第26話 大切なこと。それは、根性
アリカの開拓士養成学校への入学手続きは無事終えた。
入学手続き金、寮生活を望むか、簡単な経歴などを書くだけであるが、こういうことに不慣れであるため地味に緊張をしてしまった。
道中出会ったボッシュ、絡まれているところを助けたセネムとはそのまま一緒に向かい書類でわからない点などを教えあって書いた。主にボッシュが教えてくれた。
ピスコルは寮があるが少し歩けば他にも住宅地もあるので、そこから通う生徒も少なくはない。アリカは事前にクオンから聞いていたので寮生活を望んだ。
セネムもまた同じく寮生活を望んでいて、部屋は二人一部屋で割り当てられるため、それならば折角顔見知りになれたので同室を願い出た。
「へぇ〜ここが私たちの部屋になるんだ!」
「うん。二人で済むならこれぐらいで丁度いいね」
「そう? 実家で妹と一緒の時はもっと部屋大きかったけどなぁ」
「ここは最低限の生活を送る部屋だから狭いんだと思うよ」
「そうなんだ!」
部屋は机と2段ベッドが置いてあり、後は衣装とかを仕舞うクローゼットが備え付けられているだけだ。旅で泊まっていた安宿みたいな感じである。
だが、綺麗に使われていたのか年月の割に汚れが少ない。いい感じだ。
「えと……アンゲルさんはベッドの上か下どっちがいいとかある?」
「強いていうなら上かな〜。てか、名前呼び捨てでいいよ。私もセネムって呼ぶし」
「う、うん。よろしくね……アリカ」
「こちらこそ、セネム!」
その後、セネムとおしゃべりをしながら荷解きを始めた。
といっても二人とも荷物は少ないのですぐに終わった。
「ここに住む以上、日用品とか色々揃えないとだね〜」
「だね。事務員さんに教えてもらったから今度買いに行こう」
「うん!」
ピスコルへの入学届を出した時に事務員さんから色々と教えてもらった。
寮のルールを始め、日用品、文具、衣服などなど。
ただし、事務員からこんなことも言われた。
「用意するのは急がなくてもいいってどういうことだろうね?」
「えっと、多分なんだけどすぐに辞める人がいるからだと思う」
「はぁ?」
せっかく入ったのにどういうことだろうか?
理由がわからぬアリカにセネムが教えてくれた。
なんでも開拓士に憧れたり一攫千金を求めるものは後を絶たない。これはボッシュにも教えてもらったことだ。
そして、開拓士を育てる名目上ピスコルへの入学には、余程のことがない限り入れる。しかし、それだと人数が膨れ上がるため、早々に現実を突きつけて甘い考えの者を篩にかけるるとのことだった。
「要は訓練がきつくてやめる奴がいるってこと?」
「簡単に言うとそういうことかな」
「ふーん。面白そうじゃん!」
「え?」
アリカがそう言うとセネムは驚いた顔をした。
セネムから聞けば聞くほどアリカの胸はワクワクが止まらなくなってきた。
「だってさ、それぐらいできないと開拓士になれないってことでしょ?」
「そ、そうだね」
「きつい訓練上等! だって、私はそれを求めてここに来たんだから!」
開拓士が大変な仕事なのはクオンを通して知っている。
村が害魔に襲われ、この世界は自分が思っていたほど安全ではないと知った。
いつだって、どこかで誰かが傷ついていて。
弱いままでは何も守れなくて。
守れる誰かが必ず間に合うとは限らない。
だから、せめて安心できる場所を求めて、そして理不尽な存在から奪われないような強さを身につけたいと思って開拓士を志したのだ。
「そうなんだ──アリカはすごいね」
「そっかな?」
「そうだよ」
すごいと言われてもピンとはこなかった。
けど、セネムがそう言ってくれたことは素直に嬉しかった。
「でも、セネムだってここに覚悟を決めてきたんでしょ?」
「う、うん。私も精霊術の適正あったから。でも、私どん臭くて引っ込み思案だから……」
「そんなの関係ないよ!」
セネムの肩をガッと掴んだ。
アリカは知っている。
たとえ運動が苦手で、絶対に勝てない相手だとわかっていても立ち向かう勇気ある妹がいたことを。
大切なことは──適正があるとかそういうことじゃない。
「うちの師匠がよく言ってたことがあるんだけどさ。本物になる奴ってのは、行動に移しただけで半分は成功してるんだって」
クオンはたまに呟くように教え聞かせてくれたことがある。
哲学というかクオンなりの経験というか。
何故か、そういう言葉の一つ一つは頭ではなく胸に残っている。
「んで、残りの半分は『考えて継続すること』なんだって」
まずは行動をしてみる。
その後、行動した結果について考える。
それを繰り返さないと人は正しい意味で『学ぶ』ことができない。
アリカはそう教わった。
「セネム。私が言いたいことわかる?」
「う、うん」
クオンの教えは正しく至言である。
この5年の修行でアリカは一つの真理に達した。
それは、
「つまり『根性』があれば大抵何とかなるってことだよ!!」
修行の日々は過酷なものだった。
山に篭って獲物を狩るまで帰ってくるなと言われたり、剣術の修行で立てなくなるなど当たり前で、心が何度も折れかけたが根性で何とか乗り切った。
「え、えぇ〜……。そ、そういうことなのかな?」
「そういうことだよ!」
セネムが若干疑問に思っているようだが、きっぱりと断言する。
根性はすごい。
根性があればなんとかなる。
根性がこそが大切だと。
「だから、私もセネムが挫けそうな時は応援するし、私が挫けそうな時はセネムが応援して! そうすればお互いの根性でどうにかなる!!」
「そう、だね。うん、アリカの言う通りだね」
楽観的なアリカに感化されたのか、セネムも明るく笑った。
「アリカ。私、がんばってみるね」
「うん。がんばろう!」
どんな困難が待ち受けていよう乗り越えてみせる。
二人はそう誓った。




