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世界最強の観察者  作者: 十卡一
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第5話

「…なぁ」

「…何…?」

「そろそろやめてくんない…そのじっと見てくるの…」

試験が開始してからというもの、 モノはじっと俺の事を観察している。 順番は最後にしようと思っているので、 今のところ観察者のスキルを使用していない。 なので重瞳じゅうどうにはなっていないが…。 いずれ俺も試験突破の為にはスキルを使用せざるを得ない。

「…教えてくれるまで、 やめない…」

半ば諦めつつ、 再び試験中の生徒達に目をやる。

俺もだいぶスキルのコピーに成功しているものの、 強力なスキルを使える生徒がいないせいか、 これといって使いがいのあるスキルをコピー出来ていない。

今のところ期待しているのは、 隣にいる『モノ・バエル』と勇者職業(ジョブ)である『アラン・シュートデル・ディッフィ』の2名だ。

「…お、 いいタイミングで…」

1人の生徒が試験を終えた後、 次にと手を挙げたのは期待2号のアランだった。

毎年試験内容が違う様で、 予習もなにも出来ないらしい。 そして今年の試験は、 重鎧の試験管とは違う、 もう1人の魔術師の試験管が作り出したゴーレムを破壊する事だった。

「行きます……はぁぁぁぁあ! "断罪剣ジャッヂメント"!」

大抵近接型の職業は、 突っ込んで行くしかないが、 アランの使用したスキルはあろう事か斬撃を飛ばしていた。

射程無視の斬撃攻撃…これは強力だ。

『勇者スキル:断罪剣 を獲得しました。』

ありがたく観察させてもらった。

一撃で粉砕してしまったゴーレムを見て、 またもや歓声と拍手が飛び交う。

「がっはっはっは! 流石勇者だな、 教師の作り出したゴーレムをいとも容易たやすく破壊するとは!」

試験用で多少弱くは造られていると言えど、 今までの生徒のスキルでも大抵8発は耐久出来ていた。 やはりそれだけ勇者のスキルというものは希少で、 威力も桁外れに強い。

「全く、 私のゴーレムを一撃だなんて…間違いなくSクラスに振り分けられるでしょうね」

先程、 試験開始の前に説明されたが、 この試験の結果次第で合格か否か…そしてクラス分けが決まる。クラスはS、A、B、Cで分けられ、 Cクラスの基準に満たない生徒は不合格というようなシステムらしい。

「そんな事ないですよ、 先生。 これくらいなら僕の他にもできる人はいるでしょう…ほら、 あそこのバエル家の最高峰のモノ君とか」

そう言ってアランは俺の隣のモノを指差す。 当の本人は自分が話題に上がっているのも気にせず俺を観察し続けているが…。

「ほら、 呼ばれてるぞ。 次行ってきたらどうだ?」

「…むぅ、 わかった…」

以外にも素直に立ち上がり、 再び生成されたゴーレムへ向かう。

「… "超合金人形アイアンゴーレム"…」

スキルを発動させると、 地面から複雑な魔法陣が展開され、 そこから現れたのは試験用ゴーレムとは似ても似つかない体躯たいくのゴーレムだった。

てっきり魔法を使ってくれると思ったが、 どうやら違った様だ。 だが、 このスキルも強力そうだ。

『錬成師スキル: 超合金人形アイアンゴーレム を獲得しました。』

「へぇ、 錬成師なんて職業ジョブもあるのか…ん?」

まて…錬成師?

モノの職業は『大魔道士』じゃないのか…?

入口で俺に使ってきたのは大魔道士スキルの"アイシクル"だったハズ。

職業が2つあるなんてことも有り得るのか…?

