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開拓のアリカ  作者: 菊日和静
第二章 開拓士養成学校編
44/56

第44話 エリックとの和解と勝負

 サランクィラ地域──アリカ達が実地訓練をするために向かった場所だ。

 開拓領域ではあるが近年開拓された地域であり、比較的ハイ領域に近しい場所だ。

 その危険度としては、人の住んでいない森や洞窟に精霊術を修めていない一般人が

 足を踏み込めば死ぬか行方不明になる程度に危険だ。

 そのため、精霊術を学んだ開拓士が学んだことのイロハを試すにはもってこいであり、修行場としてはもちろん継続的な地域調査も行えて、一挙両得な訓練としてよく使われる場所となっている。


「皆さん。準備はよろしくて?」

「あったりまえでしょ!」

「アリカ。威勢がいいのは認めますが、私は荷物の相互チェックをしろと言ってますの。ボッシュはセネムと。アリカは私としますわよ」

「なら最初からそう言えばいいでしょ!?」


 威勢よく返事したのに注意を受けてしまった。

 ただ、あまりにもっともな指摘だったのでしぶしぶと荷物チェックをする。

 食料・応急手当用品・採取用具・地形等の情報を書き込んだ地図などなど。

 事前に準備してきたものがあることが相互に確認できた。

 今回のアリカ達の訓練は実地といえども、第一線級の開拓士と内容自体は変わらない。差があるとしたら事前情報ということになる。

 先人たちが残してくれた偉大なる記録。

 まさしく値千金の宝だ。


「──やぁ君たち。こうして顔を合わせるのは久しぶりだね」


 一瞬、誰だっけと忘れかけていたが思い出した。

 開拓使養成学校に入ろうとしたときにアリカ達にちょっかいをかけた奴だ。

 名前は確か、


「確かに久しぶりですわね。エリック・ガーランド」


 そうだ。そういう名前だったはずだ。

 あの時はエバの印象が強すぎたせいでその前に彼を忘れていた。


「はは、つれないな。訓練を同じくするのだからエリックと呼んでほしいな?」

「それもそうですわね。私もエバでいいですわ。エリック」

「ありがとう。エバ」


 何か心境の変化でもあったのだろうか?

 入学当初はあれだけ喧嘩というか言い争ったはずなのに、二人とも友好的なやり取りをしている。


「遅れてしまったが入学時は大人げない振る舞いをしてしまった。申し訳ないと思っているので許してくれないかな?」

「その謝罪を受け入れましょう。今はセネムは私の大切なチームメイトですもの。私と同様に仲良くしてもらえれば結構ですわ」


 ……何だろう。二人とも笑顔なのにうすら寒いものを感じる。

 ボッシュに小声で教えてもらうと、おそらく二人とも上流階級の出身なので家同士の禍根を残さないようにしているとのことだ。あとセネムについて強調したのは自分の庇護下にいるのだから手を出したらただじゃおかないと釘を刺しているそうだ。


「それで今回の訓練の自信のほどはどうかな?」

「今までの培った成果を出せるよう頑張りたいと思いますわ」

「はは、殊勝なことだね。──そうだ、ここは一つより訓練に熱を入れるために僕らと勝負をしないか?」

「……勝負ですの?」


 話がおかしな方向に行き始めた。

 エバも警戒感を少し高めた風に見える。


「あぁ、そうだ。この実地訓練は狩猟や採集を行うだろう? それでお互いのチームがより多くの獣を狩ったり、珍しい植物を見つけたら勝ちというゲームをしないか?」

「面白そうですわね。それで、勝ったら何をもらえますの?」

「はは、そんなに警戒しなくてもいいよ。大したことじゃない。僕らが勝てば君たちを僕が主催する宴に招待したい。君らが勝てば僕らにお願いができる。こんなところでどうだい?」

「悪くありませんわね。いいでしょう。受けて立ちますわ」

「おぉ、ありがとうエバ!」


 あっさりと勝負を受けたエバ。

 それを聞いていたアリカたちは止める間もなく驚いていた。

 そして、エリックがご機嫌に去って行った。


「ちょっとエバ。あんた何考えてんのよ?」

「あら。どうかしまして?」

「あいつらの宴なんてどうせ下心丸出しのやつでしょ。なんでこんな勝負受けたのよ?」


 最後のエリックの嫌らしい顔を見ればわかる。

去る間際にこちらを値踏みするようないけ好かない目に背筋がぞわっとした。


「大した理由はありませんわ。これから先も小うるさい輩に絡まれるのも面倒なので、今のうちに払っておこうと思っただけのことですわ」

「お、おう」


 まるで虫を払うかのように言うエバ。

 負けるつもりなんてさらさらないのがわかる。

 むしろ、最初からあっちなんて相手にされていないかのようだ。


「でも、あいつ自信ありそうな感じだったけど何か企んでるんじゃない?」

「可能性としてはゼロではありませんが、多分何も企んでないと思いますわ」

「根拠は?」

「単純なことですわ。こっちは『色なし』の私を筆頭としたチーム、あっちは上流階級で固めたチーム。総合力で負けるわけがないと思ったのでしょうね」

「はぁ?」


 何だそれはと思った。

 どう考えたらそんな楽観的な考えに落ち着くのだろうか。

 それはつまり、


「──私たちを舐め切っているのですわ」


 ということになる。

 ようやくエバが小うるさいと言った意味がわかった。


「むかつきますでしょう?」

「あったりまえだ!」


 こちらの苦労や頑張りも知らずに、小うるさくたかる虫。

 むかつくのは仕方がないし払ってやりたくもなる。

 絶対に負かしてやる。


「それで、あんたのことだからどうせ何か勝てる作戦あるんでしょう?」

「もちろんありますわ」


 いつもは勝負相手として競い合っているが、味方となれば頼もしい。

 さてどんな作戦が飛び出すのかと期待したら、


「普通に実力を出し切れば順当に勝てますわ」


 当たり前のことを言われた。

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