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あれから、シーク様は、ちょくちょく邸に遊びに来るようになった。
その都度、有名なパティシエのお菓子やら、なかなか手に入らないフルーツを持って来てくれている。
お兄様の部屋に呼ばれて一緒にお茶をするのも、もう慣れてしまった。
今日もいつも通り3人でお茶をしていると、邸にある御神木の話になった。
シーク様は王宮の図書館で昔の文献を読んだらしく、とっても興味を持っているようだ。
「あの木に関しては、私よりもアナの方が詳しいのですよ。」
「そうなのか!ではアナスタシア嬢、案内して貰えないだろうか。」
「え、ええ。わかりましたわ。」
お兄様が案内すればいいのに!とは言えなかった。
だって、シーク様の目がキラキラしてるんだもん。
仕方がないので、シーク様を御神木まで連れて行くと、いつものように蔦が降りてきた。
私はピョンと蔦にしがみつき、いつもの定位置まで登ると下に向かって叫んだ。
「シーク様!蔦を下ろすので掴まって下さい!」
突然の事に目を丸くしていたシーク様は、下りてきた蔦を掴むとそのまま一気に上まで上がってきた。
「アナスタシア嬢、これは一体!?」
「シーク様。ここからはウィジェット王国がよく見えますよ。」
そう言って、自分の隣に座るようにポンポンと枝を叩く。
シーク様はまだ目を丸くしていたが、促されるままに私の隣に座ると、少しひきつった顔を前に向けた。
彼は目を大きく開いて目の前の景色に絶句している。
その横顔に、目が釘付けになる。
、、、綺麗、、、。
艶やかなブロンドの髪は後で纏められ、瞳はサファイアのようにキラキラと輝いている。
「ここから見る景色が、私はとても好きなんですよ。」
「、、、あぁ。本当に、素晴らしい眺めですね。」
私たちは、暫くその美しい景色を見ていた。
カステッロ侯爵家で御神木と呼ばれる木の前に来た。
隣には親友ホセの妹、アナスタシア。
この木について図書館でも調べたが、なかなか興味深い。
アナスタシアが詳しいらしいので、調度良かった。
魔力を持つ木について話を聞きたかったし、ちょっとしたデートみたいだ。
にやけそうになる顔に気合いを入れて、木の魔力について話そうとした途端、目の前からアナスタシアが消えた。
どういう事だ?
驚いて目をパチパチさせていると、頭上からアナスタシアの声がした。
どうやら、蔦に掴まれ、と言っているようだ。
訳も解らず蔦を掴むと、一瞬の浮遊感の後、あっという間に木のてっぺんに来てしまった。
アナスタシアはにっこり笑って、自分の隣に座るように言っている。
アナスタシアが座っているのは、ソファのように見える木の枝だった。
広くはないそこは、アナスタシアと自分が座ると距離が近い。
ドキドキしたまま前を向けば、ウィジェットの街並みが遠くの方まで見える。
なかなかの絶景だ。
シークはチラッとアナスタシアの方を見た。
その目はキラキラと輝いており、整った顔立ちは益々美しい。
「、、、キレイだ。」
俺はこの数ヶ月、アナスタシアに友達認定されたのを良いことに侯爵家へ通っている。
もちろん、剣術や勉学に時間を割かなければいけないが、ボヤボヤしてる間にアナスタシアが婚約してしまったら、後悔してもしきれない。
カステッロ侯爵には早々に婚約の申し込みの手紙を出したが、『本人の意思を尊重したい』とのことだった。
それとなくホセに聞いたこともある。
『まぁ、アナが幸せになれるなら、僕は誰でもいいんだけどね~(笑)』
と、軽い返事が返ってきた。
が、
『既成事実を先に作ったら、殺すよ!?』
と、笑顔なのに笑ってない顔で言われた時は、さすがに顔がひきつったけど。
アナスタシアは御神木について、色々教えてくれた。
俺が読んだ本よりも詳しいのは、やはり代々この木を護り続けてきた家系だからだろう。
家族の中でもアナスタシアにだけ与えられた力があるらしいが、それは追々教えてくれるらしい。
さっきの蔦が降りてきたのもそのうちの1つだと言う。
外部の人間でこの木に上ったのは俺が初めてらしいが、それってちょっと特別だと思っても良いのだろうか。
こんな些細な事が嬉しいなんて、少し前の自分なら考えられなかった。
「ちょっと涼しくなってきましたので、そろそろ降りましょうか。」
「そうだね。」
二人きりの時間はあっという間に終わってしまう。
「アナスタシア。」
「はい?」
「私は貴方が好きだ。私と結婚してくれないだろうか。」
気が付くと俺はアナスタシアに求婚していた。




