを与えるまでには至っていない。エリックは遠くから見ているだけでも怪我を負っていることがわかり動きが鈍い。
いや、それよりも。
「負傷者を庇ってるっ……!」
エリックの背後、彼の仲間が地面に倒れている。
さすがに位置が悪く全員の状態まではわからない。生きているのか死んでいるのか。
すぐにでも助けに入らなければ危ない。
反射的に動こうとした瞬間、アリカの肩がグッと強い力を込めて握られ、動き出すのを止められた。
「アリカ。お待ちなさい」
バッと振り返りエバの顔を見た。
いつもの余裕綽々とした表情なんかではない。
額に汗を浮かべ緊迫した状況を理解した上での大真面目な顔だ。
「あれは【泥塗れの狼】ですわ。ハイ領域に生息する精霊獣。私たちが相手をするには危険すぎます」
「────っつ!?」
ようやくアリカも危険性を認識した。
座学でしか習っていないが精霊中の危険性については聞いている。
熟練の開拓士でも命の危険性がある獣であり、無理に相対するのは絶対にやめるべきであると。
だからと言って、このまま彼らを見捨てていいのか?
確かに彼らとは最初の出会いから最悪だったし、つい先日なんか厭味ったらしく喧嘩を売られまでしたのだ。
それでも──同じ学び舎で切磋琢磨する開拓士の仲間なのだ。
今までは最悪でも、これからは期待できそうな連中だったではないか。
見捨てていいわけがない。
感情ではそう訴えているが、理性ではわかっているのだ。
口酸っぱく教えられてきたから。
生きて帰ってこそ開拓士であると。
ここは引いて教官たちに状況を伝え、彼らを見捨てることが最善である。
わかっているのに、あきらめきれない。
「時間がありません。議論もしません」
この班のリーダーであるエバは告げる。
責任者として。どうするか。意思を決定する役割を持っている。
「あなた方──助ける覚悟はありまして?」
本当にこちらの心情を見透かしたかのように言ってくれる。
ハッと周りを見ると悩んでいたのは自分だけではなかった。
同じようにボッシュやセネムだって悩んでいた。
だから、きっと私たちの心は一つだ。
全員、同じタイミングで頷いた。




