23.Q&A
INSERT // 『当方』による割り込みが入りました。
『当方』は、『貴方』がこの24世紀世界をより深く理解するために適当だと思われる質問サイトを見つけましたので、部分的に抜粋し、提供いたします。
ただ、その内容は『貴方』に課せられた『事件解決』に、ただちに役立つものとは思えません。参照するしないは『貴方』の意思に委ねますが、『Q.10~Q.16』のパートは、『貴方』が抱いているであろう疑問を解決するものなので、ぜひご覧下さい。
Q.1
【TEN】とは、なんですか?
A.1
『擬似神』の二つ名を冠する、成長型人工知能群のことじゃ。
【TEN】が人類にもたらした恩恵、その白眉は、『異軸世界』を創世し、そこに移住させることによって、人類をあらゆる問題・不自由さから解放したことじゃろう。
それと、擬似原子たる【マシン】の発明も見逃せないのう。
これを生成・管理・運用することにより、人類のさまざまな要望に応えておる。
Q.2
『異軸世界』ってなんすか?(笑)
A.2
『ベース』となる世界とほぼ同座標じゃが、『軸』が違うため、互いに知覚・関与できない世界のことじゃ。
ちなみに、主な異軸世界は――
『今、人類が住んでいる24世紀の地球』
『かつて人類が住んでいた21世紀までの地球』
『バトル世界』
『石の空間』
などじゃな。
人類は、【TEN】の管理のもと、どの異軸世界にも自由に行き来できるが、『持ち込み』や『持ち出し』は、ほぼ禁止されておる。
Q.3
てことは、もともと人類が住んでいた地球といまの地球は違うの?
A.3
そのとおり、違う。
西暦2099年、【TEN】の登場と共に移住案が提示され、翌年の2100年1月1日、人類はそれに従ったわけじゃ。
そのため、ビフォア・アフタを用い、かつての世界を『地球B』、今の世界を『地球A』と呼び分けたりもする。
Q.4
なぜ移住しようと思ったの?
A.4
端的に言えば、ヒトが住むのに、当時の地球環境は相応しくない、と判断されたからじゃ。
もちろん、そう判断したのは21世紀の人類じゃよ。
そもそも、もともとは、天罰じみた当時の地球環境に辟易した人類が火星に移住しようと、そのプランニングを人工知能群に依頼したのがキッカケじゃ。思いのほか『彼ら』は優秀での、『彼ら』が提示した異軸世界の創世のほうが火星移住よりもメリットが多く、かつ、デメリットが皆無でのう、採用されたわけじゃ。
Q.5
移住には、全人類が従ったの?
A.5
従った、とされる。
それくらい当時の地球環境は酷かった――と考えていただきたいのう。
少なくとも、2332年現在、『地球B』には『定住』している人類はおらん。
観光客はいるがのう。
Q.6
なにを観光するの?
A.6
地球Bには2100年の『人類大移動』以来、手つかずの状態じゃ。
その観光価値は言うまでもないと思うがのう。
まあ、とはいえ、地球A上で完璧に再現できるのじゃがな……。
ただ、手つかずと言ったが、【TEN】が【マシン】を用い、状態を保全しているから、ジャングル化などはしておらん。先達がつくった歴史的な建造物もメンテナンスされておるから、表現が正しいかわからんが『ぴかぴか』のままじゃ。【マシン】により、排熱や気候は操作されておるし、噴火や地震の影響もかなり軽減されておる。動植物も元気に理想的な生態系を営んでおるぞ。
それと、地球Bでも『泥棒』や『破壊行為』など各種犯罪行為は禁じられておるが、一部【TEN】が設けたポイントで木材や石、金属などを採取して、地球Aに持ち帰ることは許されておる。細菌・ウィルスを含めた動植物を持ち出すのは禁止じゃ。
Q.7
どうして【TEN】という名前なの?
