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異世界嫁ごはん ~最強の専業主夫に転職しました~  作者: 九重七六八
第9話 嫁ごはん レシピ9 鮎の魚醤たれ、ぶっかけレモン汁唐揚げ
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ジョセフ無双

またバトル展開? そろそろ飯だろという突っ込みにごめんなさい。

次回からです。それまでお腹を減らしておいてW

それにしても、混雑で2回も投稿できず。消えました。勘弁してくれ~。

「ぐわっ!」


 侯爵の叫び。リーゼルは目にお茶が入ってパニくっている侯爵を部屋に残して、猛ダッシュで部屋を出る。案内された時に玄関へのルートは把握している。驚く使用人たちを尻目に駆け抜けるリーゼル。

 途中、ドレスが邪魔なので、裾を引きちぎった。大きな玄関扉を開けると外へ飛び出る。だが、馬車は用意されていない。屋敷から逃げ出したものの、広大な敷地内から走って逃げ出すには、リーゼルはお姫様過ぎた。


「そ、そんな……」


 リーゼルは外へ出たところで、屋敷の警備兵に取り囲まれた。侯爵の私兵である。これで益々、侯爵の素性が疑われる。侯爵といえども、ローズベルト侯爵は領地を持たない。政府の役人の収入だけで、私兵とこれだけ広い屋敷を維持できるわけがない。


(やっぱり、侯爵は裏で何かをしているに違いないわ……)


「お嬢さん、そこまでですよ!」


 3人の警備兵がジリジリと近づいてくる。絶体絶命のピンチである。


「誰か助けて!」

「リーゼル様!」

 

 ビシッっと3回連続で音がして、3人の警備兵が一瞬で倒れた。何が起こったのか理解できないリーゼル。一撃で警備兵を倒した男。見覚えがある人物である。


「ジョ、ジョセフさん」

「リーゼル様。二徹様、ニコール様のご命令で後をつけさせていただきました」


 そう現オーガスト家の家令はクールに頭を下げた。油で固めた白髪のオールバックから、先ほどの戦闘で乱れたのか、一本だけがポロリと前髪に垂れている。


「お、お兄様とニコールさんが……」

「二徹様はサヴォイ家の復興は所々の事情で困難であることを知っておられました。そして、そのことでリーゼル様が危険な目に遭うことを恐れていらっしゃいました。リーゼル様の行動は、このジョセフ。逐次、二徹様とニコール様にご報告しておりました」


「ジョセフさん、黙っていてとリーゼが頼んだのに……」

「私の今の主人は二徹様とニコール様です。お察しください」


 三人の警備兵を倒したものの、次々と屋敷から飛び出してくる。その中の数名は、銃まで持ち出している。


「二徹様は、リーゼル様は少し痛い目を見ないと分からないだろうとおっしゃっておりまして、ここまでリーゼル様を自由にさせておりましたが。まさか、このような大物が出てくるとはさすがに予想しておりませんでした」


 そう言うとジョセフは近づいてきた警備兵を華麗な動きで退けた。それは東洋の武術。拳法と呼ばれる徒手空拳の武術である。目に止まらぬ拳の技と年に合わない蹴りで近づく警備兵を次々と倒す。


 いつも静かに佇んでいるだけの老人かと思っていたリーゼルは、ジョセフの無双ぶりに呆気にとられる。思えば、ジョセフはサヴォイ家の没落の折に、兄を守って逃亡した男である。ただの家令であるはずがなかった。


「ご令嬢には当てるな、撃て!」


 太った侯爵がやっと外に出てきた。胸元はリーゼルがぶっかけたお茶で赤いシミを作っている。侯爵の命令で三人の狙撃手が銃を放つ。だが、信じられない光景を目にする。ジョセフに向かった銃弾は、全て弾かれたのだ。


「嘘だろ!」


 ジョセフの長袖シャツは破れて、両手首に金属製の武具が装着されているのが見えた。信じられないことに、この両腕の金属部分で弾丸を弾いたのだ。


「単発で初速も遅い旧式の銃。銃口を見れば弾くのは容易い」


 クールに言ってのける家令。


(いえいえ、ジョセフさん、それは達人レベルしかできない技ですわ!)


