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44.いっぽうそのころ不染井は……(5)


 初公判が終了する数分ほどまえ――


 不染井桜の行動記録

 2332年 11月7日 午後9時29分


 斧使いの振るった一撃により、不染井の頭部は切断され、弧を描くように飛び、落ちた。

 死亡時の出血エフェクトは表現として残酷なので禁止されていた。

 代わりに白い花びらが吹き、舞いあがって、散る。

「まえにやったときよりも早かったな」細剣さいけん使い――いや、今は弓矢使いのウミヤマセが【プロペ】を操作しながら、言った。「ポイントつかないか……」

「まあ、三人がかりだしな」斧使いが鼻を鳴らす。

「てか、首斬れるんだ?」盾使いが指摘する。

 かつての『女尊男卑』の名残か、女性プレイヤーの残酷な死にざまは衆目にさらされないはずだった。

 はっとしたように三人が振り返る。

 不染井は五体満足――いや、左足首から先を欠損した状態で剣を構えていた。

「ウツセミの術かよ?」斧使いが小ばかにするように言った。「さすが、忍者」

 不染井の死体がうち捨てられていたはずの場所には、両断されたハヤブサ型があった。

 彼女が思念で呼びかけてみても、ハヤブサ型からは返事はなかった。

 身代わりになって死んでくれたのだろう、と、己の身に起こった『奇跡』をそう解釈して、彼女は、視界の左端に【プロペ】を三枚広げる。今までハヤブサ型が担ってくれていた状況把握をセルフで行なう設定に戻す。

「仕切り直しても同じだよ」盾使いが立ちはだかる。

「攻撃したら負けが確定するんだから」悠々と盾使いの後ろに隠れながら、ウミヤマセが言った。「無様ぶざまだろうがなんだろうが、シッポ巻いて逃げればいいのに」

 やな奴らだ、と不染井は思った。すでに彼女の右足首には透明化させた『足枷』がめられている。逃げられるわけがないのだ。こっちが気づいていないと内心あざ笑っているのだろう。業腹。とはいえ状況は最悪だ。一人ほふるのに全力を尽くさなくてはならない。その隙は、他の者にとって恰好かっこうの狙いどころとなるだろう。いや、全力出して一人倒せるかどうかすら怪しい。え、ウソ、私、また、こいつらに負けんの? 悔しすぎる。どうせならウミヤマセを狙おう、と決めた。そういえば去年の大会直前の合宿でこいつらと戦ってチームの調子が狂ったんだよなあ、そんで立て直せずに挑んだ本大会の結果はボロボロ。言ってしまえば因縁の相手。あれ、こいつらみたいなのを倒すために、『札』を選んだんじゃなかったっけ? 札だったら盾使いとの一合目は違ったはずなのに……。え? で、私、また負けて馬鹿にされるの? ただでさえ忍者の末裔ってことで不条理におとしめられているのに――と不染井の思考が濁流のようにめぐる。不思議なことに、彼女はそんな最悪の気分のなかに、小さじ程度のワクワクが混ぎれているような気がしてならなかった。

 ふっと息を吐いて、彼女は覚悟を決める。

 BGMは、セーウンの、静謐せいひつな曲に変えた。

 こちらから仕掛ける。

 不染井は三段跳びの選手のように、片足でぴょんぴょんと、これ見よがしに跳ねて近づいてから、一転、ブレードを松葉杖代わりにして速度を上げる。

 けれど直線では行かない。

 倒れこむように、足の裏を使わず、足の側面、甲やくるぶしで地面をこするようにして、不規則な、幻惑するようなスラロームで、盾持ちを迂回して、斧使いの左側から行く。

 低い体勢から敵の両足に斬りつけると見せかけて、寸前でジャンプ。飛び膝蹴りで頭を狙うと、相手はあらぬ方向を見ながらも、斧の側面で側頭部を防ごうとした。

 自動防御プログラムは武器以外の物理攻撃にも反応するようだ。

 膝が斧に触って硬直してしまうまえに、斧の直前に『パネル』を配し、そこへ膝をぶつけ、その反発力を利用し、あん馬から降りる体操選手のように身体を回転させ、斧使いを飛び越える。