A.7
設計コンセプトが『人類を等しく害することなく』『空気を読み』『成長し』『対話を唯一の解決手段とする』『寛容な』『人工知能群』であったことから、当初はそれら特徴を示す単語の頭文字をムリクリに並べ変えて『ゴッド』や『デウス』などと呼称されたんじゃが、あまりにも明け透けなので、現行版へのバージョンアップを機に【TEN】と改名された――ようじゃ。
命名の由来は、『NETのアナグラム』とか『ヒトを1としたときの10段階目の進化だから』などと言われておるが、実際のところ、不明じゃ。【TEN】自身がそう名乗った、との説もあるのう。
一説によると、人類を赤子とみなして、『それを無条件で愛し、なんでも献身的にやってくれる万能的存在』という意味で、『mama』という命名案もあったのじゃが、一部で「差別的」との意見が挙がり、取り下げられた。
このあたりの感覚は我々24世紀の人間には分かりにくいかのう。
今の時代、ご承知のとおり、『母親』とは役割の名称であって、男でも女でも母親になれるからのう。
Q.8
そもそも、どうして【TEN】による管理社会が成立したの?
A.8
それは、もちろん、人類による管理社会に構造的欠陥があり、その運営が限界を迎えたからじゃ――という答えは詭弁に聞こえるかのう?
いや、実際のところ、当時の人々は疲弊しておった。自然災害、異常気象、エネルギィ問題、情報過多に人間関係……、とかく『面倒』な世界じゃったからな。面倒だから『神様』をつくって、そちらに責任を丸投げしたのじゃ。
同語反復になるが、そうでもしないとやってられない、逼迫した状況だったんじゃな。
Q.9
てか、そんな凄い【TEN】を誰がつくったの?
A.9
もともと【TEN】の前身となる人工知能群は、電子ネットワーク管理のために発明されておった。21世紀前半には、すでに、ひな型があったんじゃ。
まあ、アーティフィシャル・デバイスや、個人識別のために『ログインID』やら『パスワード』やらを要していた、古の時代じゃな。
当時の科学でも、いわゆる、『発達しすぎたコンピュータによる反乱』というのは、メカニズム的に起こらないのは分かっておったからな、人工知能群には自由に学習させたのじゃ。まあ、念のため、リミットを設定していたらしいがのう。
さて、稼動数十年もすると、クラウドの顕在化、個人データの完全隔離化――要するに『ひとつのスマホ・デバイスを複数の人間で使い分けられる』などという芸当も可能となったのじゃが、この利便性が人類の目からウロコを落としたようじゃ。コンピュータ史的には、この一件が人工知能群にさらなる権限を与えることをなし崩し的に許した契機と理解されておる。
これにより、実質上コンピュータウイルスが無効化され、多くのクラッカーが廃業した。逆に言えば、この時代はクラッキング行為による被害が看過できるほどではない、深刻なものになっていたとも言えるのう。なにしろ21世紀は一人に1台、盗聴盗撮デバイスを所持していた時代じゃからのう。今と違って、【TEN】に依頼し、見せたくないものを完全に秘匿する――なんて方法はないからその被害は深刻じゃった。ま、今に生きる我々には分からん悩みじゃ。『パンチラ』とか分からんじゃろ? なに? そもそも、なぜ盗撮するのか、その意義が分からないとな? 達観しとるのう……。
いや、すまん、話が逸れたのう。
ということで、【TEN】をつくったのは誰か、という問いに対する答えは、『そのひとつまえの世代の人工知能群』じゃ。もちろん、それをつくったのは、その、もうひとつまえの世代の人工知能群、さらにそのまえは――とな。人が開発した『原初の自考式人工知能群』が人の手を離れ、次々と代替わりをしていった結果、【TEN】が生まれたというわけじゃ。
ちなみに、これ以上の進化を【TEN】は拒んでおる。その理由を、『充分であり、ひとつの限界だから』と説明しているが、この真意を、ただしく理解できる人類は存在しないと予想されておる。
Q.10
21世紀の人間を再現した人工知能をつくったのですが、彼に「お前、変な名字だな、ホントに日本人か?」と訊かれました。これは、いったい、どういうことでしょうか?
A.10
質問の意図が今ひとつ、はっきりせんので、こちらで勝手に解釈するぞい。
『21世紀の人間から見れば、現代人は、当時では考えらない、変な名字が多い、それはなぜか?』ということじゃろうか?