 心の中でツッコミを入れるリーゼルであったが、そのジョセフの足元に何かが転がってきた。その瞬間に爆発が起こる。


 リーゼルとジョセフは吹き飛ばされて地面に転がった。かろうじてジョセフがリーゼルを守るように覆いかぶさったので、リーゼルは転がっただけで済んだが、ジョセフは背中のシャツが破れて、血と泥で汚れている。


「おおお……間に合ったか、3人衆よ」


 ローズベルト侯爵が視線を向けたのは、いつの間にか現れた三人の人間。一人は大きな大男。身長は軽く2m超えている。ハゲ頭に血管が浮き出た野獣のような風貌の男だ。むきだした歯は銀色に光り、尖ったマウスピースをはめている。さらに手にしている武器は原始的な棍棒。それも巨大でリーゼルと同じ長さはある。


「ゴブ……オイラが来たからにはゴブ……逆らうやつはミンチだゴブ……」


 頭の悪そうな話し方だ。そんな巨体の男を冷ややかに見つめるのは、目を閉じた若い剣士。長身でしなやかな体躯をもつ男だ。なぜか、二本のサーベルを両手に持っている。寡黙なのか、一言も喋ろうとはしないが、胸の病気か時折、小さな咳をする。


「グフグフ……。わての爆弾は痛いでっせ……死なない程度に威力を弱めてますから。グフグフ……」


 変な話し方をするのは、ジョセフに向かって爆弾を投げた男である。リーゼルよりも身長が低い小男だ。猿のような狡猾な表情でにやりと笑い、両手に手作りの爆弾を握っている。驚いたことに小男の全身には爆弾がくくりつけられている。爆弾は威力が調整されており、目的に合ったものを使用するのだ。


「巨人兵パウエル、電光石火の二刀流のエレン、そして爆弾魔ハーベイ。その男を始末して、その娘を捕えろ」


 侯爵はそう命令を伝える。3人の男たちはゼーレ・カッツエから借り受けた手練の暗殺者である。高い金で雇ったプロなのだ。



「わかったで、ゴブ」

「……ケフケフ……」

「グフグフ……侯爵閣下、この娘、上玉でっせ。それじゃ、捕まえるとしますか」


 三人の男が一斉に襲いかかる。爆風を受けて背中に怪我をしたジョセフであったが、すぐさま、反撃に移る。巨大な棍棒の一撃をかわし、腹へ数発蹴りをお見舞いする。


「ゴブううううっ……」


 強烈なダメージに腹を抱えて膝を折る大男。さらに、二刀流の青年の剣戟を両手の防具で受け止める。反撃の蹴りはかわされたが、数メートル後退させる。


「きゃあああっ!」


 リーゼルの叫び声。隙をついて爆弾魔の小男がリーゼルの手首を掴んだのだ。爆弾魔ハーベイは慣れた手つきで、リーゼルのお腹に一発当てる。


「うっ……お、お兄様……」


 軽い衝撃であったが、それだけでリーゼルは気を失ってしまった。


「リーゼル様!」

「グフグフ……。おっさん、これで散るがいい!」


 さらに小男はジョセフの足元へ爆弾を投げる。短い筒状の爆弾が転がってくる。短い導火線の火がチリチリと進んでいく。


「リーゼル様!」


 小爆発。音と白い煙が辺りを覆う。


「ゴブ……殺ったか?」

「グフグフ……強ええジジイだったな」

「……ケフケフ……」


 三人が警戒して近づいたが、煙の消えた後にはジョセフの姿はなかった。


「木っ端微塵になったでゴブ?」

「グフ……いや……あのジジイ……逃げやがった」

「ば、馬鹿者め。これで逃げるしかなくなったではないか!」


 そう激怒するローズベルト侯爵。リーゼルを助けに来たということは、オーガスト家の回し者に違いない。そして、あの強さだ。きっと、軍の組織か、衛兵警備隊の出身に違いない。ローズベルトがやって来たことが明るみに出る可能性がある。


「仕方がない。もう少し集めたかったが、いずれは露見すること。兼ねての手はず通り、外国へ逃亡することとする。その娘は手土産だ。その美貌なら高い値段がつく。傷つけるなよ」


侯爵はそう命じた。目指すは港である。


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