 これに芸術点がつき、特別ボーナスとして左足の復元が許された。

 右足と切断されたままの左足首の『面』を揃えて、着地。その瞬間に左足を復元すると、あたかもゴムまりの上に飛び降りたみたいに全身のバランスが崩れた。

 あえてだ。

 そこで生まれたトリッキィな挙動を活かしつつ、背広を羽織るように身をひるがえし、今度はウミヤマセへ突っこむ。

 あからさまな胴払いを狙うと、彼は持っていた弓で防御しようとした。

 その反射速度から言って、もちろん、自動防御だろう。

 刃と弓がぶつかるまえにフィッシュテール。

 ガンブレードからそれまでの『速度ベクトル』が消失した。

 ブレーキ。

 急制動が掛かった。

 その状態でゆっくり、ほんの5センチほど、右手首で回転させたままのガンブレードを敵に近づけてみると、これにも自動防御プログラムは反応をして見せる。

 うっかりぶつけてしまわぬように、すぐさま右手をひっこめ、刃を右腕から肩や背中を伝わせ、左腕に送る。

 不染井自身には、どうやってそう操作したのかは分からない。イメージすれば、勝手に動くのだ。だから、思いどおりのタイミングで左手の中につかが収まる。

 不染井は柄を握るまえにウミヤマセへと斬りつけていた。彼の無防備な脇腹に向けて。

 ちょうど足りない長さを補足するようにガンブレードが届けられた。

 躊躇はしなかった。

 その一瞬の躊躇で、自動防御を間に合わせてしまったら、たっぷり5時間は後悔するだろう。

 『攻撃速度アップ』の固有技も使った。

 自分が出せる、計算上、最速の剣閃。

 完全に裏をついた形だったが、カン、と絶望的な音を立てる。

 防御されてしまった。

 ペナルティとして、不染井の全身が強制的に硬直する。

 攻撃のその瞬間まで、そっぽを向いていたはずのウミヤマセは、いつの間にかこちらに向き直り、弓を平行にして斬撃を押さえていた。

 ノーダメージ。今度はエネルギィすら吸い取れない。

 それどころか相手はちゃっかり、弓に矢をつがえた状態で防御していた。

 ただ、不染井の斬撃により、矢の先端は、わずかに彼女の顔から逸れていた。

 ウミヤマセが、グリグリと力を込めて、不染井の眉間へと矢の先を向ける。

 そのあいだに彼女の硬直も少しだけ緩んだが、あえて動かなかった。

 リリース間際に、矢の発射角度を変えてくることを考慮し、すぐには避けず、神経がヒリヒリするなか我慢して、敵の指が矢から離れた瞬間に、首をひねり、一か八かのスウェービングを試みる。

 見事にかわし切れたものの、盾使いに左手を撃たれた。

 親指以外の四指が痺れたが、それよりもマグマ色した、ガムのような粘着物が指に付着して、ガンブレードの柄が握れなくなってしまったのが厄介だ。

 得物は、撃たれた直後に、無理やり、フィッシュテールで右手に送り、難を逃れた。

 その際、首を経由させたのは、怪我の功名。回転したブレードが、背後から迫ってくる斧使いの姿を映した。

 不染井は気づかないフリをしつつ、もう一度刃で、斧使いとの距離を確認。ギリギリまで引きつけて、頭上から落とされた斧を『背面での真剣白刃取り』の要領で、右手だけでガンブレードを掲げ、受け止める。

 いや、受け流しに近い。

 斧が刃に触れた瞬間に、敵の力を利用して回転するように不染井は相手の懐に潜り、首を一閃――タイミングは完璧だったけれど、すでに斧が戻っている。

 またしても自動防御が成立。

 その硬直は射手たちの絶好の的だったが、先ほどの攻防の際、ひそかに斧使いの左腕に巻きつけておいた足枷の鎖を、仲間たちの射線から外れようと、あるいは追撃しようと、斧使いが知らず引いてくれたお陰で、不染井の身体は強制的に動かされ、射線がずれた。本来なら眉間と心臓を狙ったであろうそれは、左膝と右足くるぶしに着弾する。欠損はしなかったが、左足に刺さった矢は紫色に光ったまま、消えなかった。なんらかの『スキル』が使われたようだが、それを即座に解析してくれるハヤブサ型はもういない。仕方なく自分で検索。やはり『スイッチ式の痺れ矢』だった。トドメの一矢にこのような周到な仕掛けを入れてくるとは――と、不染井は、感心半分、嫌悪半分に思った。

