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異世界嫁ごはん ~最強の専業主夫に転職しました~  作者: 九重七六八
第4話 嫁ごはん レシピ4 サルサバーガーとツナサンドウィッチ
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王女様の危機

終電に間に合いましたが、10時投稿に間に合わず。ごめんなさい。

「あ、あれはペルージャ王女だ」

「間違いない、まさか本当にこんなところにいるとは……」

 

 2人組の男が屋台でハンバーガーを食べる美少女を見とがめた。反国王派の下級隊員だ。格好は町人と同じ格好。ズボンに革ブーツ。前裾の短い上着。その辺を歩いている人々に溶け込んでいるので怪しまれることはない。主力部隊は平原で王女の拉致任務を行っている。彼ら2人は他の3人と共に幹部の一人に命じられて町を探索していたのだ。いくら幹部の命令とは言え、王女なんているわけがないと思っていたから、2人とも驚いてしまった。


「いいか、都は広いが探索エリアはそれほど広くはない。王女や貴族の令嬢が喜びそうな場所。広場や市場、商店街を中心に巡回しろ。特に昼時は人気の店や人だかりの集まる場所へ行け」


 そう仮面を付けた若そうな幹部は命じた。報酬もそれなりあるし、平原に向かった部隊よりも安全であるから、男たちはこの任務は悪くないと思っていた。だからこそ、万が一にも王女なんていないだろうが、その低い可能性でも起きて欲しくはないと思っている。それなのに昼時で食事をしようと市場をうろついていたところ、美味しそうな匂いと人だかりにつられてやってきて、大変なものを見てしまったのだ。フードを被って変装しているが間違いなくターゲットの王女とその友人の伯爵令嬢だ。何度も肖像画で見たことがあり、間違いないと2人は思った。


「なんでここにいるんだ?」

「おそらく、平原の方が罠なんだ。俺たちはいっぱい食わされたらしいぞ」


 2人のうち、一人は少しだけ知恵があった。状況からそう判断したが、もうひとりの方はあまり賢くなかった。


「そんな馬鹿な。宮廷の内通者の情報だろう、間違うはずがない」

「だが、あれは間違いなくペルージャ王女だ」

「どうする?」

「どうするって、言われたとおり、あの覆面男に知らせればいいのだろう」


 そう言って少し知恵のある男は、幹部に言われたとおりの行動をしようとした。だが、あまり賢くない男がそれを制した。


「俺たちでやってしまおう。あんな不気味な野郎に手柄をやる必要なんてないさ」

「だが、それでは命令に背くことになる」

「ふん。言ってろ。これは大チャンスだ。あの王女様を俺たちで捕まえたら、恩賞は莫大だぞ。これはチャンスだ。見たところ、護衛もいない」


「……そ、そうだな。やるか……」


 男はポケットに忍ばせたナイフを取り出す。そして人ごみをかき分けて王女たちに近づく。ごった返しているので護衛のシャルロット准尉も気がつかない。気がついたのはハンバーガーを焼きながら、客をも見ていた二徹。不審な男が2人、人ごみの中をかき分けて進んでくる。


(あいつら、客じゃないな)


 二徹が男たちから感じたのは殺気。そしてそれは現実となる。懐からナイフを取り出すのが見えたのだ。どうやら、目の前の女の子がターゲットらしい。確かにお忍びらしくフードで頭を覆った美少女二人である。ハンバーガーを食べる姿を見て、これは普通の人じゃない、訳ありとは思ったが、これはとんだ事件に発展しそうだ。女の子たちの安全もあったが、店先で騒ぎを起こされると非常に迷惑である。