わしら24世紀に生きる人間は、戸籍法が成立した明治時代にまで遡って、直系の人間が使った名字に変えることが許されておる。それら名字は【TEN】が一覧にしてまとめてくれるので、容易に変更することが可能じゃ。夫婦別姓どころか親子別姓も珍しくない時代じゃ。成人を契機に変える人間が多いように見受けられるのう。さて、下の名前は、もっと自由に変更できるのじゃが、する人間は稀じゃ。名字と違い、親が付けてくれたものじゃからかのう。
――と、これで納得してもらっては困るぞ。先の説明では、変てこな名字であることの理由になっておらんからな。
実は、名字変更の自由化がなされたのは23世紀初頭なのじゃが、その法律施行と同時に、一人にひとつ、『特殊名字』を設定することが許されたのじゃ。
特殊名字とは、申請した当人は使えないが、その子孫が名乗ることが許されるオリジナルの名字でのう。施行当初は、主に20世紀後半から21世紀ぐらいに『ヒト』の手によってつくられた漫画やアニメ、小説などの創作物に出てくる名字が人気じゃった――が、じきに、祖先の出自を暗示するようなカスタマイズされた名字が増え、24世紀現在、エントリィされる特殊名字の主流となったようじゃ。
ちなみに、これはちゃんと民法で定められていることじゃからな、日本国籍を有する者にしか適用できん。よって、『あんた、ホントに日本人か?』に対する模範解答は『少なくとも、国籍上は、日本人です』じゃ。
まあ、【TEN】の出現で、戸籍管理がスムーズになったことがこの闊達な名字変更の動きに繋がったのやもしれんのう。
Q.11
どうしても地球A上でセキュリティが掛かった空間に入りたいのですが、何か方法はありますか? 異軸世界を使えばなんとかなりそうな気がするのですが……。
A.11
おそらく文脈からして、【TEN】が管理しているセキュリティじゃな?
なら、答えは簡単じゃ。
ない。
異軸世界を介しても無理じゃ。諦めよ。
Q.12
殺人行為を許されているのは、間違いなく『ヒト』だけですか?
A.12
いや、可能という意味では、殺人行為は、細菌やウィルスなどを含めた『生物全般』に許されておるが、この地球Aにはヒト以外の生物がおらんからのう。心配は無用じゃ。
地球B観光中は『客であるヒト』には『安全プログラム』の適用が強制され、同じ『観光客』や『地球Bの住人』からの攻撃や高所から足を滑らせるような事故は無効化される。ゆえに、死なん。文字どおり、『夢みたいな世界』じゃ。
Q.13
人をつくる方法は?
A.13
『内外』問わず、受精だけじゃ。
ただし、自己複製は禁じられておるので二人以上の遺伝情報が必要となる。
当然、赤子の状態で生まれてくるぞい。
Q.14
赤子が人を殺せるまでに成長するのに最短でどれくらいの日数を要しますか?
A.14
なにやら物騒な話じゃが、法律がある。
日本では18才未満は殺人禁止じゃ。
Q.15
日本のなかに、日本ではない場所はありますか?
A.15
飛び地はおろか、今の時代、大使館すらないからのう……。
答えは『ない』じゃ。
Q.16
それぞれ異軸世界のルールは違うの?
特に刑法関連のことを知りたいのですが?
A.16
質問者の意図をどうにか汲んで、一覧化してみるぞ。
『地球A』 → 殺人以外の犯罪行為は【TEN】により未然に防がれる。
つまり、殺人行為は許される。
ただし、殺人行為に広義ロボットを使ってはいけない。
【TEN】は、人類の捜査に関知しないが、
死体や遺留品などから、個人の識別は行なうし、
【エイリアス】を無条件で貸与したりする。
『地球B』 → すべての犯罪行為は禁じられる。
『バトル世界』 → 痛みの生じない『体感型』のゲーム世界であるため、
とくべつ禁じられている犯罪行為はないが、
すべての年代の、あらゆる性別のプレイヤが
安心して遊べるよう、倫理的な配慮から、
できない行為は存在する。
殺された(倒された)場合、ゲームオーバとなり、
地球Aに強制送還される。
『そのほかデザインされた異軸世界』 → すべての犯罪行為が可能。
だが地球Bに戻ると、記憶を含め、
すべてが『なかったこと』になる。
『夢』のような世界である。
『当方』は、『貴方』がこのページから離脱する意思を確認しました。
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