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異世界嫁ごはん ~最強の専業主夫に転職しました~  作者: 九重七六八
第17話 嫁ごはん レシピ17 ムール貝とカサゴのブイヤベース
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三羽の烏

先週、投稿できなくてすみません。

本業の殺人的な忙しさと2巻の原稿が重なって……エタるところでした。

4月25日 異世界嫁ごはん 2巻 発売開始。

 バーデン侯爵の屋敷を突破し、馬車を追う二徹と二千足の死神。8頭立ての馬車は疾走し、ファルスの都を脱出し、一路、オーデフへと向かう。


 目的地が分かっているから当然、逃走ルートは限られる。出遅れた二徹たちであったが、1時間後には馬車の姿が見えるくらいまで追いついた。


「護衛の数は30ほど……君と僕となら何とかなりそうだね」

「油断ハ禁物ダ……フェニックスノ強サハ尋常ジャナイ……」

「僕に言わせれば、君の強さも尋常じゃないけどね」

 

 二徹の強さは時間操作能力による。およそ人間の所業では不可能な神視点の力だ。だが、二千足の死神の強さは、人間の限界を超える修行の賜物である。そして、それも超人の域に達している。


 その死神が警戒する、フェニックスという鳥マント男の強さも相当なものであろう。これから行われるであろう戦闘に対して二徹は気を引き締めた。


 やがて走っている馬車が止まる。二徹たちが追ってくるのに気がついたのであろう。たった2騎なのを確認して逃走を止めて反撃をすることを選択したらしい。


 次の街まではかなりの距離がある山道。人気もない場所である。街に配置してある治安部隊がやってくる可能性はほぼない。


「奴ラ、ココデ決着ヲツケタイラシイ……」

「有利な地形で迎撃するつもりらしいね……敵ながらよく考えているよ」


 馬車を襲撃する場合、追っている方が有利だ。なぜなら、追われている方は逃げながら、無理な体制で迎撃をしなくてはならないからだ。


「オソラク……左右ノ森ニ伏兵……」

「たぶん、そうだろうね。僕が右、君が左でいいかい?」

「我ニ指図スルナ……」


 二徹に悪態をつきながらも、左の敵に相対するつもりの死神である。



「馬が来ます……」

「よし、一斉射撃用意だ!」


 馬車の護衛をしている指揮官は、正面に並べた銃兵に射撃を命ずる。作戦では正面からの攻撃に合わせて、左右に展開した部隊も同時に攻撃する。たった2名の追撃者に対して、これ以上の万全な体制はないと思った。


