第4話
「「ここが……上界…」」
「とってもおっきいですね…」
試験会場の試験申し込みが時間ギリギリだった為、 あまり街並みを見ずに突っ走ってきたので、 申し込みを終え、 試験開始まであと15分の時間をこの上界都市グロリアを見学する事となった俺達は、 俺達が暮らす下界との違いを思い知らされていた。
建造物は木や石ではなく、 コンクリートで出来ており、 綺麗な装飾なんかもされてある。 人々も皆活気に溢れ、 聞かずともこの街がどれ程住みやすいか物語っている。
必要最低限のお金しか持たされていない俺は、 この街で何か一つでも買おうものなら全財産を失ってしまう程に物価も違う。
「これが同じ国なのか…?」
カインの零した台詞は、 俺もキアラも思っていた事を代弁していた。 そう思ってしまう程に違っていた。
すると、『ゴーーーーン』という鐘を叩く巨大な音が街全体に響き渡ると、 続いて放送が流れ始めた。
『まもなく、 聖職業学校の試験が開始されます。 試験を受けられる生徒達は速やかに会場にお集まりくださいますよう、 お願い致します』
────いよいよ、 試験が始まる。
試験会場は4つに分けられており、 試験申し込みの順番にA会場、 B会場、 C会場、 D会場と振り向けられるようで、 物の見事に俺達は分断した。
俺が渡された封筒にはA会場とだけ記されており、 他の指示書等は何もなかった。
「……ここ、か」
覚悟を決め、 大きく『A』とだけ書かれた扉を開けようと手を伸ばす……も、 何者かに袖を引っ張られ、 それは阻まれた。
俺の袖の引っ張り主に目をやると、 そこには俺よりもかなり身長の小さい少女が引っ張っていた。 紫色の髪を短めに整え、 魔女が被るような帽子を深々と被っていた。 彼女は紫色の瞳でまっすぐ俺を捉えている。 人違いでは無さそうだ。
「……モノ、が…開ける」
小さな細々とした声だが、 確かに彼女、 『モノ』はこの扉を自分が開けたいと口にした。 扉を開けたいと言う発言から、 身長では想像出来ないだろうが、モノと名乗るこの少女は恐らく俺と同じ年代なのだろう。
────だが。
「そうはいかない。 俺もこの扉は自分で開けたい!」
なんと言っても念願の入試試験なのだから、 その扉は自分で開けたいと思うのは普通だろう。
その気持ちは向こうも同じのようで…。
「……ダメ、 この扉…は、 モノが…あける…っ!」
ぎゅっと俺の袖を握る手に力が入るのが分かる。 途端、 その手からピキッと音が鳴る。
…まるで氷のような。
『大魔導師スキル: アイシクル を獲得しました』
こいつ、 まさかのAランク職業、 大魔導師だったとは…。
スキルは有難く頂戴させてもらうとして、 どうしたものか…。 だが、 その悩みも直ぐに解決する。
「きょ…教授ーーーーっ!!?」
こちらに投げられた声であろう発生源の方向を見ると、 人混みをかき分けながら走る、 丸メガネに白衣という あたかも な格好をしている男性がこちらに猛ダッシュで向かってきていた。
既の所で止まる事が出来たものの、 何かを発そうとした瞬間、 モノの見事なブローがモロに入る。
どすっ
鈍い音が響き、 それに気づいた頃には白衣の男性は白目を向き、 泡を吹いていた。
「…その呼び方、 外では…しない約束だった……」
「……も、 申し訳ございません…さ、 さぁ…早く会場内へ…」
「「…あ」」
俺とモノの制止も聞かず、 あろう事かその男は扉を開けた。
「……不毛な争いはやめよう」
「…それがいい。 あと、 君。 今日でクビ」
『クビ』と宣言された白衣の男の懺悔と悲しみの声を背に、 俺とモノはとうとう試験会場の中へと入ることが出来た。
そこには既に20名程集まっており、 各々邪魔にならない程度でスキルの特訓を行っていた。
情報量が多すぎて、 流石に観察者のスキル獲得も出来ない…。
その中でも、 やけに目立った少年が一人いた。 周囲の試験生徒に囲まれており、 その全員と巧みに会話している。
「よしてくれ、 僕が勇者の職業に選ばれたのなんてただの偶然だよ」
俺の次に職業を決められた金髪の少年だった。
対応も然りだが、 その声は周りを安心させるような…そんな声だった。
…完璧な勇者像だろう。
「…アラン・シュートデル・ディッフィ、 職業確定の際に『勇者』の職業を獲得した……今回の試験生徒の中でも注目を浴びている…」
モノは、 まるで俺の心でも呼んだかのような返答をした。
「…モノはモノ・バエル。 バエル家歴代で最高魔力保持者…」
バエル家。
それは、貴族の中でも最も地位が高いとされる貴族の名門であり、 バエル家からはAランク以上の職業しか出ないとされる。 さらに、 魔力研究にも長けており、 主に魔石の研究に関しては群を抜いて優秀だと聞いたことがある。
自己紹介を終えたモノが 髪を耳にかけ直すと、その耳には赤色のピアスが光に反射して見事に光り輝いていた。
「…これは、 モノが魔石から造った…」
「魔石から、 ってことは魔道具か? すげぇな」
魔道具という言葉に少し顔をむっとさせ、 小さく首を横に交互に振る。
「…魔道具とは、 違う。 スキルそのものの様な…もの…」
スキルそのもの?
俺はその返答に全く意味が分からずに首を傾げる。
「…これは『魔力妨害』。 ありとあらゆる魔力を妨害させる…例えば、 君のその『目』にかけられた認識阻害も…無効化…」
「っ!?」
急に指摘された認識阻害の魔法に焦りを覚える。 なによりも厄介なのは、 かけている魔法すら見抜かれているという事。 こんな所に認識阻害の魔法をかけていれば、 そこに見て欲しくない物があるという事と同じなのだから。
「…なぜ、 目に認識阻害をかけてる…の…? 知りたい…」
まさか、 こんな所でバレてしまうとは思っても見なかった…。 しかも目の前に居るのは研究大好きなバエル家の一人。 俺の職業の正体がバレでもしたら、 全身を解剖されたりするかも知れない…っ!
その時。
「てめぇぇぇらァァァあっ!! 既に他の奴らは集合してんだ! さっさと集まらんかぁっ!!」
怒号の先には重鎧に身を包んだ試験管らしき人物が、 他の試験生徒達を並べさせていた。
「…と、 とりあえず集まろう…は、 はは」
冷や汗を垂らしながらも誤魔化し、 話題をすり替える。
「…そうする」
じいちゃんから聞いた話によると、 試験結果によってクラス分けをされるらしいので、 出来ればモノと同じクラスにならぬよう気をつけなければいけない…。
……何とかするしか無さそうだ。
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