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異世界嫁ごはん ~最強の専業主夫に転職しました~  作者: 九重七六八
第1話 嫁ごはん レシピ1 鯖とアサリのトマト煮&カチョエペペ添え
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転生者 ルウイ・サヴォイ

9/17 全面改稿 二徹の容姿を変更しました。

 伊達二徹だてにてつは、転生者であった。


 この異世界で名付けられた名前は、『ルウイ・サヴォイ』。名門貴族の長男として生まれたのである。

しかし、理由あってその名前から、転生前の「伊達二徹」を名乗ることとなった。さらに最近、結婚したから、妻の姓に変わっている。『ニテツ・オーガスト』というのが今の名前だ。


 二徹が暮らすこの国は、ウェステリア王国という。アラスト大陸の北に位置するこの島国は、海上交通の要所にあり、古くから交易で栄えた国であった。ここ100年ほどは、この国が戦場になることはなく、人々は平和に暮らしていた。


 王の住むここ王都ファルスは港町で、人口は約10万人。この国の最大の都市であり、よって町は人々で賑わっている。町並は17世紀頃のヨーロッパを思わせる風情で、行きゆく人もそのイメージを損なわない格好で歩いていた。


 その中を風景に溶け込むように歩いている二徹。シンプルショートのオレンジ髪は、ヘアモデルのカタログにありそうな清潔でおしゃれな感じ。長身でやせた体型と緑の瞳が涼しげな雰囲気を醸し出す。


白いシャツに黒ズボン、腰にはポケットが付いた前掛け、首には髪色と同じ色のスカーフ。まるでフランス料理のシェフのような格好である。 


 よく見るとシャツは絹地でできた高級品だとわかる。これみよがしに貴金属を身につけているわけでもないから、貴族には見えないがどこなく気品が漂う。


 二徹が転生者だと自覚したのは8歳の時。小さな子供の心に不思議な記憶が生まれた。自分は元々日本という国で育ち、料理人として生活していたという記憶だ。


 記憶は断片的に戻り、5年ほどすると完全に記憶が蘇った。転生前の『伊達二徹』の記憶が完全に復活したのであった


 さらに二徹はとんでもない能力をもっていた。それは10歳の頃から顕現し始めた不思議な力、時間を止められる力(スタグネイション)なのだ。


 最初は止められる時間は、ほんの5秒ほどであったが、成長するにつれて止められる秒数は増えていった。15歳になると止めるだけでなく、指定した対象物の移動スピードを変えることができるようになった。対象物を自由に加速(エクサレイション)させることができるのだ。


 これは使い方によっては、かなりチートな能力である。この能力のおかげで二徹は、幾度も訪れた自らの生命や、自分の周りの人の危機を回避することができた。


 なぜ、自分に異世界の記憶があるのか。そして人を超越した力をなぜ持っているのかは全く分からなかったが、幸いなことに、持って生まれた悩まない性格のおかげで毎日平和に暮らしていた。



 二徹が生まれたサヴォイ家は名門貴族の家柄であった。サヴォイ家の爵位は伯爵。先代の王に仕えた大臣の一人。ところが、先王が死んだ後の後継者争いに巻き込まれて、父と母は暗殺されてしまった


その当時15歳だった『二徹』は、忠実な家令の機転と、自らもつ不思議な能力のおかげで生き延びることができたのだ。


 現在の国王より恩赦が出て、反逆者の子孫に対しては罪が許されたものの、サヴォイ家の再興にはつながっていない。よって、今の二徹は妻の姓を名乗り、婿養子に行った格好になっている。


 異世界の貴族の息子に生まれ変わり、小さい頃から波乱万丈な人生に戸惑いながらも、愛しの妻との平和でラブラブ生活を楽しんでいる。それが、今の二徹の置かれた状況なのだ。


 二徹の嫁は1歳年上の姉さん女房。物心着いた時から、一緒に遊んでいた幼馴染であり、小さい頃からの許嫁でもあった。お披露目をしていないので、正式に結婚しているというわけではないが、一緒に暮らして既に3ヶ月になる。


 ウェストテリア王国の貴族のしきたりよれば、正式な婚姻関係は、王の許可とお披露目をするパーティを行うことで認められる。


 恩赦で親の罪は許されたとはいえ、二徹は現国王に敵対した家の跡取りということで、嫁の実家も二人の結婚を正式には認めていない。だが、娘の強い希望と二徹の人柄にほだされて、両親は実質的には認めている。


 そんなわけで、貴族社会の表舞台に立てない二徹の仕事は、今のところ『専業主夫』である。軍隊に勤務する嫁の代わりに家事をやるのであるが、大抵のことは使用人たちが行う。


 よって二徹の仕事は専ら、嫁のためのご飯作りである。これは生まれ変わる前の能力からすれば、適材適所の仕事であった。


 毎日、仕事で疲れて帰ってくる愛しい嫁に美味しい『ごはん』を作る。本当は得意な和食を作りたいのであるが、現時点では醤油、味醂、日本酒、味噌といった和食作りに必要な調味料が十分ないので作れないでいる。


 この世界は目にする光景が西洋風であるのと同様、食文化についても西洋風であった。


 主食は小麦粉を焼いたパン。こちらでは『ブレド』と呼ぶ。これに鳥の肉や骨で取った野菜入りのスープというのが庶民の一般的な食事だ。景気がいいと肉や魚を焼いたり、蒸したりした料理がつくこともある。


 米もあることはあるが、スープで煮て食べるという野菜のような扱いである。小麦文化だけにパスタのようなものもある。


 この世界では『ピコッタ』と呼んでいるが。微妙に違う食材や全く異なる名前に戸惑いつつも、二徹は転生前の経験をフル活用していた。


 何しろ二徹は、8歳の頃からこの世界の料理や食材について勉強はしてきたのだ。こちらの世界に生まれ変わっても、料理の勉強を怠ったことはない。


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