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開拓のアリカ  作者: 菊日和静
第二章 開拓士養成学校編
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第37話 新たな力を学ぶ時

 開拓士養成学校(ピスコル)に入学して良かった点は何か?

 そう問われたらボッシュは間髪入れずこう答える。


 ──飯がうまい、と。


 それもそのはずピスコルは開拓士の最前線の拠点ある。

 現役開拓士が未開拓領域から持ち帰った素材の研究機関も兼ねており、食材についての研究もしている。

 肉・魚・野菜は豊富に揃っており、ここの研究結果から育てやすいものがあれば農村に送らたりするのだ。

 そのため、ピスコルの食堂は珍しい食材にあふれており、様々な料理が食堂で作られている。

 人によっては割と好き嫌いがわかれる物もあるが、農村育ちであるボッシュは好き嫌いはないため基本的に美味しくいただけている。

 例えば、『苔豚』と名づけられた豚は未開拓領域で発見された豚だ。

 体に苔を生していて保護色の役割も兼ねているが、小動物が油断して近づいたら捕食するという油断ならない面も備えている。だが、見た目に反して体に蓄えられた脂は甘く、肉質は柔らかく食用には適しているのだ。

 野菜では『宝石草』と呼ばれるものが発見され、こちらは随分前に発見されて今では家庭にも広まっている草だ。宝石のように色とりどりの実を付け、その身を割ると上質な香辛料が取れるのだ。色によって違う味になるため、様々な料理に使用される。


 そんなわけで、ピスコルの食堂はそれらの食材を使用し、新たなレシピ開発も行っている。

 たまにすごいハズレみたいな料理もあるが、総じて味にも量にも満足している。

 最後に食後の香茶でも静かに飲めれば大満足である。

 そして、食事で英気を養ってから仲間と共に午後の訓練に備える。

 チームの役割が決まり、これから和気藹々と絆を深めていく。

 そうなるはずだと思っていたのに、


「これならどうだぁぁぁぁぁ──────!!」

「甘いですわっ!!」


 当の仲間の二人──アリカとエバは全力で試合っていた。

 むしろ、リーダー決めの日以降からずっとこうだ。

 負けたのが悔しかったのかアリカは訓練の度にエバに挑んでいる。


「その動きは見切ってる!」

「底を見せたつもりはありませんわよ!」

「うわっ!?」


 勝負あり。

 アリカが転倒してエバの木剣が喉元に突きつけられている。

 今のところ総合的な戦闘力ではエバが上回っていて、アリカの勝率は二割程度といったとこだ。

 その二割も泥臭い戦いの上での勝利なので、アリカは納得していないとボッシュは見ている。


「くっそ〜、あーまた負けた!」

「まだまだですわね」

「うっさい。次は勝つ!」

「勝ったから次は私が勝負を決める番でしてよ」

「わかってるっての。んで、また『鬼ごっこ』やるの?」

「もちろん。負けっぱなしは性に合いませんの」

「わかってるつーの」


 この二人がすごいと思うところはここだ。

 勝った側が次に勝負内容を決め、それは自分が必ず不利(・・・・・・・)になるものを選んでいる。

 鬼ごっこはピスコルの名物みたいなものだ。

 子供遊びのそれと同じであるが、内容はまるで違う。

 森や山での追跡・逃走能力を磨くためのもので、アリカは身体能力がずば抜けており、また山や森での経験値が豊富であるため、アリカが追跡と逃走どちら側になってもボッシュは勝てた試しがない。

 それはエバも同じであり、今のところアリカの独壇場となっている。

 ボッシュが思う絆を深めるとは形が違うが、これもまた一つの絆なのだろう。多分。


「ようボッシュ! あいつらの勝負も丁度終わったところか?」

「アドレット教官」


 いつもの通り陽気な様子でアドレットが現れた。


「見ての通りっすよ。てか毎日遅刻しないで時間通り来てくださいよ」

「はっはー! すまんすまん。俺みたいな伊達男は人気がありすぎていかんな!」

「あーはいはい」


 エバ率いる自分達のチームの教官になってから早一ヶ月。

 多少なりとも人となりがわかってきて言葉遣いも気安いものになってきた。


「まぁ、そう言うなって。遅れた分の指導はちゃんとするからよ!」

「マジで頼みますよ?」


 そんなこと言いつつも実力のほどは信頼している。

 何せアリカとエバが危なくなる時は実力行使で止めれるだけの力を持っているし、精霊術の訓練をしている時も的確なアドバイスをくれるからだ。

 そして、アリカ、エバ、セネム、ボッシュが集まり説明が始まった。


「いよーしお前ら。精霊術の基礎はできてきたから次の段階に移るぞ!」

「教官。それはいいんすけど、俺まだ練精法が完璧じゃないんですが……」


 この中で精霊術についての習得が浅い自覚はある。

 アリカから教えられて毎日やっているが、それでも三十分程度しかまだ保たない。

 起きている間ずっとやれるアリカと比べればまだまだだ。


「おいおいボッシュ。練精法が完璧になるまで求めてたら何年かかるんだよ? いいか、練精法に終わりなんかない! だが一つの区切りとして三十分連続でできれば次の段階に移るもんなんだよ」

「そうなんすね」

「そうだったの!?」


 なぜかボッシュよりもアリカの方が驚きが大きかった。


「いや、何でアリカが驚くんだよ?」

「いやさ、師匠からはずーっと練精法やらされてて、身体強化以外の精霊術教えてもらってないんだもん」

「はっはー! そりゃ教え方の方針も人によって違いはあるだろうさ。幼いから力はある程度分別つく年頃になって教える奴もいるし、基礎に重点を置く奴もいる。ピスコルはある程度基礎ができたら教えるってだけの話だ」

「そうなんだ」


 色々な方針があるもんだと感心した。

 ボッシュも精霊術については『精霊を感知』するまでは教えてもらったが、いかんせん時間がなくてそれ以上は教われなかった。

 だが、ピスコルに来てからは着実に成長している実感があるので、今のところ不満はない。

 そして、アドレットは言う。


「そんなわけでお前らの次の訓練はこれだ!」


 ばっばーんと自分で音を出して盛り上げる。


「『霊操法』を覚えてもらうぞ!」


 絶対に食らいついてやるぞとボッシュは決意を新たにする。

 なぜなら、チーム唯一の男として一番弱いのだけは勘弁だからだ。


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