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異世界嫁ごはん ~最強の専業主夫に転職しました~  作者: 九重七六八
最終章 嫁ごはん レシピ00 カキフライとマグロのヅケ丼
252/254

サヴォイ伯爵誕生と二世誕生

ついに本日、完結。

 ウェステリア王宮では先のワーテル会戦の祝賀会が開かれていた。大陸派遣軍の総司令官レオンハルトは元帥になり、公爵に叙せられた。国王エドモンドは最近結婚したエステルを王妃とし、この華やかな叙勲式を行っている。


「ニコール・オーガスト夫妻」


 侍従に呼ばれて、ニコールと二徹は国王の前に出た。ニコールは既に少将に昇進していたが、今は将軍の軍服でなく、白いウェディングドレスを着ていた。傍らの二徹はこれまた白い礼服を着用している。これは国王夫妻から贈られたものである。


 二徹とニコールは腕を組み、静かに国王の前まで歩いた。そして腰を落とし、頭を垂れた。


「ニテツ君、ケガの具合はどうだ」


 そう小声で国王は尋ねた。王妃のエステルも心配そうな顔をしている。ちなみにエステルのお腹は少し膨らんでいる。半年後には王子か王女が生まれる予定なのだ。


「陛下、これが僕を守ってくれました」


 そう言って差し出したのはペンダント。二徹がルウイと名乗っていた頃、サヴォイ家が陰謀によって滅ぼされ、姿を隠すときにニコールと婚約の約束でもらったペンダントだ。これはニコールの祖母から受け継がれたものであった。


 ニコールを狙った銃弾はそれをかばった二徹の胸に命中したが、このペンダントが弾の貫通を弱めた。銃撃でケガはしたが命は取り留めたのだ。


 つまり、二徹は5本目のフラグを自らの体でもって防いだことになったのだ。ニコールの薬指にはこの婚約の証である指輪がはめられている。それは二徹が渡したカフスボタンについていた小さな宝石を指輪に加工したものであった。


「婚約の証は壊れてしまったが、君たちはここで正式な夫婦としてお披露目をしよう。これは余と王妃からの贈り物だ」


 国王がそう言うと侍従が小さな箱を取り出した。そこには指輪が2つ収められている。



そこには『美味しい料理と共に……』と刻まれていた。


 この世界には結婚して指輪をはめるという習慣はないが、この2人が国王に贈られた指輪を薬指にはめることで、貴族の間で流行し、やがて庶民にも広がっていくことになる。


「ニコール・オーガスト陸軍少将は、ワーテルの勝利に貢献した。これまでの国家に対する功績を称え、彼女をサマセット侯爵に叙する」


「おおおお……」


 列席する貴族、軍人、外国からの賓客たちがどよめく。女性に対して新たな爵位を与えることはこれまでなかったからだ。それだけ、ニコールの活躍はすばらしいものがあったと言えるのだ。これは誰もが認めることで、この叙勲は当然であると受け止められた。


 サマセットとはワーテル会戦でニコールが奮戦した館の名前である。国王はニコールの武勲をこういう形で世に残したのだ。



「そしてニテツ君。君にも報いなければならない。そもそも、サヴォイ家は無実の罪を着せられて伯爵の地位を奪われた。それは調査の結果、逆賊コンラッド公の暴挙であった。今、ここにサヴォイ家の名誉回復をし、侯爵に叙するものとする」


「わあああっ……」


 これも受け入れられた。サヴォイ家の名誉回復は大きな意味をもつ。現国王と反国王派で争われた継承争いの終結を示すことなのだ。無実の罪に問われた家は復興が認められ、また、対立した貴族はこれで恩赦となった。


 二徹とニコールの叙勲と国王の前での結婚の儀式は終わり、パーティが執り行われる。二徹とニコールはそんな中、バルコニーで涼んでいた。ニコールが人に酔ったみたいだと二徹を誘ったのだ。


「ニテツ、これでお前はニテツ・ルウイ・サヴォイ侯爵だな。家の再興おめでとう」

「長い名前だよ。正確に言うとニテツ・ルウイ・サヴォイ・サマセットだけどね」

「じゃあ、私はニコール・サヴォイ・サマセットとなるな」


 くくく……と笑う二人。二人共が侯爵となるのは子孫にとってはありがたいことだ。2人の子供が貴族称号を受け継げるからだ。


「うっ……」


 ニコールは吐き気を催した。慌ててその背中をさする二徹。


「人に酔ったと言ったが、実は前からなんだ。食べるものもなんだか、すっぱいものが食べたくて……」

「え……ニコちゃん、もしや……」


「こ、怖いこというなよ……何かの病気じゃないだろうな」

「違うよ……王妃陛下と同じだよ」


「王妃陛下と……あ……」


 ニコールは自分の下腹部を触った。


「あ、赤ちゃん……ニテツとの赤ちゃんができたということか……」

「やったよ、ニコちゃん、僕は嬉しいよ」

「赤ちゃん、赤ちゃん……ニテツと私の赤ちゃんが生まれる……」


 二徹はニコールを抱き抱えてくるりと回った。そしてキスをする。戦いが終わってから2ヶ月。二徹の怪我が治ってからラブラブだったし、これまでもラブラブすぎるくらいだったから、今まで赤ちゃんができなかったことがおかしいくらいだ。


「男の子かな、女の子かな……どっちでもニコちゃん似で可愛いよね」

「何を言う……お前に似て料理上手な子供になるだろう」

「楽しみだね、ニコちゃん」

「うむ、楽しみだ。お前と一緒なら、出産という戦場に勇気をもって立ち向かうことができるのだ」


 握りこぶしを突き上げて、仁王立ちするニコール。ニ徹はその後ろからそっと抱きしめる。


「ニコちゃん、力を入れるのは産むときだけでいいよ」


「あのな……ニテツ……一応、聞いておくが……出産という戦場に私は何回立てばいいのだ?」


「あ、それはお仕事があるからね。よく計画しないとね」

「し、仕事は大丈夫だ。産むまで内勤なら仕事ができるし、産んでもお前がいるからな。仕事は続けられる。だから、いっぱい産みたい。お前の子供をいっぱい産みたい……」


「ニコちゃん……ありがとう。僕は君を一生支えるよ。君と子供たちにいつも美味しい食事を用意するからね」


 やがてニコールは可愛い女の子を出産した。名前をルーセットと名付けた。その後もこの仲良し夫婦はポンポンと子供を世に送り出すことになる。 


 ニコールは出産しながらも元帥まで昇進し、二徹は専業主夫として妻を支え続けた。


 5人の子供に囲まれた笑顔に溢れたサヴォイ・サマセット家の食卓には、いつも美味しい料理が並ぶ。



食べることは幸せ。


家族が揃って食べるごはんが一番美味しいものなのだ。




嫁ごはん 完


ああ……ついに完。でも、あと1話だけ。あの子の外伝を投稿しておしまいです。

嫁ごはんはもうすぐ完結ですが、新作「おっさんウサギ男は女勇者にプロポりたい」を本日から連載します。

こちらの作品もよろしくお願いします。

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