「…こわして…」

完全に生成されたゴーレムは、 試験用ゴーレムの3倍程の大きさだった。 そのゴーレムがモノの一言で拳を大きく構え、 渾身の一撃をお見舞いする。その威力は、 会場に響き渡る振動と巻き起こる爆風が物語っていた。

土煙が収まる頃にはモノの生成したゴーレムは消えており、 一撃が繰り出されたであろう場所は隕石でも落下してきたかのような見事なクレーターが出来上がっていた…。 言うまでもなく試験用ゴーレムは無惨にも粉々だ。

「…こ、 ここまで凄いとは想像してなかったよ…モノ君…僕のスキルなんて可愛いものだ」

勇者も唖然。

「お、おい…モノ。 お前って大魔道士じゃなかったのか…?」

何事も無かったかのような顔をして俺の隣に戻って来たモノに、 先程の疑問を提示する。

「…何故、 そう思った…の?」

「だって、 入口で俺に使ってきたスキルは大魔道士のスキルだろ?」

「…何故、 大魔道士のスキルだったって…知ってるの…?」

盲点だ。

確かに、 自分の職業の事なら調べておいてもなんら不思議はない…が、 既に俺の職業が剣士であるということは伝えている。

「ほ、 ほら…俺が何の職業になるか分からないうちに、 色々図書館で調べて──」

「…出身は下界だと言っていた…。 下界には図書館はない…」

「いや…一度上界に──」

「…来たことないって…言ってた…」

…なんという記憶力…流石バエル家の最高峰。

「…い、言えない理由があるんだ。 俺のじいちゃん曰く、 誰かに行ったりしたら戦争が起きたりする可能性があるみたいで…」

俺は、 話題の真髄には触れずに理由だけを話した。 俺の話を聞き、 少しの間黙り込むモノは、 上着のポケットから謎のケースを取り出した。 中にはいくつかの黒い玉のようなものが入っており、 それを1つ手に取る。

「…これは、 モノが作った…魔道具の1つ。 これを身体に取り込み、 1つ約束事をする…その約束事を破れば、 発動する」

「…ど、 どんな?」

「…死ぬ」

「なんてもの作ってんだっ!! それじゃただの呪いの魔道具じゃねぇか!!」

なんて恐ろしい魔道具を作り出すんだ…この15歳は。

「…そして、 先にモノがモノの秘密…職業について教える…これで、 どう…?」

真っ直ぐ見つめる紫色の瞳には、 嘘偽り等なかった。

本当に、 純粋に、 知りたい。

ただそれだけなのだろう…。

「……分かった、 教える」

そこまでするモノの覚悟に気圧され、 俺は観察者について話すことを決めた。

俺の返答にポーカーフェイスだった口元が少し緩んだように見えたが、 それは直ぐに元のポーカーフェイスに戻っていた。

「…じゃあ、 先にモノから…。 モノの職業は『研究者』──」

モノが言うには、 『研究者』という職業は、 スキルについて調べれば、 そして理解することが出来れば、 どの職業だろうがそのスキルを使用することが出来る。

大魔道士の『アイシクル』について理解すれば、 そのスキルを使用することが出来、 錬成師の『超合金人形』について調べれば、 そのスキルも使用することが出来る…。

つまり、 俺の職業、 観察者と酷似している。

違う点と言えば、 研究者はそのスキルを実際に見なくても良く、 調べあげていれば使用出来る…という点だろう。

そのスキルは、 幼くして研究をし続け、 研鑽していたモノにこそ相応しいと思える職業だった。

「…成程、 やはり変わった職業は他にもあるのか」

もしかすると、 俺と似た職業が他にもあるのではないかとは考えていたが、 まさかここまで早く発見出来るとは思っていなかった。

「…モノのこと、 話した。 次はあなたの…番…」

そう言って、 モノは黒い玉を口の中に放り込み、 喉を動かす。

「…あぁ、 そう言えば俺はまだ自分から名乗ってなかったな…ゼンだ。 よろしく」

「…エントリーシートで、 見たから知ってる…ゼン、 早く…教えて…」

「わ、 分かったから…そんなに引っ付くな…」


ポーカーフェイスの中でも瞳だけはキラキラと輝いていた。


そしてとうとう俺は、 じいちゃんとばあちゃん以外の人に初めて『観察者』について話した…。



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いつも時間を割いて読んでいただき、ありがとうございます!

初のブックマーク登録を頂きました!!

感謝の極みです! ありがとうございます!

初のブクマ記念なので、 来週の投稿は2話分掲載することに決めました!

まだまだ執筆速度をあげつつ、 更に面白い作品を作り上げて行けるよう応援の程、 よろしくお願いします!

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