 しかし、状況は予想だにしなかった。


 走ってきた2頭の馬には誰も乗っていなかったのだ。それに気づいた瞬間に、左右の森から銃声と悲鳴が聞こえてきた。追撃者が左右の部隊に気がついて攻撃したに違いない。


「わあああああっ!」

「ぎゃああああああっ!」


 左右の森から吹っ飛び、転がり出て倒れる姿が見える。


「ば、馬鹿な……左右で20もいるんだぞ。どうして2人で勝てるのだ!」


 唖然とする私兵の指揮官。自分が指揮する正面は10名しかいない。


「ククク……そういうものだ。訓練をされた暗殺者の戦闘力というものは。しかし、あの死神に匹敵する男がもうひとりいたとは誤算だった」


 鳥マントを着た男はそう隊長に言った。声の質からは護衛の兵士にはなんの期待もしていないというものがにじみ出ている。


「お前らは、せいぜい時間稼ぎをしろ。奴らは我々で倒す」


 そう鳥マント男は振り返る。そこには同じような格好の男たちが3名、片膝をついて畏まっている。全員、漆黒の鳥マントを着用した異様なトリオだ。


「フェニックス様……我らの準備は整いました」

「奴らの片方は我らが始末いたします」

「我ら、3羽烏カラス、三位一体の攻撃で仕留めます」

「うむ。二千足の死神は私が倒す。クロウ1号、2号、3号よ……。貴様らはもう片方の男を殺せ。但し、油断するな。そちらの男もかなりの手練だ」


 フェニックスは伏兵が瞬く間に無力されている現実を見ている。10名を超える武装した兵士たちがバタバタと倒されているのだ。


「我らでも、10名程度の兵相手ならば同じように葬れます」

「つまり、奴の力は我ら一人と同等」

「我ら3人で戦えば、圧勝間違いなし」


 フェニックスはゆっくりと頷いた。3人の力はよく理解している。自分の任務の手伝いをさせることができる優秀な子分たちだ。


「いいだろう……任せる」


 そう言うとフェニックスは右から迫ってくる二千足の死神へと向かう。好敵手とはこれまで何度も戦ってきたが、どうやらここで終止符だと思っていた。


(死神よ……今日、この地で冥土へ送ってやる)



「く……近づくな!」


 馬車の正面に横列に並んで銃を構える兵士。指揮官はゆっくりと歩いてくる二徹にそう警告した。だが、二徹の歩みは止まらない。


「う、撃て!」


 隊長の命令が森にこだまする。兵士が銃の引き金に指をかけた瞬間。


時間よ、止まれ!(スタグネイション)


 そして、再び時間が動き出した時には、10名の兵士は地面に転がっていた。銃は固めて置いてある。全員、気を失っているのだ。


「やれやれ、ちょっと疲れたな……。でも、これでエリザベスを救える……」


 右の森に潜んでいた10名の兵士を戦闘不能にし、さらに馬車を守る10名の兵士に向かった二徹。これも一瞬で倒して武装解除した二徹は、エリザベスが乗っている馬車へと近づいた。だが、2、3歩歩い

たところで気配を察した。


った!」×3。


 黒い塊が左右と頭上から襲いかかってくる。手には即効性の毒が塗られたバタフライナイフ。この隙のない3方向からの同時攻撃。この網から逃れた人間はいない。


られた!?)


 そんなことは微塵も思わない。


「はい、ごめん。君たちはここで終わり」

 

 止まった時間で動けない3人の暗殺者。黒マントをなびかせたその姿はまるでカラス。1羽ずつ地面に叩き落とした。そして時間が動き出す。


「バ……バカな……何が起こったのだ……」


 3羽烏の暗殺のうちの一人は、2名がなすすべなく地面に気絶させられているのに気がついた。自分もやっと体が動かせるレベルまでダメージを受けている。


「そのまま寝ててよ。命までは奪わないから……」


 圧倒的な力を持ちながらも、二徹は気絶させるレベルで力を調整している。ここまで倒してきた20名の兵士もみんな気を失っている。あとで縛って近くの町に駐屯している衛兵警備隊に引き渡す予定なのだ。


「く……甘いな……その甘さが破滅を導くのだ!」


 懐から短銃を取り出した男。至近距離からの攻撃である。言葉と同時に放たれた銃弾は間違いなく二徹の心臓を打ち抜くはずだ。


撃ち抜く……はずだった……。


男は信じられない光景を見る。

なんなく銃弾をつまんだ二徹。


二徹にしてみれば、時間を止めて空間に止まっている弾をつまんだだけ。


「やれやれ、この空間の時間操作はそろそろ限界なので、君は眠ってもらうよ」


 二徹の時間を止める力は制約がある。同じ空間では停止時間3分を超えると連続して止めることはできない。範囲は二徹を中心に半径15m以内である。


 二徹はつまんだ弾を指で弾いた。死なない程度の衝撃を与えられる加速付きだ。それは男の額にあたり、脳を揺らす。脳震盪で気絶するには十分な攻撃だ。


 馬車を守る護衛はすべて倒した。御者が震えていたがこれは問題外。たぶん、雇われた一般人だろう。そして馬車の中にいる侍女も同じだ。


 二徹は馬車のドアを開ける。


「うっ……?」


 馬車の中に乗っていた人物を見て、二徹は立ち尽くした。


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