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開拓のアリカ  作者: 菊日和静
第二章 開拓士養成学校編
24/56

第24話 運命の出会い

 開拓士養成学校(ピスコル)の道中で出会った少年ボッシュはいい奴だ。

 道案内の看板を見ても目的地がよくわからなかったので声をかけた理由は、何となく故郷の村の男子連中と似たような匂いを感じたからだ。その直感は合っていて田舎出身同士意気投合した。

 アリカと違ってボッシュは開拓士になるための準備や情報収集は欠かしてなかったので色々と教えてくれた。

 やはり、土と草の匂いがする人間に悪い奴はいない。

 ボッシュは陽に焼けた金色の癖っ毛をしていて、農作業をしていたせいか図体が大きく骨太で一見したら太っているようにも見える。だが纏っているのは脂肪ではなく筋肉なのは見てたら何となくわかる。年頃は大体アリカと同じぐらい15歳ぐらいだと思う。顔には少年期の成長を思わせるそばかすがあった。

 そして、色々と教えてもらった結果──


「お前マジでガキの頃から精霊術使えたのか?」

「マジよ。『練精法』による身体強化は基本だって師匠が言ってたわよ」

「それが1年目の突破の最低ラインなんだがな……」

「そうなの?」


 それは知らなかった。

 師匠であるクオンから身体強化を教わり1日で使えるようになったので、どれだけの期間で使えるようになるかは比較したことがない。

 それに身体強化が最低ラインといっても『練精法』は奥が深い。

 むしろ、覚えてからが始まりとさえ言える。

 アリカとて5年間修行しても未だ精霊術の制御はクオンの足元にも及んでいないのが現状だ。


「ボッシュは適正あるってことは精霊を感じてはいるんでしょ?」

「まぁな。最初はこれが何なのかわからんかったが、村で精霊術かじったことある人がいて、それで自分に適正があることがわかった」

「あー私と同じだ」

「昔から力強いとは思ってたが精霊術だとは思わんかった。だけど、まだ意識的に使うことができねーんだよな」

「ふーん。『練精法』なら叩き込まれたから修行やるなら手伝うわよ」

「おぉ、そりゃ助かる!」

「いいわよ。色々と教えてもらった礼よ」


 こんなことならお安い御用だ。

 そうこう話している内にいつの間にか目的地が見えてきた。

 開拓士養成学校(ピスコル)

 他の建物より幾分か新しく見える建物は広く大きい。この5年間の旅で色々なところに立ち寄ったが、その中でも間違いなく上位10位以内に入る建物だ。

 学校とはここまでの大きさが必要なのかとボッシュに聞いたら、開拓士見習いだけでも相当数いるし、寮やら食堂に訓練所も含まっているのだそうだ。

 そして、いざピスコルの門を潜ろうとしたところ、


「なぁおい、アリカ。なんか騒がしくねーか?」

「本当ね。何かあったのかしら?」


 騒ぎの中心を見てみると女の子を取り囲んでいる数人の男子集団があった。

 どう見ても仲良く和気藹々としている雰囲気ではないが、話し声が聞こえる位置まで来たので様子を伺うことにした。


「ははは、これは名誉なことなんだよ? 名門ガーランド家の僕がこのピスコルを案内しようと言っているのだから」

「あ、あの……こ、困りますっ」

「うんうん。ここは無駄に広くて困るよね。ぜひ君の助けにならせてくれたまえ!」

「あ、ちょっと……!」


 なるほど。これはいわゆるナンパとというやつだろう。

 ピスコルまで来て何をしているんだと言いたいが、男女の出会いに関して部外者が何かを言うのは野暮というものだろう。

 話しかけられている女の子が迷惑そうだということを除いて。


「ねぇ、ボッシュ。ああいうのってよくあることなの?」

「田舎者の俺に聞くなよ……。流石にナンパに関しちゃ知識も経験もねーよ」

「そうなんだ。あの子迷惑そうにしてるけど助けた方がいいのかな」

「やめとけやめとけ。ガーランド家っていや、開拓士で名を上げた家のはずだ。関わったらどんな目に遭わされるかわかったもんじゃねぇ」

「ふーむ」


 確かにアリカは名門とか家の影響力がわかってはいない。

 村にいた頃はみんな一丸となって励んでいたし、旅に出てからは修行ばかりの日々で世情というものには疎いままだ。

でも、


「なぁ、君。エリック様がお誘いしているのに流石に失礼だぞ?」

「こちらが厚意で申し出たことを断るつもりか!」

「おいおい君たち。レディが怖がるではないか。すまないね。では行こうか!」

「きゃっ……!?」


 目の前で困っている人を見過ごすのは何か違うと思う。

 結局のところ、これが自分の性分なのだろう。


「ボッシュ。ごめん!」

「え、おい、アリカ!?」


 アリカは女の子の場所まで駆け出した。

 女の子が手を引かれ連れていかれる寸前でよかった。

 そして、アリカは大きく息を吸って──


「ちょっと、そこの──」

「──貴方たち見苦しいですわよ」


 止めようとしたところ声が被った。

 想定外の事態にその場にいた全員が一瞬固まった。

 まさか自分以外にも止めようとした人が出るとは思わなんだ。

 アリカは別方向から来たその人に顔を向けた。


「……えーと、あんたも止めに来た人?」

「ということは貴方もかしら? その行動と勇気は誉めて差し上げますわ」 

「は、はぁ」


 突然のことで戸惑いを隠せず適当な相槌を打つしかなかった。

 この場所にいるのだから、多分この人も開拓士志望なのだろう。

 そして、アリカと同じタイミングでナンパを止めようとしたその子は名乗った。


(わたくし)はエバ・凛音・神宮院と申す者ですの。以後お見知り置きを」


 これがアリカとエバの初めての出会いであった。

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