「なんつー、け方すんだ、こいつ」斧使いは言い、腕に絡まった鎖を引っぱろうとしたが、不染井が鎖の『存在』を消すほうが速かった。

 被使用者に『逃亡不可』のデメリットをもたらす『足枷』は、その代わり、鎖を自在に操作できる権利を与える。実は、先ほども、斧使いの自動防御を遅らせようと、剣撃の際、不染井は、ひそかに彼の左腕に巻きつけておいた鎖を実体化させ、引っぱったのだが、左手の指が痺れて思うように力が入らなかった。

「俺が左手潰してなかったら死んでるよ、お前」

 体感時間を伸ばしたリプレイで、それを確認したのだろう、盾使いが斧使いに伝える。

「マジ?」

「そもそも武器いなされてからのカウンター、ドンピシャだったら、プログラム、間に合わないから」やはり、それを開発したのはウミヤマセらしい。「だから、遠目からやる」

 そう言いながら放たれた矢を、不染井は刃で弾く。銃弾や光弾と違って、思ったところに弾けない。盾持ちが放つ銃弾は、当たった瞬間、水風船のように弾け、ガムのように密着してしまうから、そもそも跳弾ができない。対策が練られている。

 ハヤブサ型が退場する直前に、ガンブレードの『放出』ならばプログラムを無効化してダメージを与えることができると教えてくれたが、そもそも刃を通してくれない相手では、エネルギィの奪取も一苦労だ。こんなことなら自傷でもエネルギィを吸えるようにしておけば良かった、と彼女は思うのだが、もう、後の祭り。設定を直すには、現在使っているガンブレードを一度放棄しなくてはならない。それでは、彼女のこれまでの苦労が水の泡だし、おそらくそうやって『自傷吸収』特性を付けた場合でも、引き換えに、なんかしらのデメリットが付与されてしまうはず――こういうのも『捕らぬ狸の皮算用』のうちだろうか、などと不染井にそれ以上の思案をめぐらす余裕はなかった。 

「つーか、終わらしていいよな?」斧持ちは彼女を見据えたまま、後方の仲間に尋ねた。

「あ、待って。どうせなら、エア、見たいんだけど」盾使いが言う。

「エアね」はいはい、という感じで斧持ちが応える。「バイ~ン、バイ~ンってやつね」

 盾使いは書籍型の【プロペ】を広げ、「ええと、『エアリアラーが、三次元挙動を実現するために用いるエアパネル――その踏み、蹴り跳ぶ音は、あたかも鉄製のサイの角にゴムまりが勢いよく当たる音に似たり』」と音読した。

