第34話 勝利の条件
■前回のあらすじ
エバが実は色んなことを考えていた
体調は万全、精神は少し高揚している。
戦う前の状態としては最高のコンディションであると言えよう。
今日はエバとの模擬戦の日である。
実施するそもそもの原因というか理由はリーダー決めの際のいざこざになるが、最初に出会った日からエバの言動のせいで心にもやもやしたものがあった。
エバの言っていることは正論だ。
頭ではわかっているのだ。
だが、頭でわかっているだけで心は納得しているわけではない。
最終的にアリカの怒りがあそこで爆発して、エバと戦って彼女が命を預けるに足る人間であるかを図ろうと思い至ったのだ。
……まぁ、それは言い訳というか建前である。
心の言語化が苦手なアリカは、真正面からぶつかって納得したかったのだ。
エバがどんな人間であるのか。
どんなに言葉を尽くしてもわからない部分を知りたい。
そう思った。
「おい、アリカ。本当にやるのか?」
「今さら何言ってんのよボッシュ。女に二言はないわ」
「そりゃお前だけだ。しかし、エバも模擬戦を受けるとは思わんかったな」
「そ、そうかな? エバもきっと仲良くなりたかったんだと思うよ」
『それはない』
「あはは……」
模擬戦をやる訓練場に移動中、アリカ、ボッシュ、セネムが話している。
もっぱら今日の模擬戦に関することだ。
セネムには悪いが、あのエバが仲良くなりたいだなんて想像もつかない。
「そもそも勝算はあんのか?」
「わかんない。向こうが強いのはわかるけど、どの程度かわかんないし」
「だよな。まぁ、お前が納得するまでやりゃいいさ」
「うん!」
そして、訓練場に着いた。
結構早めに来たはずであるが、すでにエバがそこにいた。
「ちゃんと遅れずに来ましたのね」
「あんたこそね」
「開拓士を目指す者が遅刻するなんて言語道断ですわ」
「はっ、それもそうね」
売り言葉に買い言葉。
遅刻がどうこうよりエバに対抗するためにアリカは言ってる。
確かにこのチームで遅刻するような人間はいなかった。
ただし、遅刻はしてないものの教官であるアドレットがいなかった。
「あれ、アドレット教官は?」
「来てないな。どうする。約束の時間まで待つか?」
「必要ありませんわ。これは個人練習の延長みたいなものですもの」
「それもそうね」
エバの言う通りこれは開拓士としての演習でも何でもない個人的なものだ。
さっさと始めても問題ないだろう。
「勝負方法は木刀での模擬戦。精霊術も使用可でよろしくて?」
「それでいいわ」
「勝ち負けは相手が参ったと言うこと。または、戦闘不能状態が外野が判断したら終了ですわ」
「上等!」
「そして、私が勝ったらリーダと認めること、アリカが勝ったら何もなしで間違いないですわね?」
「もちろん! ……ん?」
最後の条件で引っ掛かりを覚えた。
「私が勝った時の条件おかしくないっ!?」
「別に何もおかしくないでしょう」
「何で私が勝っても何もないのよ!」
エバが深くため息を吐いた。
まるでダメな子に教える先生のように。
「元々あなたが言い出したことでしょうに。これは私をリーダーと認めるための試合だと」
「う、うん」
「つまり、私が勝ってリーダーと認められる以外条件なんてありませんわ」
「そ、そうなるの……かな?」
「他に希望があれば聞きますけど何かありまして?」
「いや、ないけど……」
「では問題ないですわね」
──問題ない……のか?
ぷすぷすと頭を燻らせている横で、ボッシュは呆れ顔を浮かべていた。
「ボッシュたちはどうですの?」
「俺は元々エバがリーダーすることに反対してないからな。ただ、今後チームが上手くやる協力はさせてくれよな」
「もちろんですわ。あなたは話が早くて助かりますの」
「あー、そりゃありがとよ」
何やらボッシュたちは互いに何か通じているっぽい。
セネムは「私はエバさんがリーダーで大丈夫です」と言っていた。
「っだー! もうごちゃごちゃ考えるのはやめやめ!」
そもそも小難しいことを考えて勝負を申し込んだわけじゃない。
戦ってみたいから勝負を申し込んだのだ。
「エバ! さっさと勝負するわよ!」
「上等──ですわ」
そして、二人の戦いが始まった。




