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開拓のアリカ  作者: 菊日和静
第二章 開拓士養成学校編
40/56

第40話 天歩よく歩こう

一ヶ月ぶりの更新となり申し訳ないです。

お仕事が立て続けに忙しくて更新できませんでした!

 霊操法を学ぶようになってわかったことがある。

 それは──死ぬほど操作が難しいということだ。

 色性付与に関しては応用編ということで、学ぶのはまだまだ先になる。

 まずは霊操法の基本からになるのだが、これが、本当に、とんでもなく難しいのであった。

 主にアリカにとって。


「アリカ」

「どわあぁぁぁぁ────────!!?」

「……ねぇ、アリカ?」

「ぬおりゃあぁぁぁぁ────────!!?」

「いい加減になさいまし!!」


 奇声を上げ続けていたアリカにエバが見兼ねてキレた。

 状況を簡潔に言うならば、アリカはピョンピョンと跳ねていた。虫のように跳ね続けていた。

 もちろん自分の意思ではない。いや、ある意味ではアリカのせいではあるのだが。


「何度も言っていますでしょう。あなたは足場に力を込めすぎですのっ!」

「い、いやさ。頭ではわかってはいるんだけど……『天歩(てんぽ)』って言ったっけ? この霊力でできた足場に丁度いい力を込める加減がわかんなくてさ……」


 アリカが練習しているのは、エバが模擬試合で使っていた『天歩』という技だ。

 霊力の足場を作り、その足場を操作するといったもの。

 この歩法を使うことでエバは地面を滑るように動いていたといたのだ。

 本来の用途としては、開拓時に足場の悪い沼地や崖といったところで一時的に足場を作り、移動するための補法である。


「最初は小さな力から始めなさいと言ったでしょうに」

「うーん。そのつもりで小さな力を込めているつもりなんだけどな〜」


 アリカ自身の認識としては、ほんのちょっぴり力を使っている感じだ。

 だけど、結果は先ほどの通り。

 一人トランポリンの出来上がりである。


「はっはー! そっちは苦労しているみたいだな!」

「アドレット教官……。わかっているのであれば、何か助言いただけませんの?」

「もちろんそのつもりだぜ。ちったぁ教える苦労が身に染みたか?」

「十分に」


 霊操法の訓練にあたり、二人一組に分かれた。

 ボッシュとせネムは二人とも使えないので同じ組みになり、最初はアドレットに教わっていた。

 必然、残ったアリカは経験者のエバと組みになり教わることになる。

 思うところがないわけではないが、精霊術の使い手としてはエバの方が先に行っているため、渋々ながら教わった。


「教官。それで私ってば何で『天歩』うまくできないんですか?」

「そうだな。霊操法の制御が下手な奴にはある程度共通する点があってな。『練精法』で精霊を取り込む力が大きいやつは大抵下手な傾向にある。例えば100の力を持った奴が1%の力を使う場合は1の力で済むが、1000の力を持つ奴が使う場合は同じ1%でも10の力になるんだ」


 なるほどと思った。

 確かにアリカはこの数年ずっと『練精法』をやっていただけに、力の過多でいえば多い方だろう。


「あと単純に制御が下手ってこともある。今までは何も考えずに歩いていた地面の反発力を自分でやるわけだから、その感覚で力を入れすぎてしまうパターンもある」


 ……それも覚えがある。

 何かふわふわとした足場が脆そうで心配になって、力を込めていたような気もする。


「まずは最小と最大の2回のパターンをやってみて、力の込め方の感覚を掴んだらいいと思うぞ」

「わかりました!」

「あとは、徐々にそこから力をざっくりでもいいから区切ってやってみろ」

「はい!」


 なるほど。そうやって力の込め方を覚えていくのか。

 確かに何となく自分がこの程度と当てずっぽうでやるより効率が良さそうだ。


「んで次はエバだな。『天歩』ができるのは知っているが、どの程度できるか見せてみろ」

「わかりました」


 エバが『天歩』の実演をするということで、気になったので見学をする。

 だが、足場を作るだけの話でどの程度とかあるのだろうか?

 その答えがすぐに見せられた。


「行きますわ」


 地上から30センチほど離れた霊力の足場。

 エバはそれを地上と何も変わることなく──ゆっくりと歩いていた。

 一切のブレもなく静かに。一歩ずつ。

 アリカの背筋に鳥肌が立った。

 自分がバタバタと醜く泳いでいたのに対し、エバのそれは美しいとまで感じた。


「お見事。俺からは何も言うことねーわ」

「この程度ならばできて当然ですわ」


 腹が立つような発言であるが、アリカは何も言えなかった。

 多少なり『天歩』を学んでわかったことがある。

 歩くというのは片方ずつの足が地面について離れ、地面の反発力は常に一定ではないのだ。

 であるのに、エバは涼しい顔して歩いていた。

 今ではこれがどんなに難しいことなのかアリカにだってわかる。

 そして──エバがどれだけの苦労をして身に付けたのかもだ。

 それが想像できるからこそ焦ってしまう。

 本当にエバより強くなることができるのかと。

 見込みが全然足りなかった。

 色性付与ができなくて精霊術の使い手として劣っていると言ったがとんでもない。

 エバの見えない努力がどれだけのものかを垣間見てしまった。

 だからこそ、アリカはより強く思う。


「──絶対に追いついてやる」


 今はまだエバに勝てない。

 だけど、負けたままでいてやれないと。

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