「だから、バイ~ン、バイ~ンってことだろ?」

「音の問題じゃなくて」盾持ちは苦笑いしながら書籍型を消す。「見たいって話」

「いや、もう、見ても、変に痛々しいだけでしょ」ウミヤマセが言う。

「変に痛々しい、って」盾使いは、その語感が面白かったらしい。笑う。

「じゃあ、いいのね、終わらして」と、斧使い。

 不意に、左膝に刺さったままだった矢が輝き、不染井は、左足の感覚を失った。それだけではなく、重力もおかしい。まるで地面に足を吸われるような錯覚。来たか、と思う。最初に動いたのは盾持ちだった。銃口を向け、撃つぞ撃つぞと牽制けんせいしつつ、仲間の射手が不染井の後方に回り込む時間を稼いだ。そうやって背後からウミヤマセが放った矢は寸分違わず彼女の心臓を狙っていた。刃の反射でそれを察していた不染井は、仕方なく右手の剣を背中側に回して防いだ。その隙に斧使いがこちらに接近してきた――かと思うと、すでに横ぎのモーションに入っている。斧使いの、この速度だけは異様に速い。世界レベルの動き。さらに言えば、手負いに対しても三人がかりの入念な崩しだ。斧使いは全身に光をまとっていた。いわゆる『必殺技』というやつだ。腕力差からかんがみて、下手にガードしようものなら、刃ごと真っ二つにされるだろうし、いつものように受け流そうにも、痺れた足がつっかえ棒のように固まり、言うことを利かない。これはダメかな、と不染井が覚悟を決めたとき、視界の後方左側から、ぬっと何かが現れた。

 次の瞬間、巨大な斧が眼前を過ぎ、ガンブレードが地面に跳ねる。重厚な金属音が響く。

 不染井は、無事だ。

 ただ、彼女の右手首に黒い線状のあとがついている。

 斧による斬撃の痕だ。

 致命傷ではなかったので切断されなかったようだ。

 けれど、右手の感覚はない。

 まるで落雷したみたいに痺れが持続している。

「つか、首狙うだろ、フツー」不染井の背後から声がした。BGMと、絶妙に共鳴した。

 はっとして不染井が、自由の利く上半身だけ振り返ると、サムライ型がいた。

 先ほど彼女の視界左側から現れたのは、サムライ型が持つ刀だと知れた。どうやら不染井の首をかばってくれるつもりだったらしい。けれど、斧使いの狙いは右手首だったから、なんとも微妙な登場と相成あいなったわけだ。

「趣味悪いな、なぶるつもりかあ」サムライ型がまた言う。

 そんな彼の声に、【エコー・エフェクト】のような、電子ピアノめいた特徴的な響きが混じっているのが、不染井には感じ取れた。

「……え、セーウン?」彼女は国内唯一のポップスターの名前を口にした。「なんで?」

 三人組は「誰? 誰?」と内々で話していた。驚くことに誰も彼を知らないようだ。やがて特定を諦めたのか、斧使いが、「なるべく報酬、貰いたいもんで」と、投げかけられっぱなしの問いに答えた。

「ウソつけ」サムライ型――セーウンは吐き捨てるように言った。「現役の代表、完膚なきまでにぶっ潰した姿晒して、代表選考に一石投じようってハラだろうが」

「違うよ」盾使いが気持ちの入っていない声で返答した。

「あー、そっか」セーウンの声は笑い声すら心地よかった。「それ、俺だ」なははは、と笑う。「逆の展開を想定してるんだけどな」

 次の瞬間、セーウンは、スピードスケートの選手みたいに前屈みに構えていた。居合いあいの構え。不染井にすら、彼がいつ納刀したのか気がつかなかった。「来いよ」

「いやいや、そのまえに、なんでアンタ、俺らの戦闘に割り込めるの?」背筋を伸ばしたままの斧使いが言う。「助太刀? え、ああ、もしかして、サムライだから?」

「サムライ固有スキル『義によって助太刀いたす』」セーウンの全身が光り、ぴかん、と音がした。スキルが発動した際に現れるエフェクトだ。「そのまんま、義によって助太刀いたす、と宣言すれば、無条件で他人のバトルに参戦できるスキルで――」

「え、いつ言った?」斧使いがさえぎる。

「今」事もなげに、セーウンが答える。

「いやいや、そのまえから、助太刀してたでしょ?」

「サムライ固有スキル『影腹』」またサムライ型の全身が光る。「本来果たさなければならない条件を先送りにして、強権的にスキルを発動できるスキル」

「うわ、やべ、こいつ、なんでもありだぞ」斧使いがはしゃぎ、仲間たちに振り返る。

「俺ら相手にやるつもり?」盾持ちは落ち着いたものだった。

「サムライ固有スキル『義を見てせざるは勇なきなり』」また光る。「俺だって、ホントはやりたくないの。こんな水差すようなことさあ。でも、まあ、しょうがねえだろ?」

「意味分かんないけど、この人倒さないと、不染井さんにダメージ通らないみたい」

 【プロペ】を広げていたウミヤマセが仲間たちに告げる。

「サムライ固有スキル――じゃねえ、特殊スキル『一蓮托生』って……、畜生ーっ!」やはり光る。「誰がつくったんだよ、こんなの」うんざりした口調で言い、「まあ、いいや、来いよ」手招きする。「刀のサビにしてやるよ」と言うと、また光った。

