第41話 次なる目標へ向けて
エバに追いつき勝つことを目標にする!
アリカが気持ちを新たに努力しようと決意したのも束の間のこと。
何にせよ例外というものはある。
例外というか分野的な意味で。
あくまでも勝つと決めたのは精霊術や体を使った分野であって座学ではない。
座学に関しては完敗どころか勝負の舞台にすら上がれていないのであった。
「アリカ。お前はもうちょい座学も頑張ったほうがいいぞ?」
「わかってるってば、ボッシュ! 私も頑張ってるんだよ!?」
「そ、そうだよボッシュ君。アリカも最初のころに比べたらすごく成績上がったよ」
「セネム……!」
厳しいボッシュと優しいセネムの言葉が両方しみる。
「赤点から平均点ぎりぎりになっただけなんだがな……」
そこは目をつむってほしい。
これでも座学に関しては村にいた頃よりがんばっているのだ。
平均点取れるだけでもすごいと思ってほしい。
「教科にもよるが植物学と地理学は大丈夫そうだな」
「うん。植物は故郷の村に生えていたのがあるから覚えているのも多いんだ。地理に関しては師匠との旅で見覚えのある地名があるからわかる」
「なるほどな」
アリカは村にいた頃だと近隣の村々しか知らなかった。
けれど、クオンと旅をするようになり色々な場所を歩き回った。
主にクオンが行き先を決め、その先々でアリカの修行を行っていた。
それ故に世界のすべてとは言わないが端から端は見たと錯覚していた。
「──まさか開拓領域がこんなに狭かったなんてね」
現在の人類が住まう開拓領域の地図を見たとき、アリカは愕然したのを覚えている。
あれだけの距離を歩いたにも関わらず、地図上では大した距離には見えなかったからだ。もちろん、倍率の問題であるのは頭で理解していても、心の面では納得しづらかった。
「気持はわかるぞ。逆に俺は改めて未開拓領域の大きさには驚いた」
「未開拓領域か……。開拓士の調査が完了していないのが『ハイ領域』でいまだ誰も踏み入ってない領域が『イクス領域』で合ってるよね?」
「うん、合ってるよ」
「お、それぐらいはわかってるか」
「む~それぐらいちゃんと覚えてるってば!」
命に関わることはちゃんと覚えるようにはしているのだ。
そう、未開拓領域と一口に言っても種類はあるのだ。
大まかには先ほどのハイ領域とイクス領域。
開拓士の調査が及んでいる地域と足の踏み入ったことのない地域だ。
人が住むのに適当な場所であるか、危険はどの程度あるか、水場は近くにあるのか、農業をするのに適した土壌であるのかなどなど。様々な観点から開拓士が調査をし、その上でその土地を切り開いて道を作っていくのだ。
また、人が住むのに適さない土地であっても、動物、植物、鉱石といった資材が眠っている可能性もあるので多様な知識が求められる。
だから、
「座学が大事なんだ」
「はい……精進します」
「アリカ。私も頑張って手伝うからね!」
そして、三人は再び勉強会に戻った。
主にボッシュは監督役として、セネムはボッシュの補佐として成績が悪いアリカを引き上げるチーム体制をとっていた。チームリーダーであるエバがいないのは、リーダーが参加する会議に出席しているためである。
「にしてもさ。こうして勉強ばかりだと気が滅入らない?」
「おいおい、飽きるにしてはまだ早すぎんぞ」
「いや、そういうことじゃなくてさ。私たちも開拓使養成学校に入って4か月ぐらいにはなろうとしているじゃん?」
「そうだな」
「訓練の成果を実地で試したりしないのかなーと思ってさ」
「あー、そういうことか」
瞬く間に日々が過ぎていったが、休みの日はたまにあっても基本訓練に勉強漬けの毎日だ。クオンの下で修業していた時は、ある意味すべてが実地訓練みたいなところがあったので、成果を試す機会はいくらでもあった。
だが開拓使養成学校に入ってからは、まだそういうことがない。
「どうなんだろうな。二年目からはやるのは聞いたけど、一年目ってやんのか? セネムは何か聞いているか?」
「えと、私も詳しくは……。でも、ちゃんと力を蓄えないと危険だし、まだ早いんじゃないかな」
「そっかー」
やはり命の危険についてあれだけ言っていたらまだ早いか。
そんな話をしていたら、
「──その実地訓練の日取りが決まりましてよ」
「エバ!」
我らがリーダーのエバがそんなことを言い出した。
「エバ。今の話って本当か!?」
「ボッシュ。私がそんなつまらない冗談を言うように見えまして?」
「いや全く見えねーけどよ」
そもそもエバが冗談なんて言うことがあっただろうか。
いまだ見たことがない。
「それで実地訓練ってハイ領域にでも行くの?」
「いえ、開拓領域における指定された植物の採取、動物の狩猟がメインですわね」
開拓領域か。さすがにまだ未開拓領域は早かったようだ。
「いよっし! やる気ができた~!!」
「やる気があって結構ですわね──では、実地訓練地域についてこの資料をすべて目を通してくださいましね」
「え……あ、はい」
どさりとエバが置いた資料の数々に、炎のように沸いたやる気がしぼんだ