 二徹はフライ返しで、鉄板の下の炭を2つすくった。それを手首をひねって高速で放った。熱の塊は2人の男の右手を直撃する。まさにナイフを握った手だ。


「熱!」

「ぎゃっ!」


 カシャーンと地面に落ちるナイフ。地面は石畳なので、金属が打ち付ける硬い音が響く。二徹の目的はそれだけで十分であった。その音と同時に警戒にあたっていたペルージャ姫の護衛が行動を開始したからだ。護衛の男は巨体でまるでゴリラのような立派な体躯であった。軽く一人の男の襟首を掴んで持ち上げる。


「な、何をする!?」

 もう一人の男も同時に掴まれている。

「馬鹿な、なんて力だ!」


 暴れるがビクともしないゴリラ男。もう分かるであろう。ニコールが王女の護衛に付けた頼れる部下。カロン軍曹だ。他にも腕自慢の彼の分隊の兵士が3名ほど私服で混じっている。


「順番に並べや、行儀の悪い奴だ!」

「ちょ、ちょっと!」

「わーっ!」


 強烈な力で人ごみから、引きずり出される2人の男。密かに護衛をしていたカロン軍曹である。腕っ節の強いカロンは、2人を引きずり出して、物陰に投げ飛ばした。注文の混乱で他の客はこのもみ合いに関心がない。それを幸いにカロンは、他の護衛の兵士と共にこの男たちを縛り上げる。ナイフを隠し持って王女に近寄ったところを見ると、反国王派のメンバーに間違いない。


「全く、危ないところだった」


 カロン軍曹はいち早く敵を確保することができて、ほっとしていた。本当は二徹がいち早く気がついて行動を起こさなければ、もっと大変なことになっていたが、当のカロンは気がついていない。それほど、二徹の攻撃は人目に触れず、正確なものであったのだ。


「お嬢様、そろそろお帰りの時間ですよ」


 こんな事件があったとは気づかず、シャルロット准尉はまだ遊び足りなそうな二人の貴人を説得してる。いかに平民の娘に化けていても長時間滞在すれば、ペルージャ王女の正体に気づく民衆も出てくるだろう。反国王派でなくても、身なりのよい王女たちに邪な考えをもつものが出てくる可能性もある。


「もう少し遊びたいのですけれど……」

「お嬢様。またいつか遊びに来られますから。これ以上は私が隊長に怒られます。後は王宮でお茶にしましょう」


 渋々ながら王女たちは納得したようだ。シャルロット准尉に連れられて、待機してあった馬車へと移動を始める。それを満足そうに眺めているカロン軍曹。あとはこの馬車を護衛して王宮まで送るだけである。


(隊長、任務完了ですぜ)


 王女にわずかな危険も感じさせてはならないと隊長ニコールからキツく命令されていたカロン軍曹。王女たちが無事に馬車に乗るのを見届けると、そう遠くで奮闘しているであろう自分の隊長に心の中で報告した。隊長は美しく可憐な容姿にかかわらず、部下に対しては基本的に厳しいので、カロンとしては命令が守れてよかったと胸をなでおろした。

 

 だが、それは少しだけ早かった。カロン軍曹が馬車の御者が違うことに気づいた。灰色のマントを頭から被っているのは同じだが、少しだけ体の大きさが違う。


「おい、お前は誰だ?」


 カロン軍曹は御者の男の肩に手をかけた。その感触が明らかに違うと思った瞬間。鋭い裏拳がカロン軍曹の顔面にヒットした。強烈な一撃で朦朧とするカロン軍曹。ニコールの関節技の前に破れたことはあるものの、通常のけんかでは負け知らずの腕っ節の強さを誇るカロン軍曹がたった一発で崩れ落ちた。気を失う瞬間、殴った男の腕に2匹のムカデ模様の刺青を見た。


(あれは……二千足の死神……)

「分隊長どの!」


 慌てて駆け寄った5名の兵士も一瞬で殴り倒される。あまりの手際の良さに馬車に乗ったシャルロット准尉も気づいていない。王女たちの接待に集中していて、カロン軍曹と護衛の兵士が無力化されたことを知らない。やがて、馬車は静かに動き出した。


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