「もう、しゃべんな、てめえは! 面倒くせーやつだなあ……」斧使いは怒鳴ってから、仲間のほうへ頭を傾けた。「どうする?」

 そんなやりとりのあいだにも、またサムライ型が光る。一度だけではなく、何度も。

「だからやんなって」うんざりしたように斧使いが言う。

「だから勝手になるんだって!」セーウンは怒号で応えた。「時限式のスキルが発動してんのっ!」最後は、なんだか泣きそうな声のように、不染井には聞こえた。

「こいつ、マジで際限ねえぞ……」斧使いは、いらだちと困惑の混じった声で言う。

 セーウンの発光は、ピカッという瞬間的なものと、ピカーと長めに光るものの二種類。

 ピカッ、ピカー、ピカー、ピカッ……、と、モールス信号で――

「『タ……ス……ケ……テ』じゃねえんだよ、この野郎、てめえ」

 と、斧使いが叫ぶ。「自分でやってんだろが」

「だから知らねえっつってんだろ!」セーウンがそれ以上のテンションで叫び返す。

「いや、知らないのは、おかしいでしょ」盾持ちが冷静に指摘する。

御託ごたく並べてんじゃねえよ」一転、落ち着いた声でセーウンが言うと、ピッカー、と先ほどとは違う和音を鳴らして光る。

「ほら、またあ。『御託』で、なんか反応したよ」疲れたように斧使いが言う。

「あー、もう、いいから早くかかってこいよ。長丁場になればなるほど、引くほどこっち強くなるから、つまんなくなるんだよ」

 その挑発を受け、斧使いが一瞬、飛びかかるような気配――これは真実、気配だけだったのだが、セーウンは「おーし、来いやー」と反応していた。「本当の『なんでもあり』を見せてやるよ」

 いつの間にか彼は、鞘から刀を抜いていた。その抜刀の瞬間もやはり不染井にも見えなかったが、彼女は内心、『この人もチューリング病だな』と認定を下すところだった。

「いや、やんない」ウミヤマセは、得物を消し、開いた両手を顔の高さまで挙げた。降参のポーズ。戦闘終了。不染井の足に繋がった鎖もガラスみたいに砕け散った。半分まで減じていた体力も90パーセントまで回復し、身体の各所に生じていた異常も解消される。

「ああ?」セーウンは心底つまらなそうだった。「なんだよ、興ざめだよ、死ぬか殺されるかしろって」

 いやいやいや、とウミヤマセは笑う。「サムライにプログラムは効かないからね」

「俺たちはよお、あんたらがバトルカップに出ねえから、プログラム、アピールしてんだぜ?」斧使いは馴れ馴れしい口調でセーウンに近づいた。「プログラム最強。でも、プログラム効かねえサムライはもっと最強って」

「そんな数式みてえに、分かりやすいもんかよ」

 セーウンは、もう納刀していた。「あと、教えてやるけど、サムライに降参とか関係ねえから。裏スキル『斬り捨て御免』で、両手挙げてる奴も一方的に攻撃できるから」

 慌てて身を退いた斧使いを見て、セーウンが鼻を鳴らすように笑う。

 斧使いはかつがれたと思ったようだ。「くっそ、ウソかよ」そう悪態をつく。

「まあ、後味悪いから、滅多にやらねえんだけどな」とセーウン。

「ウソじゃないのかよ……」盾持ちがため息とともに言った。

 不染井はウミヤマセの視線に気づいた。その薄い唇が開かれる。

「またヘタに忍者が出て、しょうもない結果だったら、日本の恥だよ」

 彼は闇に溶けるように消えた。

 その独特な退き方は忍者のそれだった。 




次の投稿は、祝日なので、早めに、午前6時を予定しております。

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