第42話 訓練の仕上げ
あけましておめでとうございます!今年も頑張って投稿します!!
実地訓練の日取りが決まった。
丁度、一週間後の出発となり訓練にも熱が入っていた。訓練地域の資料に目を通すことに関しても、別の意味で熱が出そうであったが…。
そんな中のことだ。
「はっはー! お前らもちっとはやれるようになってきたじゃねーか!」
「アドレット教官!」
やたらと高いテンションのアドレットがやってきた。
まぁ、彼のテンションが高いのはいつものことであり、付き合いもそれなりになってきたので慣れてきた感はある。
「へっへー、そうでしょ! 私たちってば色性付与もできるようになったんだから!」
「おう、大したもんだ。ま、極めるにはまだまだ修行が必要だがな」
「むぅ。それはわかってるし!」
アドレットは褒めながらも指摘をする。
この辺りは師匠であるクオンとは違う点だと思う。クオンならば「調子に乗るな」と一蹴して終わる。そして、手合わせでぼこぼこにされるまでがワンセットだ。
それでも、曲がりなりにも修行してきた結果、アリカは適性のある炎を出せるようになったし、ボッシュは土を操れるようになり、セネムに至っては命と風の二属性まで操れるようになっていた。
ただ一人、エバという例外を除いて──。
「ひゅ~。訓練法を教えた俺が言うのもなんだが極まってんな~!」
「ふん!」
色の適性がない無色のエバは、霊操法の特訓では別の訓練を行っていた。
色性付与ができない代わりに制御や出力の訓練をすることだ。
その結果があれだ。
霊操法によって天歩で足場を作りながら常時走り回り、霊球と呼ばれる霊力で作った球を自分の周りに常時十個展開しつつ的に当てるというものだ。
それを涼しい顔をしながらこなしている。
アリカは色性付与で大変苦労をして習得したはずなのに、エバはそれ以上のことをしれっと学んだように見えて非常に腹立たしい気分になる。
「あ、あれぐらい私だってすぐにできるようになるし!」
「いや、アリカ。昨日試して頭から転んだのを忘れたのかよ……」
「ボッシュ! 昨日の私はできなくても今日の私はできるようになんのよ!」
「お前のそういうところは素直にすげーと思うよ」
威勢の良いことを言ったものの、実際にあれをやってみろと言われたら十中八九あんな曲芸じみた真似ができるとは思えない。そもそも天歩すらようやく歩くスピードで展開できるようになったぐらいなのだ。
……きっと明日の自分は少しできるようになっていると信じたい。
「よーし。お前ら集合しろ~!」
言われて訓練を一時中断して集まる。
「お前らの実地訓練が来週からになるわけだが今一度の確認だ。お前らが今回こなすのは採集・狩猟・調査の3つになる」
アドレットが言った通り、今回の訓練内容はその3つだ。
付け加えるなら、採集や狩猟は今回行く地域に合わせて多数の獲物の中から自分たちの力量に合わせて獲得しなければならない。
それ故に、覚えなければならないことが沢山あって苦労しているのであった。
「精霊術を学んだ今のお前らなら決して難しい訓練ではないだろう」
内心、そりゃそうだろうと思った。
これだけ毎日訓練して知識を蓄えているのだ。
失敗する方が難しい。
それにアリカだけではなく、仲間がいることも心強い要因になっている。
だが、そんなメンバーの考えを見透かしたかのようにアドレットは言う。
「だけど、これだけは言わせてもらおう。お前らが向かう場所も今では開拓領域となっているが──昔は未開拓領域だったってことをな」
アリカ・ボッシュ・セネムの3名は今更気づいたかのように驚いた。
唯一、エバだけは表情を変えることなく聞き続けている。
「どんな物事にも絶対はない。油断をしたらどこだって命を落とす危険はある」
まさしくどこか慢心していたアリカは太い釘を刺されて「うっ」と呻いた。
そうだ。アリカ達が読み込んでいた資料だって、かつての開拓士が命を賭して集めてきたものなのだ。
そのことを忘れていた。
「ま、色々と言ったが教官からのありがたーい訓告ってやつだ。ちっとは気が引き締まったろ?」
『はい!』
軽くジョークのように言ってくれるが、確かに気は引き締まった。
訓練をして実力の向上は日々実感していただけに、開拓領域なんかと過少に見ていたきらいはある。
「よーし気合も入ったところで、お前らの訓練の総仕上げといくか! 俺とお前たちで模擬戦をするぞ!」
「それはいいっすけど、チーム分けはどうするんですか?」
「おいおい、何言ってんだボッシュ。今言っただろ。俺とお前たちって。まとめてかかってこい!」
アドレットの大胆な発言にアリカ達は驚き、さすがのエバもこの発言に関してはむっとした表情を見せた。
「教官。それは流石に私たちを舐めすぎではありませんこと?」
「いやいや、極々真っ当な評価だよ。お前らひよっこが束になっても、まだまだ俺には敵わないことを教えてやるよ」
「言いましたわね?」
「はっはー! いい気迫だな!」
アドレットの言葉にむかついているのはエバだけではない。
アリカはボッシュはもちろんのこと、珍しいことに優しいセネムだってやる気を見せている。
「現役の開拓士がどれだけのもんか──その身で体験してみな」
その言葉を皮切りに、アドレット教官対エバチームの戦いが始まった。
そして5分後──。
「ま、俺を相手に善戦した方だが──それが今のお前らの実力だ」
この場に立っているはアドレット一人だけ。
アリカ、エバ、ボッシュ、セネムの四人が倒れ伏していた。
「ぜーはー、うそ……でしょ?」
信じられないとばかりにアリカはつぶやいた。
いくらなんでも四人がかりで負けるとは思っていなかったからだ。
「お前らそのままでいいからよく聞けよ~」
ボッシュとセネムは息も絶え絶えで、この中でも実力者のエバでさえもアドレットにしてやられてまだ立ち上がれずにいた。
「俺は開拓士の中でもそれなりの実力者だと自負しちゃいるが、俺以上にできる開拓士はごろごろいる」
正直、アドレットは陽気な兄ちゃんというイメージが強かった。
教官としては教え方が上手いが、どの程度の実力者かわからなかった。
そんなアドレット以上の実力者がごろごろいると聞かされて、アリカとしてはその遠さに眩暈がしそうになる。
「そんな開拓士たちが生きて帰られるかわからんのが未開拓領域だ」
何度も聞かされてきた言葉がようやく実感できた。
どうしてこんなにも訓練をするのか。その答えがこれだ。
「はぁー遠いな~……」
多少強くなったつもりであっても、まだまだ先は遠く険しい。
なのに、アリカは嬉しそうに笑っていた。




