第30話 チーム結成
「あんたが私たちとチームを組みたい……?」
「えぇ。そう言いましたが聞こえませんでしたの?」
いちいち癇に障る言い方をする奴だ。
ムカっと頭に一瞬血が上るが、ここで怒っても仕方がない。
我慢だと言い聞かせ一呼吸する。
「聞こえてるっつーの。こっちは何が目的かって聞いてんのよ」
「あら。あなた方はチームを組むのに一々目的を教え合ったのかしら?」
「んなっ──!?」
「待て待てアリカッ!? いいから落ち着けって!」
ボッシュが間に入って止める。
言い返してやらないと気が済まん!
止めてくれるなとボッシュをどけようとして、セネムが後ろからアリカに抱きついた。
まさか二人がかりで止められることになるとは……。
アリカは聞き分けのない子供の気分になりいたたまれなくなった。
ボッシュから小声で「いいから俺に任せておけ」と言われ、しぶしぶと大人しくすることにした。
「あー、エバさん。うちのチームメイトがすまんかったな」
「別に気にしていませんわ。あなたは話が通じるようで安心しました」
「そりゃどうも。だがまぁ、目的が気になるって点は俺も同じだ」
「言う必要がありまして?」
「信頼的な意味でな。俺らはこの一ヶ月で人となりを知って、気が合ったからチームを組むことにした。だがエバさんは違うだろ?」
「それもそうですわね」
そうだ。そういうことが言いたかったのだとアリカは内心で頷いた。
さすがはボッシュと心で喝采を送る。
「私があなた方とチームを組みたい理由は3つありますわ」
そう言ってエバは指を一つずつ折って数える。
「一つ。権力的な後ろ盾がないこと」
「二つ。精霊術がある程度使える人間であること」
「三つ。私を加えても人員数に問題がないこと」
それらがエバのチームを組みたい理由だという。
するとボッシュは一考してからエバに聞いた。
「理由の2と3はわかるんだが、権力的な後ろ盾ってのはどういう意味だ?」
「そのままの意味ですわ。領地を預かっている身分同士が組むと意見割れ、報酬分配に問題があります。であれば、最初から同じ派閥で組むか、何のしがらみもない者と組むのが一番ですわ」
「なるほどな。納得した」
ボッシュはそれで納得したらしい。
アリカとしては面倒臭いことを考えているんだなぐらいの感想だ。
「精霊術に関してだが、一応俺ら全員使えるがレベル差はかなりあるぞ。ちなみに、俺が一番下だ」
「無論存じてますわ。ボッシュ・グラハム」
「……名乗っていたっけか?」
「前から目ぼしい者の名前ぐらいは調べてますわ。そちらはアリカ・アンゲルにセネム・カヤでしょう。チームを組むならこの程度当然のことでしょう?」
「そりゃそうだ」
そうなのか……。
日々の勉強に追われていて他者を調べることなんて考えもつかなかった。
地味にボッシュが当然側にいたので凹んだ。
「精霊術のレベル違いについては関係がありません。今後は精霊術を使える者と使えない者で分けられますから」
「そうなのか?」
「えぇ。精霊術の使用者は能力の向上、使えないものは習得にコースが分かれます。無論、チーム分けもそれが前提になります」
「合理的っちゃ合理的だな」
これに関してはボッシュも知らなかったようだ。
説明を聞けば、確かにとアリカも思った。
「しかし、その条件なら他にも該当者がいたんじゃないのか?」
「いるにはいましたが──他と大きく違う点があります」
「それは?」
「アリカ・アンゲルがいるからですわ」
「へ? わたし……?」
ここで突然名前が上がって驚いた。
しかし、他に該当者がいるのにわざわざ自分を選ぶ意味がわからない。
「あなた気づいてませんのね?」
「な、何がよ?」
「先ほどのビャクヤ理事長の『威圧』を受けて両足で立っていた人間は10人もいませんわ。つまり、現時点では上位の実力者ということになります」
「そ、そうなんだ」
いきなり褒められたようで照れる。
実力で上位にいると言われたことはないのでなおさらだ。
「はぁ……。それが問題なのです」
そんな能天気なアリカを見てエバはため息を吐いた。
問題と言われてもどこが問題だというのだとアリカはむっと睨み返した。
「つまり、あなたが実力を示したことで他のチームからも引き抜きかかりますのよ」
「ふーん。でも私はボッシュたちとチーム組むし断わるわよ」
「少しは頭を働かせなさい。ボッシュ・グラハムは気づいたようですわよ」
「ボッシュ?」
あちゃーとした様子でボッシュが頭を抱えていた。
「すまんアリカ。俺が気づくべきだった……」
「どういうこと?」
「つまりだな……」
ボッシュは言う。何が問題なのかを。
「お前をチームに入れるためなら──俺やセネムが脅される可能性があるんだよ」
「はぁ!?」
さすがにこれにはアリカも心底驚いた。
どうして自分が実力があるからといって二人が危険に晒されるのか。
「何でそんなことすんのよ!?」
「そりゃ有望そうな人間をチームに入れておけば、今後役に立つからだろ」
「そんなことで!?」
「脅すには十分な理由にはなるな」
嘘でしょとアリカは背筋が凍った。
そんなちっぽけな理由で、そこまでする理由がアリカにはわからなかった。
「要はこういうことだろ。エバさんは俺らとチームを組んで利益が被らないメリットがある。俺らはエバさんとチームを組むと、他からは派閥に入ったと思われて同じチームでいられる──って理解でいいか?」
「えぇ。話が早くて助かりますわ」
お互いがチームを組むメリットが提示された。
「アリカ、セネム。俺としてはエバさんとチームを組みたいと思うんだがいいか?」
「……ふん。そういう理由なら仕方がないもんね」
「えと、二人がいいなら」
「決まりだな」
気持ちとしては反対だが、二人の安全には変えられない。
アリカはボッシュの提案にしぶしぶながら賛成した。
「エバさん。改めてこちらから言わせてくれ。俺たちとチームを組んでくれないか?」
「もちろん。よろしくてよ」
多分、最初から最後まで思い通りだったのだろう。
余裕綽々とした笑みを浮かべてエバは言う。
「では皆様。これからよろしくお願いいたしますわ」




