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開拓のアリカ  作者: 菊日和静
第1章 少女は開拓士を志す
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第20話 アリカの決意

「うゔぅ〜師匠のばか……」

「ったく鼻水垂れてまで俺への悪態かよ」

「師匠が、私を泣かしたのが悪いっ……!」

「間違ってないが絶対それ他で言うなよ?」


 涙と鼻水でぐずぐずになった私は冗談まじりに言う。

 自分でも驚くぐらい泣いた。

 姉になってから泣いたことは何回かあるが、ここまでのはなかった。

 泣いたことでスッキリ──とまではいかないが、色々なものが整理できた気がする。

 これまでのこと。お父さんのこと。これからのこと。

 スッと自然に腹の中に落ちた。


「ちったぁ気が晴れたか?」

「ん、ありがと。師匠」

「はっ、感謝される謂れなんてどこにもねーよ」


 ぶっきらぼうな態度を取りがちのクオン。

 修行では厳しい面もあるが、下手に慰めの言葉をかけずに待ってくれる優しい面もある。

 だから言おう。

 私の決意を。



「クオン。改めてお願いします。私の師匠になってください」



 泣きながらずっと考えていた。

 どうしてこなったとか。どうしたらよかったとか。

 何でお父さんは死んで、私はこんなに弱くて情けなくって。

 泣くことしかできないぐらい子供で。

 色んな想いが混じりながら、ようやく私は原点を思い出した。


 ──理不尽に襲ってくるもの全てから守れるぐらい強くなりたい。


 それは修行の初めにクオンに誓った言葉。

 理不尽なものから襲われても、私は守れないぐらい弱い。


 ──偽物なんかになんじゃねーぞ?


 もしもこのまま私が立ち上がることなく屈したらどうなる。

 自分の建てた誓いに背くどころか、お父さんにも顔向けできないのではないか?

 そんなのは嫌だ。死んでもお断りだ。

 私は偽物なんかになりたくない。なってやるものか。

 だから、私は心の底からクオンに希う。

 師になってほしいと。


「それがどういうことかわかってんのか?」

「うん」


 わかっている。

 この決断が何を意味して、これからどうなるのか。


「私は──開拓士(ピス)になるよ」


 真っ直ぐにクオンを見て言う。

 そしてクオンもまた、じっと私を見極めるために瞳を真っ直ぐに見る。

 数秒後、クオンはいつも通り皮肉気に笑った。


「理由なんざ聞く必要もねーな」

「聞くだけ野暮ってもんだよ」

「はっ、言うようになったじゃねーか」


 ひひって私も皮肉気に笑った。

 笑ったら肩の力が抜けた。久しぶりに笑った気がした。


「だが、一個だけ聞かせろ。開拓士になって何を為したい?」

「私はさ。みんなが住んでるこの村は安心で、大人になっても変わらないって思ってたんだ」


 でも、そうじゃなかった。

 危険な獣はいるし、獣よりもやばい害魔もいることを思い知った。

 今ここにある平和は──永遠じゃなかった。

 平和は何もせずに手に入るものじゃなかった。

 皆が精一杯生きて、働いて、がんばって、それでようやく手に届くかどうかなのに平和は命は簡単に脅かされる。

 獣だったり、自然だったり、害魔だったり、事故だったり、病気だったり。

 色んなことが原因であっさり壊れる。

 だから、思ったんだ。



「今よりもほんの少しでもいいから、みんなが笑って暮らせるようにしたい」



 きっと、私の力はそのためにある。

 この精霊力という恐ろしくも頼もしい力で、開拓士となって安心できる世界を切り拓きたい。

 そう願った。


「……お前は、害魔が憎くはないのか?」

「はぁ、何言ってんの? めっちゃムカつくし腹立ってるに決まってんじゃん!」

「お、おう」

「問答無用に村襲うわ、最初はすっごくビビって逃げたし痛い思いもしたさ!」

「いや、俺が聞きたいのはそういうことじゃなくてだな」

「そういうことだよ!」


 クオンが何を言いたいのかわからないけど、私は害魔にムカついている。

 あいつら本当最悪だ。村に来なかったらこんなことにならなかったとも思う。


「だから、私はあんな害魔(りふじん)に──勝ちたいんだ」


 開拓士になって。

 負けないとか、諦めないとかじゃなくて勝ちたい。

 力が足りないとか、どうしようもないとかで諦めたくなんかない。


「それにさ、別に害魔だけが特別理不尽じゃないし。《灰色猪》とかも師匠いなかったらやばかったし。畑とかも大雨とか天災あったら収穫もできないしさ。だから、なんかこう力があったらもっといい感じにできるかもじゃん!?」


 自分で言っていて何かしどろもどろになってきた。

 何かクオンが呆れた顔をしている……。

 これはいけないと思い、とりあえず最後にいい感じに締めねば!

 とりあえず、お父さんから礼儀作法は大事にしろと言われた教えを思い出した。


「お願いします。私に開拓士のなり方を教えてください」


 深々とお辞儀をする。

 たっぷりと5秒ほどかけた。

 それでもなおクオンは沈黙を保っているのでなんか気まずい。

 すると、


「く、はは、あははは!」


 クオンが笑い出した。

 いきなり笑い出したことにぎょっとして下げてた頭を上げた。


「え、えと。師匠、どうしたの?」

「くくっ。あー、ちくしょう、こんなに笑ったの久しぶりだぞ」

「私そんなに面白いこと言ったっけ?」

「言った言った」

「むぅ、そんで私の弟子入りは認めてくれんの?」

「はっ、どうせ断っても勝手に弟子入りすんだろ?」

「うん!」

「そんな弟子入り見たことねーよ」


 そんなの言われても知らない。

 私はもう決めたし、何度断られてもクオンを師匠にするって決めた。


「俺の修行は厳しいぞ」

「望むところだよ!」


 自分が全然弱かったことを知った今となっては厳しい修行はどんと来いだ。

 1日でも早く強くなりたい。


「じゃあ、お前が次にやることはわかるな」

「うん。わかってるよ」


 クオンに正式に弟子入りになって開拓士になる。

 だから、次に私がやることなんて明白だ。

 私がやること。

 それは──


「家族会議だ!」

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